ここ数日、京では物騒な事件が続いていた。
連夜に続き、遊女が何者かに斬り殺されている。
手口は辻斬り、として片付けられてしまうほど残酷ではあるが戦乱の京には珍しくもなかった。
しかし、狙われるのは決まって、遊女、なのだ。
不貞浪士が暴れたわけでもなく、かといってそれを新選組が粛清したわけでもなく、一般人が巻き沿いをくったわけでもなく、決まって深夜に遊女が襲われる。どちらを匿っていた、というわけでもない、大よそどちらの勢力にも関わりのない女が斬り殺されている。
会津藩より新選組に達しがきたのは、当然のことと言えた。
「・・・山崎さん、大丈夫ですか?」
「問題ない。出血は多いが傷自体はそれほど深くはない。」
私の問いかけに淡々と答える山崎さんは平気だ、と短く答えるけれど、それでも腕から流れる出血は酷く、鮮やかな着物を真っ赤に染め上げている。
「で、山崎、面は拝んだのか?」
「・・いえ、申し訳ありません。不覚にも背後から襲われてしまい確認には至っておりません。」
「・・・そうか。」
土方さんは眉間の皺を濃くして、不機嫌そうにため息を漏らした。
「それにしても、背後から襲われて犯人の顔を見ることが出来なかった、なんて、せっかくの囮捜査も意味なかったね。」
「総司、お前なぁ・・」
棘がいくつも飛び出した言葉を吐き出した沖田さんを、原田さんが諌める様にして睨み付ける。
彼は肩をすくめるだけで、それ以上言葉を続けることはなかった。
会津藩より新選組に犯人の討伐の命が下ったのは数日前。
目撃情報などが少なく、襲われた遊女も同じ見世の人ではなかったため、山崎さんが潜入捜査を行うこととなった。
普段、あまり表情の変化をみることができない山崎さんだったけれど、そのときばかりは綺麗な着物をまとって、つけ髪を結い上げて、紅をひいて、そうして柔らかく微笑んで、
あの時は、思わず頬を染めてしまった。
だって、以前原田さんたちに連れられていったお見世の女の人よりもずっと綺麗だったんだもの。
そして、彼が囮として夜の街に出てから数日、事件はぴたりと止んだように思われた。女性たちも物騒だと、日が沈んだ後の外出を避けていたから当然と言えば当然だった。
だから、囮から別の方法に切り替えようか、と土方さんが案を練り直していた矢先、彼は襲われたのだ。
「副長。」
「・・・そうだなぁ、山崎君の怪我の具合もあるだろうし、別の方法しかねぇな。」
斉藤さんが促すように土方さんを呼ぶ。
土方さんは私が怪我の具合を見ている山崎さんを一瞥して厳しそうに眉をひそめて告げた。
「囮捜査、ごくろう。山崎君はしばらくは怪我を治すことに専念してくれ。」
「・・わかり、ました。」
後味が悪そうに俯く彼は治療もそこそこに自室へと下がってしまった。
そうして広間に気まずいほどの沈黙が流れたとき、場に不釣合いな明るめの声が響き渡った。
「山崎君が動けないなら、代役を立てればいいんじゃないですか?」
「・・総司、」
面白い妙案が浮かんだとばかりに、彼は楽しげに腰を上げて立ち上がり私の前まで歩み寄ってきた。
山崎さんの出血を抑えるのに使用した布を片付けようとしていた私はふいに自分を覆うように立つ影に面を上げた。
「沖田さん?」
「ねぇ、土方さん。せっかく、本物の女の子が居るんだから、わざわざ山崎君に女装させることなかったのに。」
「・・なに言ってやがる。」
彼は私の目の前に立ち、私を見つめながら口を開いて言葉を紡いでいるのに、その矛先は私ではない。囚われたように目を背けることが出来ずにいる私に沖田さんの掌がゆっくりと差し伸べられて、微かに触れる程度、頬を撫でられる。
「新しい案を講じるよりも、囮の代役を立てた方が手っ取り早いじゃないですか。」
「現に、女たちが外を出歩かなくなっていたと言うのに、これ見よがしにひとりでいた山崎君を襲ったんでしょ。罠って見え見えなのに引っかかるってことは、そこまでの危険を冒してまで、遊女を襲う理由があるってこと。」
「だったら、やはり囮での捜査を続行すべきだと思いますけど。で、山崎君以外に代役を頼むとすれば本物の女の子である千鶴ちゃんが適任ですよね。」
「筋は、通ってると思いますけど?・・・・土方さん。」
口を挟む隙すら与えずに、一方通行で畳み込まれるように告げられて、土方さんは不機嫌そうに沖田さんを鋭い眼光で睨み付ける。私はと言えば、あの沖田さんが、積極的に、なによりも私を新選組としての仕事に就かせるために熱弁を振るうだなんて、信じられなくて息を詰めた。
斉藤さんですら、目を見開いて驚いたように沖田さんを見ていて、きっとこの場のみんなも少なからず驚いていると思う。ただ、土方さんだけは眉間の皺を濃くするだけで、腑に落ちない、とその表情が物語っている。
「総司、てめぇ、なに考えてやがる。」
「・・別に何も。今言ったとおり、僕は早く切り裂き魔が捕まってくれればなーって思っただけ。」
ニヤリと口元を歪めて告げる彼は、言葉とは裏腹に明らかにこの状況を楽しんでいるように見受けられた。
「沖田、さん・・?」
@あとがき
Newタイトルです。
囮捜査!ってことで、タイトル遊んでるし、内容も結構ありきたりなんですが、実は昔から一度は書きたかった切り裂きジャック、じゃなかった・・えっと、切り裂き魔ネタと遊女の組み合わせ!!(´◇`)ノ
自分でもどんな話しになっていくのか、わからんです(苦笑)
モーニングコールの後日談は完全に平助や新八メインのわいわいとした雰囲気なので、こっちは、ちょっと痛くて暗い感じに・・してもいいですか?いや、ほんと、なるべく手を出さないように、と思って我慢していたのですが、やっぱり暗くってどろどろしたのが昔から好物なんです!ごめんなさい!次回タイトルは明るくて楽しい感じにするので、今回の囮捜査では、沖田くんと一くんメインで突っ走らせていただきます!!
あ、ちなみに、タイトルは変更するかもしれません。潜入作戦!とかスパイ大作戦!とか(笑
そーいえば、薄桜鬼の湯のみ買いました!!
なんで新八っつぁんと風間がいーないんだー!!と嘆いたのですが、まぁ、全員分は描ききれないですよね・・。残念すぎて、泣きそうでした・・。
それにしても、ああいうグッズって買っても絶対使えない、と思うわけです。堂々と使ってやる!と意気込むほど勇者じゃないし、家族は妹以外、私の趣味知らないし、第一・・沖田くんの絵が描いてある湯のみに茶なんて注げません!!・・・あぁ、こっちが一番の理由かもしれない。
凄いっ!!!また千尋さんの作品が読めるんだーvvv嬉しい^^
山崎さんの遊女姿は綺麗だと思います。ベッピンさんだと思いますvvうはー…頬を染めてしまう千鶴ちゃんの気持ちがわかるなぁ…。
彼は線が細いですしね。あの瞳で見られたらゾクゾクしちゃいます(←決してMではないですよ)
ここでの沖田くんもウキウキ、というんですかね…物凄い面白いものを見つけた子供のような…獲物を見つけてじゃれる猫のよう…というか。もう、本当に楽しくて仕方ないって感じがします。
そんな彼を見てる私も、これからどうなるんだろうと本当に楽しみで仕方が無いですvv
痛くても暗くてもいいですっ!
それだけでは終わらないって事ですよね?
今回のタイトルからして、沖田くんと一くんが活躍しそうな感じがしますね。一くんに活躍してもらいたい!彼の動く姿を思い描きたいっっ…と勝手に私の気持ちをぶつけてみたり(笑
守る、護るというのが一くんに似合いそうですよね。
「っ・・、だめ、です。原田さん。」
「悪ぃ、もう、止められねぇ・・」
「でも、」
「いいから、お前が怖がることは何もしねぇよ。だから・・・力抜いてろ。」
「…ぁ…っ」
―暗転。
いいです。
妄想爆走しまくりです。ブレーキはききません。四方八方に妄想したものが飛び散ってます。
回収不可能なくらいに(笑
私も引っ張りました;ふふふ
薄桜鬼のグッズって出てるんですねー。
コメントを読んでアニメイトをチェックしたら、湯呑みとマウスパッドシール(?)というものが…。チェックを怠りました;;
買いにいかなきゃ。
横浜のアニメイトに行かなくちゃ。
今月末か来月頭に行かなくちゃ。
売っているかわからないけど…売り切れ、というお話も幾つか見たので…。
通販が確実かなーとか思うんですけど、やっぱり行って自分の目で見たいんですよね。
やっぱり平日の昼間、人の少ない時間に行って買い漁ってこようと思います^^
電王のイマジンカレンダーなるものも売ってるらしいんですが、通販では売り切れだったので店頭に再度並んでいることを願って足を運んでみよう…。
再び交換日記のような足跡を残してしまいますが(笑
続き、楽しみにしていますvvv
山崎くんの遊女姿をモヤモヤと想像しながら書きましたー。いやいや、ここは妄想ではなく想像ですからね!(笑)
遊女姿の山崎くんと千鶴ちゃんを並べたら禁断の愛的なものに見えるかな!!なんて思いながら書いていたらいつのまにか山崎くんがお相手のようになってしまって書き直しました(´v`;)
沖田君の思惑が今回は分かりやすすぎですよね!もう、目的がなんなのか千鶴ちゃん以外だれでもわかっちゃうっていう、ね!でも、私も見てみたいですー。(//∀//)沖田君だけじゃなくて、きっとみんな盛りモード全開ですよ!!(笑
あ、痛くてもいいですか?ではでは、お言葉に甘えまして・・!!
活躍するのは、もちろん沖田君ですが・・もう一方は・・実は決めかねておりまして・・、誰でも内容的にはいける感じなのですが・・、確かに一君が一番この場合は似合うかもしれませんね!!沖田君が攻める愛なら一君は護る愛ですよね!・・よし、一君メインで構想ねってみます!!
・・・攻める愛、な一君も書いてみたいなー・・なんてv
「っ・・、だめ、です。原田さん。」
「悪ぃ、もう、止められねぇ・・」
「でも、」
「いいから、お前が怖がることは何もしねぇよ。だから・・・力抜いてろ。」
「・・ぁ・・、っ」
「ほら、お前も感じてんだろ?」
「っや・・、違います・・っ・・、」
「・・俺は、お前が嫌がることはしたくねぇんだ。だから、この手、どけてくれ。」
「・・・っ、原田・・さん・・」
あれれ、どうしましょう。これ以上続けたらヤバくないですか?えー、こんな交換日記のような形で左之さん暴走!?
いやいやいや、私が引っ張りすぎたのが原因ですよね。ごめんなさい。
左之さんにも、ごめんなさい。
薄桜鬼の新作グッズは今月の13日の発売だったのですよー!
オトメイトフェアの波に乗りまして先月予約しておいたのです。マウスシールパッドなるものは、絵柄が可愛いですよ!!えーっとガルスタの前の前の号の表紙・・ですよね?今号が左之さんたちで前号がロデでしたので、その前があの総司と一君のツーショット!是非とも手に入れてください!!
っと、笑さんは横浜に近いのですか?うわぁv意外とご近所さんかもしれませんね!!横浜ではないですが私は川崎のアニメイトによく行ってます。でも、薄桜鬼グッズは本当に売り切れが早くて湯のみなんて予約しないと手に入らなかったんですよ(^^;)通販だと数の限りがあって、意外と店頭での販売、もしくは店頭予約の方が確保しやすいみたいですよ。
イマジンカレンダーって20日発売ですよね?私も予約しようかなーなんて思ってます!!
こ、交換日記・・・(//∀//)なんだか照れますね//
でも、結構楽しいですvいやいや、本当に嬉しいですよー!
また、お待ちしております~(^□^)ノシ
いやはや、とても次が気になる展開ですね~
、、なんて。もしかして、私ウザがられてます?そしたらごめんなさい。
でも、楽しみです!!
時間も無くて、読むのが死ぬほど遅い私が
この話を読み終わるのは、
一体いつになることやら、、、。
一生懸命読み進めるので、よろしくお願いします!
沖田は本当に何を楽しんでいるのだろう?
こ、このシリーズは少々長いお話ですし、
ちょっと色々問題作ではありますが…お付き合いくださいますと幸いです。
って、ぜんっぜん、うざがってなどいませんよ!
感想を頂けるのってすごく嬉しいです(*^▽^*)
基本的に、このシリーズは沖田ばっかりだし、
何かをしでかすのも沖田ですが…えと…じりじりと沖田に追い詰められる感を是非!楽しんでくださいませ!(笑
ゆっくり、自分のペースで読んでってくださいネw