「分かったから。千鶴が言いてぇことは。だから、少し、黙れ。」
言葉は少し乱暴だったけれど、背中と後頭部に回された掌は温かく、そして優しかった。
「っ、はらださ・・、っ・・・、」
「・・ちづる、」
低い声色は私の中で心地よく響き渡る。
名前を呼ばれるのが、こんなにも切なく、そして嬉しいものだなんてはじめて知った。
何度も合わされる唇。もう、初めての口付けなんかじゃない。
彼によって、すでに二度目三度目を経験し、しかし何度交わしても優しくて暖かい。
「偉そうに俺の隣にいろ、なんて言っちまったけどよ、確かに俺もお前もまだ中途半端だよな。
俺には、まだ、もう片方を捨てる覚悟ができちゃいねぇ。」
「もう、片方?」
彼は少し困ったように微笑んでから、優しく額にひとつ口付けを落とす。
「千鶴、お前は言ったよな。また一緒に団子食ったり茶飲んだりしたいって。」
「は、い。」
「みんなで、だよな?」
「・・・皆さんで、一緒にお茶を飲むのはとても楽しくて大好きです。でも・・、原田さんと二人でのお茶の時間も、すごく、好きです。」
私の言葉に微かに瞳を開いて、そうして彼は、私の大好きな柔らかい微笑みを浮かべた。
「千鶴、答えは、まだいらねぇよ。無理して出す必要もねぇ。
俺だって総司や平助、新八たちと馬鹿騒ぎすんのも嫌いじゃねぇ。あの時間を壊したいなんて思っちゃいねぇ。」
優しく頬を撫でられる。
そして、さらしが抜かれ少しばかり荒れた襟元に優しく、気遣うように触れて口付けを落とす。
「ただ、覚えていてくれ。俺は、お前が大切だって、な。
新選組とどっちが、なんてガキみてぇなこと聞くなよ?俺だってまだ答えなんざ出せてねぇんだからさ。」
そう言って笑う顔が、なんだか愛しくて。
好きだとか、そういう言葉を彼は決して言ってはくれなかった。
大切だ、大事だ、そういう言葉で想いを伝えてくる。
永倉さんや平助君は、原田さんは女の人にモテるし女慣れしてる、なんて言うけれど、本当は少し不器用な人だと思う。
今は、大切だ、大事だ、と言ってくれるほうが私にとっては嬉しくて。
好きだと告げられたらきっと困惑して心がざわざわしていたと思うけれど、大切だと言われるとすごく暖かい。
私も、彼と同じ気持ちだったから。
「原田さん・・、私、毎朝原田さんにおはようございますって言うの、すごく好きです。」
「起しに来ると、原田さんはいつだって優しく微笑んでくれておはようって頭を撫でてくれて、そういう時間がすごく愛しくて、」
だから、明日も起しに来ていいですか?と言えば、当たり前だ、と返してくれる。
「まだ、俺もあいつらと並んで茶、飲んでたいしな。」そう言って、彼は優しい笑みを浮かべた。
「んで、話はまとまったところで・・・、」
しかし、続いた言葉に私はそろそろ彼を連れて広間に行かなければ、と身体を離そうと身じろいでいた身を緊張で固めた。
「まぁ、総司っつー悪の手から救い出した正義の英雄に、少しだけご褒美くれたってバチはあたらねぇよな。」
ニっと口の端を持ち上げて、子供のように笑って、彼は着物の合わせ目を控えめに開いた。
「っ・・、ご褒美って・・・、」
「拒みたきゃ、拒んでいいぜ。」
明らかに先ほどとは違った意味で、裏のない笑顔でそういうことを言うものだから、私は思わずぐっと押し黙ってしまう。
ずるい。私よりもずっと、ずっと大人なのに、そんな無邪気な笑顔で、そんなずるいことを言う。
拒めるわけがない。自分から彼の頭を抱きかかえてしまいたくなる。
「っ・・・ぁ・・・、」
鎖骨の辺りにチクリと小さな痛みが走って、それから優しく舌で舐められる。
知らぬ間に合わせ目から滑り込んだ大きな掌に胸の間をスッと撫でられて、暖かい彼の掌の体温に、はぁ、と思わず吐息が漏れる。
「はらださん・・、」
「・・・ご褒美止まりで、やめられねぇかも・・、」
「え・・?」
ちょっと困ったように笑った彼は、戸惑った私をなだめるように片方の腕を背に回して、ゆっくりと撫でる。
その心地よさに、何もかも忘れて、身を任せてしまいたくなる。
「ほんと、お前の肌って柔らけぇな。」
「っ・・ん・・、」
顎から首筋を這う舌に翻弄され、次第にぼんやりとする意識。
しかし、ふいに脳裏をかすめた声に、私はゆっくりと腕を待ち上げて彼の胸を押した。
「っ・・、だめ、です。原田さん。」
「・・・分かってる、すまねぇ、ちょっとだけのつもりだったんだがな。」
落ちそうになった意識を再び浮上させてくれたのは、あなたの言葉だったんです。
『俺だって総司や平助、新八たちと馬鹿騒ぎすんのも嫌いじゃねぇ。あの時間を壊したいなんて思っちゃいねぇ。』
まだ、私だって、あの優しくて暖かい時間を壊したくないんです。
原田さんは乱れた私の襟元を直そうとそっと首筋に触れた。
けれど、そのとき、
ダダダダダ!!!と、数人の人間がこの部屋の方に向かって走ってくる音が静かな室内に届いた。
@あとがき
今日で完結させるつもりだったのですが・・(´へ`;)
とりあえず、明日で最終話です!!ダダダダダ!と部屋に駆け込んでくる人物なんて、彼らしか居ないじゃないですか!ネタばらしもいいところですよね・・、申し訳ないです。
最後はこのサイトらしくドタバタで締めくくろうかと思います。
えーっと、マイマスフルコンプして、とりあえず肩の力が抜けきってしまいましたー。
3日で終わらせたのですが、正直、お腹いっぱいです。なんだ、あれは。エヴァンスの狂愛ちっくにメロメロですよ。もう、可愛くて無邪気でわんこみたいなのに、歪みきった愛情がたまらないです!!(笑
個人的な好みは、エヴァンス、リュカ、レオンの順です。リュカは昼も夜も大好きなのでエンド3(だったよね?)がすごく可愛くて好きです。エンド1は夜しか起きてられないって、昼のリュカがかわいそう(;□;)
ま、まぁ・・、とりあえず充電完了です!!
年末にかけての最終制作段階に向けて、頑張ってきます!!
で、冬コミで薄桜鬼いっぱいゲットできたらいーなー。夏はゲームとジャンプで2日がんばったのですが、冬はゲームスペースだけでいいかなぁ・・、体力持たないと思いますし。
左之さん、やっぱいいですねっっvゲーム中の左之さんの台詞は言ってもらいたいものばかりだったので、千鶴ちゃんが言われてる言葉を聞くと、毎回毎回自分が言われてるかのように…。特に今回はっっ(笑
でもたしかに、左之さんは「好き」という言葉は簡単に言わなそうですよね。言わなそう、というより本当に大事にしている気がします。想っている相手や言の葉自体を。
千鶴ちゃんはそんな左之さんのことをよくわかっているんですね…。
「っ・・、だめ、です。原田さん。」
の台詞はちょっと…いや、かなりエロいですよねー///一人「きゃーーーvv」とか興奮してました(笑
明日で最終回と思うと寂しいですが、誰かが傷ついて…ということで終わるのではないのであれば…ドタバタ完結楽しみにしてますっ!!
今回冬コミ落ちてしまったんですが、薄桜鬼getしたいので一般参加しようと考えてるんですけど…乙女ゲーム辺りをウロウロすれば見つかりますかね…?
直前にならないと行けるかわからないんですけど、薄桜鬼いそうな気がするんで行きたいんですけどね。
今回、本当に、ほんとーに、難産だったのですよ。その場の雰囲気で後先考えずに執筆してきたツケが回ってきたという感じで、終盤で左之さんにどうまとめてもらおうか、と。混浴騒動の3倍は時間がかかって、心配で、不安でどうしようもなかったのですが、、、笑さんのお言葉を受けて心底ホッといたしましたー。本当にありがとうございます!!(;□;)
「好き」とか「愛してる」とかの言葉の重みを少し意識した内容だったので、ちゃんと読み取ってくださって嬉しいです!!恋愛って難しいですね~(苦笑)
「っ・・、だめ、です。原田さん。」
「悪ぃ、もう、止められねぇ・・」
と、続いてしまったらよかったのに!と、思ったのは私だけでしょうか?(笑)いやいや、きっと笑さんだって!(´∀`)ノ
今回はお預けしてもらったので次回で挽回させてあげたいです!!
夏も冬も、どちらにしても一般参加は朝が大変ですよねー。暑かったり寒かったりで、入る前から毎回ヘトヘトです(^へ^;)笑さんが冬コミでサークル参加なさるときは、こそこそお伺いしようかな、と思っていたので、少し寂しいです;
乙女ゲームだと緋色のスペース辺りで薄桜鬼もあると思うのですよねー。緋色で参加していたサークルさまが今年は薄桜鬼も!という場合もあると思いますしね!!
冬コミは何が何でも予定を空けて参加したい!って思ってるのですが、年末だといろいろ難しいですよね(´へ`)