「ち、千鶴が・・・」
「あ?どうした平助。」
「千鶴が・・俺と目を合わせてくれなかった!!」
鈍器で頭を殴られたかのように泣きっ面な顔を晒して平助が叫んだ。
「・・・・そりゃぁー・・、避けられて当然っちゃー当然だな。」
昨日の今日で、当たり前っちゃー当たり前だが、朝飯ん時に千鶴の姿はなかった。
新八も平助も落ち着かないのかそわそわとあいつの姿を探してはいたが、結局俺らが飯を食い終わるまであいつが姿を見せることはなく、
昼の巡察も、今日は新八の組に同行する予定が姿を見せず、なんと斎藤が彼女は来ない、と一言告げにきた。
で、昼過ぎに平助がバタバタと俺の部屋に駆け込んできて開口一番叫んだわけだ。
「まぁ、当分避けられるのも覚悟しなくちゃいけねぇだろうよ。」
「でもさー、明日は昼の巡察俺と一緒に行くって言ってたんだぜ。」
「あんな下世話な話聞かせちまったんだ。俺らの顔見るのも当分は嫌なんじゃねーかな。」
そこまで言うと平助は青ざめたまま肩を落として部屋から出てった。
つか、駆け込んできたまま言うことだけ言ってでていっちまった。
「左之ぉ!!!」
「うお!なんだよ、今度は新八かよ。」
平助が開け放ったままの襖をさらに壊れそうな勢いで限界まで開いて新八が崩れるように駆け込んできた。
なんなんだよ、今日は。
「千鶴ちゃん、俺が声をかけたら涙いっぱい溜めて走り去っちまってよぉ・・・」
平助と同じように肩を落として落ち込む姿は、まさか新選組二番組組長だとは到底みえねぇよな。
案外、繊細な面もあるんだなー、こいつ、と少しばかり失礼なこと思ってから、
しかし、あまりにも落ち込み具合が激しいので仕方なしに慰めの言葉の一つでもかけてやる。
「新八、千鶴はきっと照れてんだ。しばらくすりゃぁ元に戻るだろうよ。気にしすぎもよくねぇぜ。」
「っつってもよー、彼女の目には俺らはただの飢えた狼にしか見えなくなっちまってるんじゃねーか?」
まぁ、ある意味、壬生狼と言われてるし、狼って表現は間違ってはいないだろうが。
「わかった、俺が千鶴の誤解を解いてくる。」
「左之・・」
「あいつも話せば分かってくれるさ。男っつーもんは、基本的に助平な生き物だってな。」
「おいおいおい!それじゃ意味ねぇだろ!」
「あ?なんでだよ。」
「これ以上彼女を怖がらせちゃ余計避けられるってわかんだろ!」
「あー?正直に言えば千鶴なら分かってくれるって。お前も平助もうろたえすぎんだよ。」
何に慌ててるのかしらねぇけど、いつまでも避けられた状態っつーのは居心地悪いし、飯時にあいつがいないと食った気もしねぇ。
第一、あの笑顔を一日欠かすとなんか、損した気分になんだろうが。
だったら、さっさと誤解解くなり、機嫌直すなりしてもらうしかねぇ。
「まぁ、待ってろって。俺がちゃんと話しつけてくるからよ。」
「左之、余計なこと吹き込むんじゃねぇぞ。」
「あー、俺を誰だと思ってやがる!何事も直球な男だぜ。余計なことも何も正直が一番ってことだ!」
新八の盛大なため息が聞こえてくる。
失礼な奴だな。嘘つくよりずっといーじゃねぇか。
「ま、まぁ・・、そこまで言うんなら頼むぜ!俺と平助の日常の平穏もかかってるんだからな!」
「おお、まかせとけ!!」
「と、意気込んだのはいいとしてよ・・」
千鶴の姿がとんと見当らねぇ。
斎藤の昼の巡察に同行したのは知ってる。
だが、あいつらも帰ってきている。つーことは、別件で外に出ているか屯所内にいるはずだが・・・。
「おい、斎藤。千鶴しらねぇか。」
中庭をさっさと通り過ぎようとする斎藤を見かけて声をかけるが、微かに眉を寄せて一言、言葉を発した。
「何の用がある。」
「あ?」
「アイツに何用があるかと聞いている。」
「は?俺が千鶴に何の用があっても関係ねぇだろうが。」
斉藤は眉間に作った皺を解くでもなく、睨みつける様にこちらを見据える。
「ある。土方さんから当分の間、お前たちと彼女の間に立て、と言われている。」
「な・・・、土方さんから?そりゃ一体どういう了見だよ。俺らはなんも聞いてねぇぜ?」
「稽古場では多くの隊士が鍛錬に勤しんでいた。あの場での会話を微かでも耳にした隊士は少なくない。
誤解、もしくは彼女の正体に気づかれると面倒だ。しばらくは距離を置け。」
「って言われてもよぉ、」
確かに、あれは俺たち側に全部ひっくるめて責任があるのはわかっけど・・、
近づくな、声もかけるな、は横暴すぎねぇか?
「って、おい!」
用件が済んだとばかりに、斉藤はさっさと身を翻して行っちまう。
「はー・・・、千鶴に近づくなってことか。」
確かに、土方さんの言い分は分かる。
だが、斎藤のあの態度は明らかに俺らの話していた内容について怒っているかのようで、
もしかしたら土方さんの命令にしたってアイツが少なからず助言したんだろうな、とぼんやり思う。
まぁ、仕方ねぇよな。
自分らの失態ゆえに文句を言うのも筋違いってやつだろうし、時間を置けば千鶴の方も落ち着くだろうから。
俺は新八になんて言い訳しようかと、考えを巡らせながらガシガシと頭を掻く。
っつても、しばらくってどれくらいだろうな。
あの声が当分聞けねぇってのも、寂しいもんだよな。
「あ、原田さん・・」
そうそう、こんな声。
小さく、独り言のように呟かれた言葉だったが、それは風に乗って俺の耳元に届いた。
「千鶴・・。」
@あとがき
ま、あんな話を聞かせた後はこうなりますよね、っていうお話(笑)
実際には、平助も新八もあそこまで初心な反応ではないだろうな、っていうのがゲームから受けた私の印象ではあるんですが、それはこれ、あまりにも反応されないとつまらない!(´へ`;)
ってことで、平助、新八には必要以上に初心な感じで演じていただいています!左之さんは男らしさたっぷりに、大人の余裕をもちつつ、嘘がつけない感じで演じてもらってます*
と、これから大学のゼミなので急いでいるのですが、帰ってきてからの更新が難しそうなので出かける前にさくさく書いてます。でも、遅刻寸前で焦ってたりもします。ってことで、誤字脱字などは帰宅後にチェックして直します!!申し訳ないです。では、いってきまーす(^□^)ノ
「男たちの下世話な話2」と「後日談」読ませていただきましたっ。「2」は…やっぱり千鶴ちゃんに聞かれちゃったんですね…。あの場所にいたらその場に流れた冷たい空気には耐えられないかもしれないですね…。沖田の醸し出す空気も殺気が篭ってて同じ部屋にはいられないかも…。
後日談はどうやら左之さんいいとこ取りのようで…(密かにガッツポーズ)。最後の千鶴ちゃんの「あ、原田さん…」のあとが気ーにーなーるー!!
千鶴ちゃんが三人を避けていても限度があるし、番犬(?)がいれば、という土方さんの考えも何か納得ですv
続きが本当に気になる作品ばかりなので、通うのが本当に楽しみですv
アンソロ告知されてましたね。私も…と思ったんですが…何故か左之が好きなのに浮かぶのは沖田話ばかりで。今回は断念しました。
千尋さまはイラストも描かれるのが好きだということで…早くスキャナーが反応してくれることを祈ってます。
今回も長々とすいませんでしたっ
おたふくは…夕べから反対側も腫れてきて…安田大サーカスのヒロ並みに立派な二重顎になってたりします(笑
こんにちわ。
リンクの確認、ありがとうございました!!今後ともよろしくお願いいたします(^-^)
下世話な話、閲覧くださってありがとうございました!
タイトルからして微妙に下品で申し訳ないです;
千鶴ちゃんってみんなが稽古してたらこっそり待っていて、すぐに布やらお茶やら持って行ってくれそうなイメージでして、きっと出るに出られなかったんですよね(遠い目)ちなみに、総司は稽古をサボってその場にいなかったのに暇つぶしと称して千鶴にくっついて回ってた、みたいです(笑)
後日談、左之さんに格好よく決めていただきたいのですが、うーん・・・大根役者っていうか・・言い訳させたらド素人なので、どうなることやら、です(--;)さりげなく、土方さんが一君に命令を出したって言うのは、一君を出したくてたまらなかった私の願望です(笑)番犬が似合う一君って可愛いですよね!!
通ってくださっているなんて///が、がっかりさせないように精一杯がんばります!アンソロの方もご一緒に参加できたら、と思ったのですが・・残念です;;でも、つい総司のネタが出てきてしまう気持ちは分かります!!
おたふくは、ほんとーに、辛いって聞きます。
どうか、どうか無理なさらずに、安静に!ですよ!!
早くおたふく君が風に乗って去って行ってくれることを祈ってます(;△;)