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沖田さんに名を呼ばれ、びくりと肩を震わせた。
「・・お、おきたさん・・」
「あぁ、そんなに怯えなくても、別に何もしないよ」
そう口では言いつつも、鋭い視線が私を射抜き、背筋が凍りつくようだった。
「ただ、平助君と本当は何があったのかなって思ってね」
「・・な、なにも、ないです・・」
なんとく絞り出した声は、きっと震えていたと思う。
「・・・そっか、何もなかったんだ」
「・・・・・・は、い・・」
彼の目をまっすぐ受け止めることが出来ずに、私は俯いてやり過ごす。
「千鶴ー!総司ー!なーにやってんだよー!」
と、そこで階下から私たちを呼ぶ声が聞こえる。
私と沖田さんが後を着いて来ないことに気づいて引き返してきたんだと思う。
「沖田さん、平助君たちが呼んでますし、行きましょう」
「・・・・・・ねぇ、千鶴ちゃん」
慌てて無理やり作った笑顔を沖田さんに向けて廊下へと向かえば、さっき私の身体をひどく冷たくした声色で再び名を呼ばれる。
「・・は、はい」
恐る恐る振り返れば、予想外にも沖田さんはにっこりと笑みを作っている。
「沖田さん・・?」
「今度は、僕とも逢引しようね」
「・・・え?」
「だって、平助君と町をいろいろ見て回ったんでしょ?僕も千鶴ちゃんを連れて行ってみたい甘味屋とかあるし」
思わぬ提案に幾度か目を瞬いて、でも悪意の感じられない素直な物言いにホッと心を落ち着かせた。
「はい!楽しみにしてます」
「うんうん、で、最後はここに来ようね」
「え・・?」
にこにこ、まるで有無を言わせぬように、笑顔で締めくくる。
もう終わりだよ、と沖田さんは呆然としたままの私の手を引いて廊下に出てゆっくり階段を下る。
永倉さんと平助君はお互いにスッキリした顔と疲れた顔を浮かべて私たちを待っていた。
どうやら店を出てからさっそく追い掛け回されたらしい。
原田さんだけは少し難しい顔をしてこちらを見つめていた。
「遅ぇよ、何してやがったんだ?」
「別に?ただ、ちょっと話してただけ」
原田さんの問いかけに笑って返事を返して、沖田さんは何事もなかったかのように私の傍から離れる。
永倉さんたちの後を少しぼんやりと歩いていたら平助君がちょこん、と横の並んだ。
「・・千鶴」
少しだけ前を気にしながらも、平助君は頬を朱に染めて小声で囁く。
「あ、のさ・・その、今更かもしんないけど・・、ごめんな?」
「平助君は、今日謝ってばかりだね」
謝罪というよりも照れている方が大きい彼を見遣り、私は笑顔を浮かべる。
「だってよ・・、なんか、止まんなくなっちまって、」
「・・う、それは、思い出さないでくれると嬉しいです・・」
「無理だって、あんときの千鶴めちゃくちゃ可愛かったし、忘れるとかってぜってー無理!」
なんでそんなに堂々と主張できるのだろうか。
そこが平助君のよいところだと分かっていながらも、やっぱり恥ずかしい・・。
「・・・平助君、」
思い切って、口を開いた。
どこか真剣さを読み取って平助君も表情を落ち着かせた。
「・・私ね、平助君のこと、」
「あ、待って、ちょっと待って!!」
ぐっと唾を飲み込んで、さぁ、言うぞ、と決意新たに顔を上げれば平助君はぶんぶんと首を振る。
「それは、今はまだ・・聞きたくない」
「でも、」
「いいから、頼む!いい事だったら嬉しいけど、それがさ・・悪いことだったら俺・・しばらく立ち直れねぇって思うし、」
ちょっとだけ寂しげに笑顔を作って、平助君は私の肩をぽんぽんと小突いて前へ走っていってしまう。
その背を見つめながら小さくため息を漏らした。
私は、なんて言うつもりだったんだろう。
あなたのことを好きです、それとも、受け入れることは出来ません。すごく正反対の言葉で、でも、すごく近い場所にある。
次に求められたら、たぶん、私は・・平助君を受け入れてしまうと思う。
それが、恋心なのか分からないけれど、あの人のまっすぐな瞳を、今度は逸らすことが出来ない。
だから・・・、続きを聞かせて欲しいと、そう彼に言われるまでに、私は答えを出さなくちゃいけない。
-逢引日和-完
@あとがき
不完全燃焼!!ですよね。
はい、私もです。次シリーズでは「逢引道中」を連載していきたいなって思ってます。
「逢引日和」続編で、いつものような後日談ではありません。今回よりももっと少女漫画風味で、一応、Rものが入る予定ですのでご注意くださいませ。
同時更新で「雪村千鶴失踪事件」もスタートしていきます。よろしくお付き合いお願いいたします!!
あ、そういえば、応募していた懸賞が当たりましたー!!
って言っても、忘れててダンボール開けるまでなんだったか悩んでたものですが。
あるコミック雑誌での懸賞で掲載中の漫画のコミックス3種計5冊セットの海外版です。
咎狗の血のコミックス1,2が含まれていたので応募したのですが、意外と・・国によって装丁が変わるんですねー!
本屋で働いていたときは英語版コミックスはよく目にしていたのですが、それは装丁が日本とはガラリと変わってます。咎狗の血は韓国版だったのですが、カバーから何まで、ほとんど変化はないです。すごいなー・・とパラパラめくってみて、でも読めないので、とりあえず日本の物と比べつつ読んでみました。・・・2時間くらいかかって読みました・・!!(^▽^;)でも、新鮮で面白かったです!!
逢引日和お疲れ様でした
なんか平助がこの上なく可愛く思えた・・・
ところで薄桜鬼のグラフティックデザイナーの
カズキヨネさんが挿絵を描いている『華鬼』と言う物語にすごいはまってます
内容も申ことながらやっぱり絵がきれい過ぎます
気が向いたら目を読してみてください!
メッセージありがとうございます(^^)
逢引日和、お付き合い有難うございましたー
うちでは沖田、原田ばかり贔屓してしまっているので、今月は平助強化月間なわけです!今決めました!(笑
オススメ書籍有難うございます。
「華鬼」は、私も購入しております。
時間がなくて1しかまだ読んでいないのですが、面白い設定ですし、ヨネさんの挿絵もとても綺麗ですよね。ふとゲームにしたらどうなるのかな、と思ったりもしました。
また何かオススメありましたら是非教えてくださいね(^◇^)
なぜか、この先にコメントしときながらここにコメントしています!
この話、なんかすっごく好きです・・・
気付いたら読むの5回目です・・・
ところどころ変わってますね。変えてある方が好き・・・
印刷しようかな~とか思ったんですけど、下の空欄をはぶく方法がわからない・・・・!
・・・あきらめました・・・(笑)
コメントはどんなに古い記事にコメントしても最新が表示されるので、どの記事でも大丈夫ですよ!
逢引日和は初めての誰か一人をメインで書いているので、意外と泥沼なシーンが多かったりします・・気に入っていただけて幸いです。
ところどころ変わってる、というのは・・?どういった意味なのでしょう?
あ、印刷に関しては、申し訳ありませんがご遠慮くださいませ。
一応期間限定で突発的なブログですし、本当に個人的に読むだけ、という使用法なら話は変わりますが、またとんぼさんの小説に大きく影響してしまったらまずいですし(笑)
どうしても、ということでしたらその旨をご相談ください。空白を省いたものを用意いたします。
スイマセン・・・・分かりにくい文で・・・
そうですか~・・・・
いつも通りノートに丸写しでも・・・
軽く印刷のしかたを覚えてやってみただけで、私自分の小説を写したりよくするんですよ~(笑
それでいいですか?
修正は、誤字脱字や矛盾に気づいたらしていますが・・恐らく悪くなっている、ということはないと思います(^^;)
えーっと、印刷がダメでノートに丸写しがOKとか、そういう話ではなくてですね…自分の小説を写すのと他人が執筆したものを写すのは全く別の話になってしまいます。
基本的に、二次創作なので非公式な文章です。
現段階では閉鎖は考えていませんので、読みたいときはブログの方までお越しください。
私が書いたお話を好いてくださって本当に嬉しく思っています。
ですので、余計に、写す・印刷、などの行為は本当に申し訳ありませんがご遠慮ください(><)
よろしくお願いいたします。