「俺たち幹部が・・・、」
もはや真っ赤を通して空ろな目をしだした平助は、まだまだガキだな。
「幹部の中にんなことするやついるわきゃねーだろ。」
新八は呆れたように言うが、俺としては他の誰よりも屯所の幹部連中の誰かが手を出すのが一番可能性としては高いと思うんだがな。
「お前ら、なんも分かってねぇんだな。」
「左之さん!それどういう意味!?」
「千鶴を見て見ろよ。気立てはいいし器量よし、ちゃんと女の格好させりゃ、間違いなく最高級のべっぴんさんだ。男だらけの新選組であんないい子がいたら手を出そうとする奴が出ても不思議はねぇだろ。」
「で、でもさ、それは可能性としてって話だろ?幹部っつったって、土方さんや一君たちが何かするわけないし、」
「わかってねぇなー、平助。斎藤なんてある意味一番の大番狂わせだぜ?あいつ、高が外れるとがっつくんじゃねーかな。」
「それ言ったら総司が一番危険だろ。あいつが一番彼女をそういう目で見てると思うぜ。」
「なにそれ!新八っつぁん、なんでそんなことわかんだよ!」
もはや声を抑えることにすら気を回す余裕もなく、平助は焦ったように身を乗り出した。
先ほどから俺と新八の言葉にいちいち反応する様は見ていて面白いが、なんとなく不憫に思えてきた。
「なんでって、見てわかるだろ。総司の態度って意外と分かりやすいからなー。」
「そうかなー?」
「にしても、確かに千鶴に酌してもらって酒飲むのは悪くねぇだろうなぁ。」
「あ、俺も俺も!千鶴に酌してもらいたい!!」
俺の言葉にすばやく反応して挙手をする平助の肩を新八が遠慮なくバシバシと叩く。
「ま、あれだな。綺麗な体の女の子に酌してもらうのが一番ってこったな!」
「新八っつぁん下品だって、それ。」
「そ、そうか?」
「そりゃそうだろ。生娘じゃなくなったら千鶴は綺麗な体じゃねぇって言ってるようなもんだぜぇ。」
「いや、そういう意味じゃなくてよ!島原の女みたいなのはなんつーか、アレだろ?
千鶴ちゃんは誰かに抱かれたら艶っぽくていい女になりそうだよなぁ。」
「な!?新八っつぁん、何言ってんだよ!」
さっきから騒がしいほど素直に反応するよなぁ、平助のやつ。
島原通えば自分はどうあれ、そういう会話も光景も慣れるだろうに。話の主役が千鶴だからか?
「いやいや、新八の言うことも当たってるっちゃー当たってるぜ。女は恋をすると磨かれていくもんだしな。
今はまだまだ幼さも残っちゃいるが、ありゃぁ男に抱かれたら化けるぜ。それこそ島原の頂点も夢じゃねぇよ。」
「そ、そりゃぁ千鶴なら不可能じゃないかもしんないけどさー・・そういう風に見るのってなんか俺やなんだけど。」
「本当にまだまだガキだな、平助。んなこといってるとそのうち総司とかに掻っ攫われるぞ」
新八の言葉に今度は顔をサッと青くする。
「え?総司が?いやーさすがにそこまではしないんじゃん?」
「いやいや、総司の態度分かりやすいってさっきも言っただろーが、一目瞭然だろ。」
「へぇ、僕って分かりやすいんだ?」
「ああ、あいつはいつか絶対なにかやりやがるぜ!夜這いとかさ!」
からから笑う新八は、よもや見捨てるとして、俺は・・まだ“奴”の間合いに入ってねぇ。
じわじわと後退して、俺の様子に首をかしげる平助の袖を引っ張って一緒に後ろに下がる。
「っあ・・・、」
俺に袖を引っ張られて半ば強制的に体の向きを変えた平助は気づいたんだろうな。
新八の後ろにいる“奴”に。
「なんだよお前ら。」
「し・・・新八っつぁん・・うしろ・・・」
「やめろ平助、あいつはもう手遅れだ。」
「お前らさっきから何言って・・っうお!?」
ビュンと首を刎ねようとするが如く飛んできた木刀を何とかかわして新八は目を見開いた。
「なんだ!?だれがんなもんなげやがった!?」
「あはは、やだなー、新八さん。僕は夜這いなんてそんな卑怯な真似はしませんよ。行くとしたら昼間だろうと堂々と行きます。」
にっこにこと言い放つその顔は、目だけが笑っていない。
つか、俺らの周りにはさっきまで稽古する隊士がいっぱいいたが今じゃすっからかんだ。
おそらく俺らの会話を聞きつけた斎藤が追い払ったのだろう。
そこまではいいとして、通りがかった総司にも聞きつけられたことに関してはとんだ失態だぜ。
「お前ら、屯所内で大っぴらに下世話な会話してんじゃねぇよ。」
と、そこで呆れたような土方さんの声が。うっわ、ほんと、やべーな。この状況。
逃げるに逃げられない。
「左之さん…、」
「どうした、なに泣きそうな声だしてんだ・・よ・・」
土方さんに怒鳴られることが泣くほどのことかよ、と平助の視線をたどれば、そこに居たのは別の意味で泣きそうに唇をかみ締めて袴の布を握り締めて立ち尽くす千鶴の姿。
「ほーら、新八さんたちの会話のせいで千鶴ちゃん泣きそうだよ。」
「げ・・・、」
総司が次から次へと投げつける木刀を避けていた新八が、俺らと同じほうに目をやって唖然とする。
そりゃぁ、そうだろうな。
どこから聞かれてたかわかんねぇが・・・、とりあえずどこから聞かれてもまずい会話だろうなぁ・・・。
「ま、男同士の屯所内じゃ、そういう会話も行き交うだろうが・・ちったぁ空気読め、お前ら。
せめて自分らの部屋で酒飲みながらにするんだな。」
土方さんの呆れきった声なんて素通りしていくほど、俺らは彼女の視線から逃れられないでいる。
「ち、千鶴・・・。」
平助が恐る恐る声をかければ、彼女はビクリと肩を震わせる。
そうして、怯えたようにこちらを見やって口を開きかけるも、思いとどまって再び唇をきつく噛んだ。
そのまま、さっさと出て行った土方さんの背を追うようにして彼女は稽古場から出て行った。
「あーあ、きっと当分避けられますね。」
「もしかしたらもう言葉を交わすことさえしてくれないかも。」
「あ、顔を合わせるのも苦痛だったりして。」
総司の言葉は俺たち3人の胸に痛いほど突き刺さる。
「ま、彼女の許しが出るまで、彼女を巡察に同行させるのは僕と斎藤君ってことで。」
あと、食事の時も両隣と真向かいに座るのは避けたほうがいいですよ。
彼女、一口もご飯食べれなくなっちゃうと困るからね。
そんなことを捨て台詞に残して総司はさっさとこの場を後にする。
残された俺たちは木刀がありったけばら撒かれた稽古場で、ただただ立ち尽くすことしか出来なかった。
@あとがき
まぁ、男所帯ですから、こんな話も出てくるだろうって事で・・・、お粗末さまでした!!
ちなみに、後日談の方は左之さんメインで執筆させていただきます。
なんとなーくで、新八、平助、一君も登場しますが、ちょっといいとこどりをね、左之さんにしてもらおうと思ってます(^-^)
そういえば、最近、あとがきが日記っぽくなってます・・。
ちゃんとカテゴリーに雑記は作っているのですが、毎日小説をUPするので精一杯というか、ね。
なので、今後も日記はあとがきで済ませちゃおうと思ってます。ある意味、更新順に読んでいけば日記も読めると言う!全くお得感のないサービス!(笑)
体調をくずされているとのことですが、大丈夫でしょうか?お身体に気をつけて、がんばってくださいね。
またまたいらっしゃいませー!お待ちしてました!!
小説、閲覧くださってありがとうございました(^-^)
後日談!もちろんございます!
なんせ後日談が書きたくて書いているようなものですから(笑)
左之さんにはみんなよりも少しだけ一歩進んでて欲しいな!をモットーに逆ハー書いてます!!
体調の方、お気遣い感謝いたします!
虚弱なので、自身の健康管理はもう少し気にかけようと改めて思い直しました(苦笑)あんなに無理してがんばれるのは土方さんや一君ぐらいですよね~(´へ`;)
今後もお時間ありましたら遊びにいらしてくださいね!
足跡ぺたりも大歓迎です!とっても嬉しいです。ありがとうございました!!