「あの、原田さん・・。」
「ん?」
「先ほどは、その、ありがとうございました。」
なるべく、明るい声色を、と心がけた。
さっきまでの沖田さんの声とか表情とか、思い出すだけで背筋に何かが走っていくけれど、それでも、
この目の前の優しい人に心配をかけるわけにはいかなかった。
「沖田さんもきっと、ちょっと悪ふざけが過ぎただけだと思うんです。だから、」
「本当にそう、思ってんのか?」
「え、」
「総司が、いつもの悪ふざけでお前にこんなことをしたって、本当に思ってんのか?」
「そ、れは・・」
無意識に着物の合わせ目をぎゅっと掴んだ。
胸が、痛んだ気がしたから。
「・・・・千鶴、」
原田さんは努めて柔らかい声色を出してくれているようで、その心地よいほどの優しい呼びかけは私の中に暖かいものを落としていく。
「俺は、お前の泣き顔とか、悲しそうにしてる顔って見てらんねぇよ。」
「・・・、」
優しく、抱きしめられる。
暖かくて、心地よい。
「お前が笑ってられんなら、いくらだって兄貴でいてやろうって思ってた。」
「原田さん、」
「ただ、一歩引いたことで、横から掻っ攫われんのは、我慢できねぇ。」
「え・・・、」
え、と疑問の声が漏れたのと同時に、ぎゅっと背中に回された腕に力が込められる。
「・・・ちづる」
この、切なそうに私の名を呼び続ける人は、だれ・・?
私は、この暖かくも大きい背に、無意識に腕を回してしまいそうになる。
「原田さん、私は・・・・ん、」
「悪い、すまねぇ、総司にえらそうなことを言っておいて、卑怯者だよな、」
突然、唇に感じた暖かい感触。
でもそれは、すぐに離れてしまう。
「っ・・・ん、」
そうして離れた唇が再び触れ合う。
「お前のこと、すげぇ大事だ。お前が俺のこと兄みたいに思ってんのはかまわねぇ。俺だってお前が妹のように可愛いし、守ってやりてぇって思う。だけどよ、」
何度も、何度も、触れては離れ、を繰り返す。
「それでも、俺はお前を誰かに掻っ攫われんのは、どうしたって許せねぇ。
妹のままでいたいってんなら俺もお前の兄貴でいてやる。だから、俺の隣にいろ。
守ってやるから。いつだって頭撫でてやるし、支えてやるからよ。」
そういって、再度口付けられ、しかし、今度のは深く、心の奥底まで熱が伝わってくるようなそんな激しさが伴っていた。
「ん・・・っ、」
私は、この口付けを自然に受け入れていた。
流されていたわけじゃない。けれど、拒むことが出来なかった。
拒むどころか、むしろ、涙が出そうなくらい嬉しくて、どうしようもなく、満たされていくような、そんな気持ち。
「千鶴、拒みたきゃ拒め。お前が本気で嫌だといえば、今ならまだこの手を離してやれる。」
強く、それでいて、どこか労わりも感じられるほどの力で抱きしめられている身体は、けれど拒めばあっさりと引いてくれるのかもしれない。
彼の目を見てしまえば、仮に今すぐ離してくださいといったからといって彼がこの熱を離すとは到底思えない目をしてるということくらいすぐに分かるのだが、彼自身、心の中で葛藤があるのかもしれない。
「わ、たしは・・・、」
正直、私はどうしたらいいのか分からなかった。
この手を、ぬくもりを離してしまうのが怖いと思う自分もいれば、このままではいけないと思う自分もいる。
「私は・・・、わからないんです。」
「わからない?」
「この手を・・離してしまいたくないと、思う自分もいて、けれど、私は・・・」
ぐっと喉に力を込める。
わからない、なにもわからない。
沖田さんの言葉の意味も、悲しげな瞳も、原田さんの想いも、目を逸らしてしまいたい。父様のことだけ考えて、目的のためだけに動いていたい。
でも、わたしは・・・
「明日も沖田さんに笑顔でおはようございますって言いたいんです。平助君にも永倉さんにも、斉藤さんや土方さんにも。そして、原田さんと一緒に縁側で並んでお団子食べたり、また巡察にご一緒させてもらったり・・・、頭を、撫でてもらいたいんです。」
「だから、いくらでも撫でてやる。お前が望むなら、俺は、」
「違っ・・!・・・違うんです。分かってるつもりです。原田さんの言葉の意味、本当は、分かってます。けれど、何よりも、私は自分自身の気持ちが分からない。こんな中途半端な気持ちであなたの目を見ていたくない・・。」
私が、ぎゅっと瞑った目を開いて、再び彼に思いをぶつけようと口を開けば、
「っ・・・・、」
「もう、黙ってろ。」
「・・ん・・・、っ・・・、」
「分かったから。千鶴が言いてぇことは。だから、少し、黙れ。」
言葉は少し乱暴だったけれど、背中と後頭部に回された掌は温かく、そして優しかった。
@あとがき
こんばんわ(´◇`)>
言い訳はいたしません。私の中で書ける一番格好いい左之さんです!
余裕があって、大人で男前で、千鶴を暖かく包み込むのも原田左之助という人物の一面ですが、こういう、少し余裕がなくて、必死な一面もまた彼の一部だと思っています。
総司のことで余裕がなくなったというよりは、総司のことで混乱して動揺している千鶴に対して、いろいろとタカが外れてしまったといった感じです。ここまでシリアスな展開になっていくとは、タイトルをモーニングコールと決めた時点では予想だにしておりませんでした。いやぁ・・何が起こるかわかりませんな!!
とはいいつつも、一応、このブログでは平和とほのぼの、わいわい逆ハーがモットーなので、このお話も丸く治められたらいいなぁと思います。逆ハーは楽しいけれど片思いは胸が痛くなるから苦手です。みーんな幸せにしてあげたくなっちゃう・・・。
っと、そういえば、ようやく我が家にコタツが登場です!!
うちの妹は全身入るんです!!(;へ;)頭まですっぽり全身で入ってじっとしてるもんだから、入ってること知らなくて、足を入れると「ぐっはぁ・・、」って妹に蹴りを入れてしまう事態に・・・(苦笑)
今年こそは、平和なコタツ生活を送りたいものです・・・(^-^;)
左之さんが読めて…よかったぁ…(再び号泣
『拒みたきゃ拒め。お前が本気で嫌だといえば、今ならまだこの手を離してやれる』
この台詞って左之さんーっって感じがしますよねvv(べ…別に「千鶴」という言葉を消したのはワザとじゃないですよ?自分の名前に変換しようなんて、そ、そ、そ、そんな邪な考えを持ってやったわけじゃないですから(汗っ))
千鶴ちゃんも心揺れますね。
この手を取りたいけど、自分にはやることがあるし…でも……
このまま左之さんとくっついてしまえーーー!!そして幸せになるんだーーー!!
なんて言ってみたり…。この揺れが今私を乙女ロードにハマらせてますよ。
妄想広がり中。次回も楽しみにしてますっ
昨日は本当にギリギリの更新で申し訳ありませんっ!!
でも、なんとか自分なりに満足いく左之さんが書けたのでよかったなぁ、と思いつつ、笑さんにも喜んでいただけてホッとしております。
ちなみに、例のセリフですが・・
私自身、脳内変換されてますから!
笑さんだけじゃないですから!!(^∀^)ノ
それにしても、左之さんには男らしいセリフを言わせやすいですね!うんうん、そろそろ頭の中が故障しそうですが!彼にはいつでも直球で心臓射抜いてくれるセリフを言って欲しいですね!!
もう、なんとなく、左之さんが最終的なお相手でいいんじゃね?なーんて思いながら執筆していたりするんですが・・、いやいや、でも今後も総司や平助くんたちにも活躍していただきたいので!もうしばらく千鶴ちゃんには振り回されていただくことにします!!(苦笑)
そろそろモーニングコールも完結です。
長い間お付き合いありがとうございました!!
次回作でも、楽しんでいただけるように精一杯努めさせていただきます!!