【逢引日和－６】

『逢引日和』　六話

注意：過剰な表現はございませんが、少々性的表現もございます。
　　　　また、恋愛要素の強い内容となっておりますので折りたたませていただきました。

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「・・ごめんな、千鶴」

風に乗って消えてしまいそうなほど小さく呟かれた言葉が、ひどく、優しくて、何度も何度も「大丈夫だよ」と彼に言い聞かせた。



「・・・・なぁ、ちょっとだけさ、お前に、手ぇ出して・・いい？」

「え・・？」





顔を上げて、少し照れくさそうに笑った平助君は、離れようと上体を起こした私の腕を掴んだ。


「なんかさ、お前にとって恋仲にとか、そういう意味で俺の傍に居てくれるって言ったわけじゃないんだろ？」

「・・そ、れは・・」


正直に言うべきか、躊躇した。
私の表情を読み取り、平助君は困ったように眉を下げた。


「俺にとっては、結構本気なんだけど、でも・・いいよ。今はさ、男としてみてくれなくても・・傍に居るって言葉だけで十分嬉しいから」


コツンと額がぶつかる。
それから、いつもの平助君らしくニヤリと悪戯っ子のように笑う。


「総司と左之さんの抜け駆け分だけ、今もらう。それで我慢するよ」

「抜け駆け分って・・、」

いやーな予感に、ぐっと息を詰めれば平助君は口端を持ち上げた。


「本気で嫌だったら、突き飛ばして逃げていいから」

「・・・平助君、ずるいよ」


本気で嫌だなんて、そんなこと、思えるはずがない。
沖田さんみたいに、ずるいこと、言わないでよ・・。


「・・・・っ、」

たどたどしい手つきで緩やかに首筋を撫でられ、そしてそっと顔を寄せる。
緊張で身を硬くする私に、いつものような笑顔を向けて、そこに口付けた。


「・・・・ん、」


少し生暖かい感触、ぞくぞくと首から背筋にかけて何かが、走った。
手つきはとても恐る恐る、といった感じなのに、熱いくらいに熱が伝わる。

目をきつく瞑った私の緊張をほぐすように、平助君は頬をやさしく撫でてくれる。


「千鶴・・、ちづる、」


必死に求めてくるような、甘い声。


「お前、すげーやわらかい」

ずらされた襟より乱されて、露出した肌に平助君は唇を寄せた。


「・・柔らかくて、暖かくて、いい匂いするし、」


何度も、なんども、彼は私に甘い囁きを捧げる。
そのたびに、無性に愛しくて、このまま身を任せてしまいたくなる。


「千鶴、今だけ、今だけでいいから、俺だけを見て・・」

「・・・っあ、」


肩を撫でていた手がするりと脇から腹を撫で、腰に添えられる。

「・・・・は、・・っあ、」


腰に回った手がするりと着物の隙間に入り込むのを感じて、思わず腰を浮かせてうつ伏せになる。
急に、さっと頭の中が冷えて、背を向けてしまった。


「・・・ちづる、」

「わ、たし・・」


寂しそうな平助君の声を背に受けて、どう返していいか分からずに顔を布団に埋める。
どうしよう、どうしたらいいんだろう、とぐるぐると考えていたところに、がばっと背を引かれる感覚。


「っ・・・・！」


首周りを少し強めの力で広げて、彼は着物を私の肩から引き摺り下ろす。
腰の辺りまで思い切り下げられて、ひんやりとした外気が背中を撫でる。


「へ、へい、すけくん・・！」


驚いて上体を上げようとして、でも、起きてしまえばあられもない姿を晒してしまうことになる、と寝床にしがみついた。


「・・・っん、・・ぁ！」


背中に触れた手は、そのまま布団と私の身体の間に滑り込んで押しつぶされた胸に触れる。


「千鶴、すっげー柔らかいし、可愛いよ・・」


うっとりと、酔ったように平助君は背に頬を寄せる。
余裕がなくて焦ったように縋り付いてきていた先ほどとは違って、今の彼は、ひどく大人の男性のようで、

急にぞくりと寒気が全身に広がった。







＠あとがき

沖田と左之さんは、言葉攻めというか聴覚で攻めるのがイメージにあったりするんですが、平助は、もう、直球です。可愛いとか、柔らかいとか、なんか思ったことも全部口に出して無自覚に攻めます（笑）。あ、ある意味では言葉攻めになるのかなぁ・・。

あ、今から妹の付き添いで大学のオープンキャンパスに出かけてきます。
自分は２ヶ月前に大学を卒業した身なので、なんとなく、複雑な気持ちですが（寂しかったり、しんみりしたり、）色々探検してきます！うちの大学とは正反対でめちゃくちゃ綺麗な校舎らしいですよ！
あいにくと、私の通ってた大学は山の中だし、校舎は荒れてるし・・、羨ましくなんか、ないんだから！！

・・・ほら、美大なんで油まみれだったり、染料とか画材とかで汚れるから仕方ないんですよ・・って、自分を自分で慰めてみる・・、切ないなぁ・・、