「ちづるー!!おかわりっ!!」
元気な声が広間に響き渡る。
しかし、目的の人物からの返答はいくら待っても返ってはこなかった。
「・・あれ?千鶴?」
「ん?そういや、千鶴ちゃんまだ来てねぇみてぇだな。」
平助の隣で山盛りの茶碗から白米を口に放り込んでいる新八がチラリと広間の入り口を見遣って言う。来てない、と言われたにも関わらず平助はなんとなくぼんやりと辺りを見回した。
横から新八の箸が伸びておかずを一品取られたことにすら気づいていないようだ。
「そういや、あいつが朝飯に来ないなんて、珍しいな。」
左之も、どこか落ち着かない様子で箸を置いた。
奴にいたっては食事はほとんど終えているようで、その意味も含めての行動だったと思う。
しかし、平助はどうしても気になるのか空の茶碗を手に持ったままそわそわと落ち着きがない。
「俺、ちょっと千鶴の様子見てくるよ!!」
ガバっと勢いよく立ち上がって今にも広間から飛び出そうとする平助に左之が待ったをかける。
「平助、待てって。少し寝過ごしてるだけだろ。たまには寝坊させてやろうぜ。」
「でもさぁ、今日の昼の巡察一緒に行くって約束してるし、今飯食わねぇと飯抜きで行かなくちゃいけなくなるじゃん!」
「あ?・・あぁ、まぁ、そりゃそうだがよ。」
平助の腕を掴んで引き止めたはいいが、左之自身、心配になってきたらしい。
このままじゃ、二人揃って様子を見に行くと言い出しかねない。
俺は、誰にも聞こえないだろう程度のため息を漏らしてから、二人に向かって事情を説明することにした。
「平助、左之、座れ。」
「一君?」
「雪村は昨日、土方さんに頼まれた雑用を深夜に渡りこなしていたようだ。多少の寝坊は多めに見てやれ。」
「雑用?あー・・そういや、昨日の昼過ぎになんか山のような荷物抱えて歩いてんの見たなー・・。」
左之は思い当たることがあるのか、うんうん頷いて見せた。
「あー・・そっか、うん、起こしちゃかわいそうだよな。まぁ、巡察中にどっか寄ればいいもんな!」
「平助、お前、それ土方さんの前で言うなよ?」
「え?なんで?」
「巡察の最中に甘味屋だのに入ったなんて知られたら、雷落とされるぜ。」
「うっわ、マジで?黙っとこー・・」
「平助、事情が理解できたならば座れ。そろそろ席に戻らねばお前の飯はなくなるぞ。」
「へ・・?なんで・・、っあーーー!!ちょ、新八っつぁん!!俺の飯、なんで勝手に喰ってんだよ!!!」
ようやく、事態に気づいて慌てて自分の席に戻って行く平助を見遣って、再度ため息を吐き出す。
「土方さんから頼まれた雑用ってのはなんなのか、斉藤、お前は知ってんのか?」
「・・ここ最近、浪士との斬り合いで隊士の隊服の予備が尽きかけているらしい。針仕事や、屯所内に常備してある薬の確認など、らしい。」
俺の言葉に合点がいったのか左之は穏やかな表情を浮かべた。
「・・そういや、俺の羽織もあいつに縫ってもらったしな・・、」
「・・・・・・。」
「で、」
「なんだ。」
平助が文句を言いながら新八から飯を取り返そうと騒いでいるのを流して、左之は自分の席から湯飲みだけを持ち出し俺の横に腰を下ろした。
「千鶴のこと起こすな、つーのはお前の意思か?」
妙に意味ありげに笑みを浮かべている左之の思惑が図れず、眉間に皺がよる。
「何が言いたい。」
「お前にしちゃ、甘やかしてんだなぁ、ってな。」
「・・・・・・・。」
「っ、おい、斉藤?」
浮ついた視線に居心地の悪さを感じて、思わず、という具合に立ち上がってしまう。
確かに、普段の俺ならば平助たちを放っておくか、もしくは無感情にさっさと起こしてしまっていただろう。
しかし、今日に限って、なんとなく・・もう少しだけ寝かせておいてやろう、などと考えてしまった。
自分でも気づかなかったことを第三者に指摘されてカッと顔に熱が集まる。
「そこまで言うのなら、起こせばよいのだろう。」
「え、は?そういう意味で言ったんじゃねぇよ。」
慌てて俺と同様に立ち上がった左之を見て平助も口に米を放り込んだまま、立ち上がる。
「なになに!?二人とも千鶴のこと起こしに行くの?」
「え、あ、あぁ・・」
左之が曖昧に平助に返事を返し、仕方ない、とばかりに大げさに息を吐き出した。
「はぁ・・、結局起こしてやるんじゃねぇか。」
「新八っつぁんはどーする?千鶴起こしに行く?」
「・・んぐ、・・っはー!喰った喰った、おぅ、いくいく!」
平助から奪った分も含めてすべて腹に収めた新八は湯飲みに残った茶を飲み干して勢いよく立ち上がった。
「んじゃ、新選組の紅一点を起しに行くとするか。」
@あとがき
千鶴が、出てこなかった・・。
というよりも、少しくらい寝坊させてあげてもいいんじゃない?と、思ってしまいました(´v`;)
だって、ねぇ、たまには寝坊もいいですよね。っていうか、男4人でゾロゾロ女の子を起こしに行くだなんて!誰か指摘してあげて!千鶴ちゃんビックリしちゃう!
って、書いている私が言うのもアレなんですけどね・・。
とかいう私は寝坊が好きです。いや、遅刻してはいけない場面ではちゃんと起きれますよ!!休みの日に10時くらいかなぁ・・朝のぽかぽかした日差しの中でお布団の中でもぞもぞって気持ちいいですよねー。冬場のもこもこな布団が最高に大好きです!!
さてさて、そろそろゼミの作品を仕上げないといけない時期になってきました。
吉祥寺のギャラリー「創」で12月にゼミ展を行います。
キッズ・サイズ・デザインがゼミのテーマなので、そのまま子供の玩具の展示です。
2~4歳くらいの子供向けで、ちょっとしたおもちゃの販売もあります。興味がある方にはDMお送りいたしますので、拍手などでメルアド教えてくださいませ。後日詳細をお知らせいたします。
よし、宣伝終わり。頑張って作ります!!
後日談読みましたーv
あー、賑やかな一日が始まったんだなーと思える平助くんの「ちづるー!!おかわりっ!!」でした^^
新八さんはおかず争奪戦では平助くんに対して無敗な気がします(笑
一くん、かわいーvvちょっと切れ気味の「起こせばよいのだろう」が、いいっ!!
彼の頭の中ではいろんなものがグルグル回ってるのかなー。「自分は千鶴に対して甘やかしていたのだろうか」とか「何故寝かせておいてやろうと思ったのだろう」とか「平助や新八にも同じようなことを思われているのでは…」とか(笑
ちょっと近寄りがたいイメージの一くんですが、今の彼を目の前で見てしまうと、きっともっと彼のことを知りたくなるでしょうねー。
囮捜査で熱い一くん出ますか?
出してくださいますかっ?
心ときめかせてもいいですかッッ??
「攻める愛の一くん」は、別の話で出てくるのかと思っていたので、ここでみられるなら…サイコーです^^
「攻める愛の一くん」楽しみにしてます^^v
沖田くんと犯人との場面、楽しみにしてますv
はい、私も沖田くんは意外と千鶴ちゃんに関しては熱い男だと思います。
黒執事の骨クッキー、作ってみたくなりますね(笑)でも、犬のおやつ用のクッキーにありそうですけど…。
アニメから入ったので、原作を読んだとき大分違うなーと思ったんですよね。アニメの1話が結構ショッキングだったので…。でも、コミックスも面白いし、いい作品に出会えたと思いますvv結構同人誌も出ているようで、驚きました。私が知るずっと前からの作品なので当たり前なんですけど、ちょっとイベントに行く楽しみが増えましたvv
最後に行ったアニメイトに息子二人を連れて行ったんですよ。
電王のシールとかストラップとかをエサに(笑
全く反応せず(当たり前といえば当たり前なんですが…)、仕方ないので自販機でジュースを買って与え、邪魔にならないところで飲んでなさい。それとこれを分けて食べてなさい。と持参したラムネを与え自分はメイト内をウロウロしてたなー…。
今度は一人で乗り込んで(←?)ウロウロしてこようと思いますv
吉祥寺の「創」というところで昨年も展示されていたんですか?今、ギャラリーを検索したら大学で玩具の展示を昨年もされてたみたいで…。
2~4歳といえばウチの下の子がちょうど4歳なので、興味ありますねvv
家からも2時間しないで行けるようなので、詳細を教えてもらってもいいですか?
次回は…後日談の続編でしょうか?
囮捜査も後日談も毎回書き残してますが、本当に本当に楽しみにしてますvvv
後日談、閲覧くださってありがとうございました!!!
やっぱりにぎやかな雰囲気は心がゆるゆるになりますねー(笑
平助くんが大好きだなぁ、と改めて思い直しました!今度は新八さんに盗られずにお腹いっぱいご飯を食べさせてあげたいです!!
一君の扱いをどうしたいのか、もう自分でも分かりかねます・・。
結構、笑さんの感想を読んで気づくことってあるんですよ!私自身、執筆しているときはトランス状態っていうか・・無心で多人数の心情を頭の中で微妙な感じで混ぜながらダカダカ打っているので、アップした後に、へぇー・・一君にも可愛い一面があるんだなぁ、と自分で驚いてます(笑)
多分、今の私の頭の中と彼の混乱は似ているところがあるんだろうなぁ、と。ってことで、きっとモーニングコール後日談の彼は、また可愛い一面を披露してくれる、はず!ですよ!!(*´◇`*)
囮捜査の方も一君の出番が増えて、なにやら知らぬ間に一君一色ですね!
はい!熱い一君・・かは、微妙ですが、少女漫画のような展開にはなると思います!!今回は左之さん含めた三バカトリオはオマケ扱いですので、沖田くん共々、いろいろと動いていただきます!
骨クッキーの魅力は骨壷型の器に入っているって点だと思うのですが!(笑)実際、ああいう目の見えてなさそうな長髪の人って好きです。すみません。実はマイナー好きだったりするんです。
でも、確かに本当に面白い作品ですよね。コミケでは2日目扱いなんですよねぇ・・残念。
出来れば行きたいけれど、体力が持ちそうにないです~(;△;)
息子さんは、確かに、4歳と7歳・・でしたよね?
うーん、トレーディングカードゲームなどでしたら少しは時間が稼げるかもしれませんが・・やっぱり難しいですよね;
よしよし、でしたら私がいつでも子供たちの面倒みますから!だから、放っておいちゃダメですよ!ママのいないところで連れ攫われちゃいますって(>◇<)っっ
あ、ギャラリーの検索してくださったのですね!ありがとうございます!!
毎年、うちのゼミではそちらのギャラリーで展示をさせていただいているんです。興味を持っていただけて嬉しいです!!(*´∀`*)
来週、ゼミの方で細かい打ち合わせがあるので、それが終わりましたらメールにてご連絡いたしますね。DMもそろそろ完成なので、お送りしても大丈夫ですか?
さてさて、次の更新は・・どっちでしょう。。
順番に、とも思ったのですが、結構その時の気分ですので心の準備だけはしっかりとお願いしますね!暗いのがいきなりドーンとくるかもです!!