あの声が当分聞けねぇってのも、寂しいもんだよな。
「あ、原田さん…」
そうそう、こんな声。
小さく、独り言のように呟かれた言葉だったが、それは風に乗って俺の耳元に届いた。
「千鶴・・。」
中庭の椅子に腰掛けたままの俺を、縁側の廊下を歩いていた千鶴が見かけて声を発したようだった。
じっと彼女の姿形を確認するように視線を向ければ彼女はどこか居心地悪そうに俯いた。
「あ、あの、その・・・今、皆さんから繕い物を頼まれまして・・よろしかったら原田さんのもお預かりしますが・・」
「・・・・・・。」
「あの、原田さん?」
「お前が俺に声をかけるのは禁止されてねーってことか。」
「え?」
まぁ、当たり前か。
「千鶴、」
「はい。」
俺が椅子から腰を持ち上げてゆっくり近づけば少しだけ不安な色を残した瞳がそれを追っていく。
「俺がお前に近づくのは苦痛か?」
「え?」
「まぁ、あんな話聞かせちまった手前、こんなこと聞くのは卑怯だろうけどよ。」
「いえ、」
千鶴は一瞬、瞳を伏せて、でもぎゅっと唇を噛み締めて顔を上げた。
「わ、私・・、その、まだ女になりきれていない、その、生娘・・ですけど・・・」
次第に頬を赤らめ、最後には耳まで真っ赤にしながらも必死に紡いでいくその言葉は、なぜか俺に口を挟む余裕すら封じてしまう。
「お酌くらいなら、しますし・・・それで皆さんが島原で飲むより楽しいとおっしゃっていただけるのなら・・」
彼女自身、どう言葉にしていいか分からないのだろう。
俺は自分でも驚くくらい冷静に、千鶴の顔を見つめていた。
余裕ぶって頭を撫でてやるなり、言いよどんでおぼつかない様子に助け舟を出してやるなり、普段なら出来てるはずなんだが、どうしてか、今のこいつを前にして、俺は頭の中が真っ白になっていくのを感じていた。
「なぁ、千鶴。」
「・・はい。」
「俺は、もともと島原には新八や平助の付き合いで行ってるようなもんだ。酒が飲めりゃー、まぁ、屯所内でもかまわねぇ。綺麗な姉ちゃんがいるかいないかはそりゃ重要だが、お前が酌してくれんなら俺は二度と島原に行かなくてもいいくらいだぜ。」
「えっと・・、」
内心、理由の分からない妙な冷や汗を自分が掻いていることに動揺しながらも、俺は余裕ぶって笑ってみせる。
「まぁ、それにだ。女になりたいってんなら俺が協力してやるからよ。」
「え・・?」
すっと腰を折って千鶴の目線に合わせてやれば、彼女の瞳の不安な色はさらに色濃くなっていく。
「原田、さん?」
「・・・・・・。」
そのまま千鶴の右手首を掴んで少し力を込めて引き寄せる。
慌てたような声を無視して、首筋に顔を埋めれば分かりやすいほど肩を震わせた。
「っ・・・、」
「なぁ、お前があのとき・・俺らの話をどこから聞いていたのかはしらねぇが・・・、お前が誰かに抱かれて女になったとき、お前は島原の女どもに負けない最高の艶を見せるって、俺は思ってるぜ。」
「原田さん・・何を、言ってるんですか?」
首筋をひと舐めして、それから徐々に耳の裏まで舌を這わせて耳朶を軽く唇で挟んだ。
そうして、小さく震える姿と、徐々に桜色に染まり始める千鶴の体に、俺は確実に熱を持ち始めていた。
「あぁ、まだ、お前には何も言うべきじゃねぇよな。悪ぃ、」
「え?」
何事もなかったかのようにすっと離れて、そうしていつものように頭をガシガシと撫でてやる。
「は、原田さん・・っ、髪がぐしゃぐしゃになってしまいますっ!!」
「おっと、悪ぃな。」
掌を頭からどけてやれば、千鶴は少し控えめに、でもちゃんと俺の目を見て微笑んだ。
さっきの俺のしたことを意識してねぇはずはねぇのに、それでも、俺の目を見て笑う千鶴の姿に、少なからず内心苛立った。
はー・・、正直、重症、だよなぁ・・。
余裕ぶってられんのも、あんまり長くは続きそうにねぇな。
「ま、あれだ。俺も新八も平助も、悪気はなかったんだ。
あいつらもお前を襲うほど落ちちゃいねぇから安心しろよ。」
「はい、それは、わかってます。」
「男っつーのは、あれだ、ああいう話をする生き物っつーか、」
言い訳をさせたら俺は屯所内で最下位だろうな。
新八と約束した手前、とりあえず千鶴の誤解を解いておかねぇと、とは思って言葉を捜す。
「原田さん。」
「ん?」
「私、気にしてませんから。」
「え?」
「斎藤さんもおっしゃってました。男と女の考え方は違う。原田さんたちが言っていた事も軽い冗談のようなもので、そういうことを気軽に話せるのが男なんだと。女は敏感にそういった話に嫌悪するかもしれないけれど、見逃してやってくれ、って。」
「・・・・・・。」
「私も、原田さんたちが本気でおっしゃっていたなんて思っていませんし、それに、今は私は男です。気にしてませんから、原田さんたちも気に病まないでください。」
「・・・・・・。」
無理をして、笑顔を作っていることは明らかだった。
だけどよ、こんなにも必死に笑顔を作る女を更に困らせるなんてーのは、酷ってもんだよなぁ・・。
それに、斉藤の奴がしたフォローは俺らに対してではなくて、むしろ千鶴のためってやつだろうな。
「千鶴。」
「はい。」
「今夜の晩酌はお前に頼んでもいいか?」
「・・・もちろんですよ。」
お互いがお互いに、あの会話を軽い冗談として誤魔化すって言うんだから、この場は流すしかねぇよな。ただ、俺は・・・本気で、こいつの酌で飲めんなら島原の女なんていらねぇってこと、いつかわからせてやりたい。
少しだけ、他の奴よりも一歩前に出るために。
@あとがきっていう名の日記。
まぁ、こんなもんです。そんな簡単に手を出したりはしません。
組織の中で、行動を起こすって言うのは、ある意味で勇気がいることですからねぇ(´へ`;)
ただ、左之さんは、千鶴を一番意識している人です。ちゃんと女の子って見ていて、妹のように思いながらも女だってことも知ってる人です。うん、兄貴だ!
兄貴と言えば、ヨネさんの描いたアニキとカズマに絶叫して卒倒寸前だったのはわたくしです。
あれは、やばいでしょう。反則すぎる。まさか、ヨネさんがカズマを描いてくれるなんて!!
ってことで、頭の中でカズマがシェルブリットォォオオ!!と叫んでいるんですが、どうしたらいいですか!
なんだか、すごく親近感が沸いてしまいました。昔のアニメですが、私の原点です。今でも漢の中の漢はカズマ以外いないと信じてます。いやー・・、一度でいいから保志さんの生声でカズマを演じていただきたい///
えーっと、男たちの下世話な話、は一応完結です。
気まぐれで後日談の後日談書くかもですが、どうなることやら、分かりません。
とりあえず次回はモーニングコールシリーズの執筆を開始しようかと思ってます。
あんま、甘くないけど、いつも通りのわいわいでお送りいたします~
ってか、ブログであんまり濃いのはまずいですよね。一応、成人はとっくに過ぎてるので、過去いろんなRもの書いたのですが、さすがにブログで激しいのはまずいだろう、と自重。
酒盛り災難日、では少しばかりそういった雰囲気を匂わせようかなーとは思ってたりします。。。
左之さん…エロっ!でも最後まで手を出さない辺りが左之っぽくて好きですっvv自分の気持ちを優先させないところとか、千鶴ちゃんを大事にしてるなーと思いますね。
でもその気持ちが千鶴ちゃん伝わってないことに苛立ったり余裕がなくなったりするところが、また人間らしくていいなぁなんて。人間らしく、っていうと言い方おかしいですが、気持ちを仕舞い込んで何でもない振りで過ごしてばかりいたら、流石に左之さんでも参っちゃうでしょうしね。
早く気持ちが通じて幸せになってくれるといいなぁvv
また次回作楽しみにしてますvv
いつもお返事ありがとうございます。
こんにちわー!いらっしゃいませー
更新するたびにコメントをいただけて、本当にいつも感激しておりますー!!
左之さんは我が家のエロ担当ですから!でも、兄貴なんで寸止めできる漢なのですよ!(笑)ちなみに次エロ担当は総司です。彼は寸止めしません(苦笑)なので、誰かをセーブ役に引っ張ってこないと行き着くところまで行ってしまうっていう、ね。。。
人間らしくって表現、私すごい好きですよ。
ゲームのキャラクターかもしれないけど、その中で人間らしくいろんな感情を持って、綺麗なだけじゃなくて足掻いたり汚かったり。そうした感情もちゃんと左之さんたちも持ってるって、文章から読み取っていただけてすごーく、嬉しいです。愛情持って書いている分、伝わってるって感じられる私は幸せです(^v^)
短編ながら、少しずつ左之さん寄りになっている気が、します。でも、ちゃんと幸せにさせてあげたいです**
ほんとーに、いつもご訪問ありがとうございます!!
い、いつかなにかお礼の品を用意させてください!今は小説しかUPできない状態ですが、スキャナの故障を直したら絵でもOKですし、私ばっかり幸せで申し訳ない(><)
も~私のドツボに入った内容ばかりでしたvキャラのイメージぴったりで、甘いのも大好きですがゲームでは少なかった日常わいわいや逆ハーメインで嬉しいですv私小説かけないんで本当尊敬します。
全キャラ好きですが特に沖田、原田好きな私には出番多く又嬉です~v特に下世話な男達の後日談や温泉騒動がお気に入りですv沖田さんは鬼畜担当ですが笑、ゲーム最初くらいのからかいまでの話も見てみたいです~(興味以上恋人未満位)
学園物のようなパロ設定はすみません。ちょっと苦手なので読んでないんですが…、これからの小説とても楽しみにしていますね。
それでは寒くなってきたので、体調管理にお気をつけ下さいね。
管理人の千尋と申します。
あ、薄桜鬼コンプしたんですねー!!やっぱり、いろんな方がコンプしたよー面白かったーって言ってるのを聞くと嬉しくなっちゃいますね(´U`)
小説、閲覧くださりありがとうございます!!
キャラのイメージを壊さぬよう、一応・・努力はしているので、イメージぴったりと言っていただけてよかったです。とりあえず沖田、斉藤、藤堂、原田は5回はプレイして、台詞なんか覚えちゃってるくらいには努力は惜しまず頑張ってます(笑
やはり、日常的なわいわいとした雰囲気が喜ばれるってことはゲーム本編がどれだけシリアスだったかってことがにじみ出てますよね(^^;)
そそそ・・尊敬だなんて、そんな・・、あの、地べたに近い人間なので尊敬などと言葉を掛けられると・・はい、恐縮です・・。ちっちゃくなっちゃいますっっ・・
沖田、原田はうちではなんだかんだで贔屓されてるので・・喜んで頂けてなによりです。でもでも、平助君や一君や新八っつぁんの出番も是非とも見てってくださいませね!!
あ、今度是非ともゲーム最初くらいの雰囲気のお話に挑戦してみますね!一応・・今でも恋人未満ではあるんですけど・・、なかなか踏み出せない奴らばっかりですが; 学パロは賛否両論あるので、苦手でしたら読み飛ばしてくださって全然構いませんよ!!好きなお話だけ楽しんでってくださいね!!
もう、本当に、いっぱいいっぱい嬉しいお言葉頂けて大感激です!!
ありがとうございました!!(*^∀^*)是非ともまた遊びにいらしてくださいませー!!
あ、コメントを送信する際に、管理人にだけ見れるようにシークレット機能がついていますが、返信すると解除されてしまうので・・送った文面が公開されるのがちょっと嫌だなって時はメールか拍手の方を利用して見てくださいね。