ほんの少しの沈黙の後、彼はようやく普段のようにどこか無感情に、口端を持ち上げて、冷めた視線をよこした。
「まぁ、抵抗するのもキミの自由だけどさ、お仕置きが酷くなるのは覚悟しといてね。」
「んな覚悟、必要ねぇよ。千鶴。」
目を細めて、口端を吊り上げて物騒な言葉を吐いた沖田さんに即座に返事を返したのは、私ではない。
ぎゅっと硬く閉じていた目をそっと開けば、襖が開いていて気持ちのいいくらいのお日様の光が部屋の中に届く。
「総司、離してやれ。」
「・・空気読んでよ左之さん。いつもは、こういう時は知らぬ振りして通り過ぎてくれるでしょ?」
「そいつぁ、お前が派手に浪士を斬り殺すときのことだろうが。そんなときに止めたってお前が止まるはずもねぇから放っているだけだ。」
今とは勝手が違う。そう、彼は声を低くして沖田さんの背に殺気を放った。
「っ、原田・・さん・・、」
「・・・大丈夫か?千鶴。」
原田さんはゆっくりと私の傍まで歩み寄って、声色を優しくしながら私の手首を押さえつけていた沖田さんを無遠慮に突き放す。
「・・・・・左之さん、」
「お前の気持ちも俺の矛盾も、いろいろすっ飛ばしてこの場には関係ねぇことだ。
こいつを泣かしてまで成そうとすんじゃねぇよ。」
私を腕に抱き、そうして引き離されたことで行く場をなくした彼の寂しげなまなざしが途端に鋭さを増して、矛先を原田さんに向ける。
「・・・・・ずるくない?僕を悪者扱いにしてさ。」
「ずるいとかずるくないとかじゃねぇだろ、」
呆れたように息をついた原田さんを見て、沖田さんは殺気を身の内に引き止めてから私へ笑顔を向けた。
思わずビクリと肩が震えてしまったことは、私を支えている原田さんにも、もちろん沖田さんにも気づかれていたと思う。
「千鶴ちゃん、約束、忘れないでよね。」
「・・や、くそく・・」
「明日は変なことしないからさ、ちゃんと声かけに来て。わかった?」
「・・・は、い。」
さっきまでの自分の行いなど綺麗サッパリ忘れてしまいました!なんて顔で微笑んでくるものだから、私の中は混乱で破裂しそう。
「総司、」
「分かってる。反省してるからさ、早く彼女連れてってよ。」
もう、用はないとばかりに沖田さんは私から視線を逸らしてさっさと出て行けと襖を指し示す。
混乱で埋め尽くされた心の中で、それでも私は沖田さんから視線を外してしまうことを拒んだ。
目を逸らしてしまえば、あの時の、あの、寂しそうな彼の顔をなかったことにしてしまいそうで、怖かった。
「・・・千鶴、いくぞ。」
「原田さん・・。」
「ねぇ、左之さん。」
「・・・・・・。」
「見守る、だけじゃ欲しいものは手に入らないんだよ。」
「っ・・・、」
原田さんは、沖田さんの言葉に微かに眉をひそめた。
そうして、ぐいっと少し力を入れて身体を引き上げられて、そのまま私は部屋の外へ連れ出され、沖田さんが逸らした視線を再び合わせてくれることがないまま彼の姿は完全に視界から遠ざけられた。
「は、原田さん・・」
そのまま痛いくらいに強く手を引かれて引きづられるように沖田さんの部屋から離れた。
「原田さん、あの、手を・・」
「・・・・・・・。」
こちらを振り返ることなく、彼はそのまま奥へ奥へと廊下を進んでいく。
原田さんらしくない雰囲気に、私はただただ戸惑うことしか出来なかった。
「あ、あの・・・」
彼の進む方は、広間でもなければ私の部屋でもなくて、沖田さんの部屋よりもずっと奥、
そこは、ここ数日私が毎日通っている部屋。
「原田、さん・・・」
片手を引かれ、もう片方は着物の合わせ目をしっかりと抑えている私は、
彼に部屋へと誘われても拒むことが出来ず、ただ従うのみだった。
部屋へと通されても、原田さんはしばらく口を閉ざしたままで、普段の彼らしくない様子と自分自身の乱れた格好をどうにかしたくてそわそわと落ち着かない気持ちで居た。
そんな時、俯いて口を閉ざしていた原田さんがようやく顔を上げて、私の名を呼ぶ。
「千鶴。」
「・・はい。」
「大丈夫か?」
「え・・?」
やや落ち込んだような表情のまま、彼はそっと私の首筋に手を添えた。
思わずビクリと肩を震わせれば、近づいてきていた掌も少し戸惑ったような気配がしたけれど、彼はそのままスッと指を滑らせた。
「・・・っ、」
「傷跡は、残っちゃいねぇみてぇだが・・、」
そこで、ようやく彼は肩を染めている赤を見やって、心配そうに眉を下げていたのだと気づいた。
きっとこの赤は沖田さんの部屋の布団にも広がっているだろうな、とぼんやり思いながらも私は心配そうに見つめてくる彼に笑顔を向けた。
「大丈夫です。もう、痛くもないですし、」
「そういう問題じゃねぇだろ、こんだけ血が出たんなら痛みも酷かっただろうに。」
彼はそういいながら、傷跡が先ほどまでは多少残っていただろう場所を何度も撫でてくれる。
まるで、自分が傷つけてしまったと言わんばかりに悲しげな表情を貼り付けて、何度も、何度も。
「あの、原田さん・・。」
「ん?」
「先ほどは、その、ありがとうございました。」
なるべく、明るい声色を、と心がけた。
さっきまでの沖田さんの声とか表情とか、思い出すだけで背筋に何かが走っていくけれど、それでも、この目の前の優しい人に心配をかけるわけにはいかなかった。
「沖田さんもきっと、ちょっと悪ふざけが過ぎただけだと思うんです。だから、」
「本当にそう、思ってんのか?」
「え、」
「総司が、いつもの悪ふざけでお前にこんなことをしたって、本当に思ってんのか?」
「そ、れは・・」
@あとがき
こんばんわ!!
よかった!ちゃんと今日中に更新できました!!
先ほど大学から帰ってきて、買ってきたジャンプをベットに放り投げて急いで書いたので、ちょーっと内容がごちゃごちゃしてるかも・・・、です。次回更新時までにこそこそと直しますので、目を瞑っていただけると幸いですー(´へ`;)
ふぅ・・・、それにしても、疲れた。
通学に往復3時間以上は、やっぱり辛いです・・・。でも、もうすぐ卒業だし、がんばりまする!!
とりあえず、朝と昼あわせてパン2個しか食べてないので、空腹でちょっとピンチです・・。笑さん!コメントのお返事はご、ご飯たべてからでいーでしょーか!?ごめんなさーい(>□<)拍手のお返事も返ってから!お待たせしちゃってすみません(;;)
ちゃちゃっと夕飯の支度してまいります!!
やっぱし兄貴だ!!…でも、気持ちを押さえ込んでるんですか…?左之さん…。
いつもの彼らしくないですよね。沖田くんの行動を見てしまって、左之さんの中でも何かが動き始めてるんでしょうか…
千鶴ちゃんの困るような、心の中をかき乱すようなことにはならないとは思いますが…。
登場人物が代われば、また新たに問題勃発っ
これはやっぱり画面に張り付いてないと。
…左之さんが画面から出て来てくれないかなーと、懲りずに本気になって願ってる私がここにいたりします(苦笑
しっかりご飯を食べて、ジャンプを読んでゆっくりして、時間があったら…で全然構いませんので。いつもいつも張り付いてコメント書いてる私にお付き合いいただいて本当に嬉しいデス。
でも、食事は摂って下さいねーーー!!!
左之さんは、やっぱり兄貴でした!!
気持ちを押さえ込む・・?いやいや、とんでもございませんよ!!
確かに総司の一件のせいで、左之さんの中の何かが、ストッパー取れかけてはおりますが・・・彼は、男の中の男です!ちゃんと、自分の中の気持ちに一本の筋をもっております。次回は、彼の行動に注目していただきたいです!!がんばりますので!
左之さんが画面から出てきたら・・・幸せですよね~・・・・・。
彼のためならいくらでも貢げそうです!!(*^v^*)
晩酌してあげた後はバッチリ一組の布団を敷く感じで!!(笑)
あ、ごはんはバッチリ食べてきましたー。
お腹すきすぎて、ささっと丼ものにしちゃいました。
寝る前に絶対にお返事だけは!お返事だけは!!笑さんに直球の愛をお返ししないと!っと毎日必死です!(^v^)避けないでキャッチしてくださいね!
では、お布団入ります。おやすみなさいませ。太陽くんたちもおやすみなさい・・・。・・・・・・・・・・。