「ッ・・・・!!」
「すまない、雪村君、大丈夫か?」
「は、はい・・・。」
普段から高く結い上げてはいるけれど、そこから更に巻いてから簪とか小物で髪を飾っていく。
私の髪の長さでは芸子さんのような立派なものはできないし、かと言ってつけ髪を被れば重くなって、いざ襲われたときに逃げられない。そうした配慮から、山崎さんは先ほどから工夫しつつ、髪を飾ってくれている。
「・・・・・・・。」
彼はいつにも増して口数が少ない。
傷口が傷むのだろうか。何度か声をかけたのだけどたいした傷じゃない、と取り合ってはくれなかった。
確かに傷口を少し見た程度だったけれど、そこまで深い傷ではないことは私も分かっていたから、無理には手当てをしたいと名乗りだすこともしなかった。
彼は、きっと、その傷に・・今、他人が触れるのを許してくれはしない。
「・・・すまないな。」
「え・・?」
「俺の怪我のせいで君に危険な役を押し付けてしまった。」
「え?山崎さんのせいじゃないですよ!?」
押し付けられた、だなんて、私がそんな風に思っているだなんて本当のところは山崎さんも思っているはずがない。けれど、きっと、彼は自分の責任を更に重くしたがっているんだろうな、とぼんやりと思ってしまった。
「・・せめて、護衛の任だけでもと思ったが副長に止められてしまった。」
「・・・・・・・。」
彼が今、どんな顔をしているかなんてわからない。
けれど、髪を結う手が少し不自然で、いつもの彼らしくなく落ち込んでいるということぐらいは隠そうとしても伝わってしまうもので、
「山崎さん。」
まだ出来上がっていない髪を自らでザカザカと強引に仕上げて、勢いよく振り返った。
「私、自分の身を護ることも満足に出来ないですけど、与えられた仕事は精一杯努めてみせます!
だから、今は、怪我を治すことだけに専念してください。山崎さんのすべき仕事はまだ、山のように残っているんですから!!」
「・・雪村君、」
大雑把にまとめた髪に笑ったのか、それとも私の言葉で少しは落ち込んだ気持ちを持ち上げることが出来たのか、そんなことはどちらでもいい。
ただ、沖田さんのちょっとした思い付きであったとしても、山崎さんの怪我という予想だにしなかった事態があったからだとしても、私が新選組の中で何かが出来るのだとしたら精一杯、努めたい。
雪村千鶴、頑張ります!
「なぁ、あれ、ほっといていーと思う?」
「・・・・・・。」
平助が機嫌悪そうに声色を多少低くして呟くように言う。
ほとんど独り言にも近かったが、その言葉は俺を含めた幹部連中にはしっかりと届いていて、皆それぞれで不機嫌さを隠しもせず仏頂面で酒を呷る。
「・・よかねぇだろ、っても、あいつら平隊士にゃ何も知らせてねぇからなぁ・・。」
新八も居心地が悪そうに、普段は上機嫌に酒をかっ食らうところが今日に至っては不味いといわんばかりの渋顔だ。
千鶴が遊女として遊郭に潜入する、ということは何とかそれだけは防ぐことに成功した。
っつても、ここも似たり寄ったりな見世ではあるが、少なくとも客もそればかり目当てではなく純粋に酒を飲む場としての利用の方が多い見世だ。新選組にとっても馴染み深いし、なによりも女将に話がつきやすかった。
ここんとこの辻斬り騒ぎにはこうした界隈の連中にとっても迷惑していて、事件解決を望んでいる。
そこで副長が手回しをして、千鶴を芸子として潜り込ませる事ができたってわけだが・・
「正直、この状態はおいしくはないわな。」
千鶴の芸子姿はそりゃぁもう、予想以上にべっぴんで俺も平助も新八も口をあんぐり開けちまって総司に爆笑されたもんだ。
護衛として監察の誰かが引っ付いてるとは言っても山崎が負傷したくらいだ、心配にもなる。
様子見として俺らが平隊士引き連れて行けば千鶴は案の定、不安を顔いっぱいで表現しながら俺らを出迎えた。
「つか、ほんと、あいつ千鶴にひっつきすぎ!」
「平助、お前、ちょいと落ち着け。」
「落ち着けって?冗談キツイぜ、左之さん。もう我慢の限界だって、」
平助がギリと唇を噛み締めて睨みを利かせるも酔った奴にはたいした効果はなかった。
組長である平助の睨みに気づかず女を口説いてるっつーところはたいした器だと誉めてやりてぇところだが、こいつぁただの神経が鈍ってるだけの話だろうな。
「そっか、君ってまだ新人だったんだね。」
「は、はい。お手柔らかにお願いしますね。」
あからさまにド素人な仕草でも、酔った客には逆に初々しく誘っているように見えちまう。
千鶴の控えめだが柔らかな物腰と普段の可愛らしさに紅引いて色を乗せた微笑に男は視線を彷徨わせて落ち着かない様子で酌を受けていた。
「いや、うん、こういう見世って普段はなかなか来れないんだけど、でも、君みたいな子がいるなら通ってみようかな。」
「え、そんな、その、ありがとうございます。」
山崎に稽古つけてもらった言葉遣いも一切頭から抜け落ちちまった状態の千鶴は、ほんの一刻ほど前までは俺らのとこで酌してたがあいつに捕まっていらい、なかなか傍を離れることも出来ず困ったように苦笑している。
他の隊士を連れてきたのは、俺ら幹部連中が千鶴の脇を固めてちゃあまりにも不自然だろうってことだったが、これはこれで任務に支障をきたしかねねぇな、と酒の席だってのに眉間に皺がよっちまう。
事情を何も知らねぇ平隊士にとっちゃ、俺ら幹部もんに連れてきてもらう機会でもなきゃ、こういう場に来れねぇっつーことも理解してるし、化粧に慣れすぎてる女どもに比べりゃ千鶴が初々しくて可愛くてどうしようもねぇのも分かる。
が、何も知らない、ってことで許してやれるほど俺は出来ちゃいねぇんだわ。
「っ・・、あの、やめてください・・」
と、そこで焦ったような千鶴の声が耳に届いて俺は思わず手に持ってたお猪口を床に転がした。
「ごめん、でも、ちょっと二人で話がしたいだけなんだ・・少しでいいから散歩とか、ね、」
「あの・・「菊池、いい加減にその手離さねぇとたたっ斬るぞ。」
ゆったりとした酒の席で、強張ったような新八の低い声が響いて、場はシンと静まった。
@あとがき
一瞬、あれ、今回の相手って山崎くん?って自分で驚いてしまったわけですが。
なんとなく、後から山崎君が相手役でもよかったなぁー・・なんてぼんやりと思ってしまいました。彼もゲーム本編で攻略対象にしていただきたかったです。この話の後日談とかでは山崎君メインにしてしまおうかなぁ・・なんて思ったりもみたりするのですが、いいでしょうか(´v`*)
そしてそして、舞台はようやく潜入したお見世に移りました!!
千鶴ちゃんの花魁姿は見てみたいけど・・今回はもちろん芸子止まりですよ!まさか、千鶴ちゃんに本当に遊女になれ!なんて、そこまで鬼じゃありませんから!(苦笑)
ちょっとばかり、場の展開が微妙でして、混乱しやすいかもしれません。
文章力のなさが滲み出ているなぁ、と反省しつつ、こそこそと修正しているかもしれません(笑
今回のお話は場に合わせて視点を変えております。通常は千鶴視点で物語を進行させているのですが、その他は左之視点、一君視点が多いかなぁ、と。なんとなく、彼らが適任ではないかと・・。
で、左之さん怒ってますが、先にプッツンいってしまったのは新八だったり・・します(´v`;)さてさて、囮捜査なのに騒いじゃダメですよねぇ・・・。
はい、えっと、次回の更新はモーニングコール後日談の方を執筆しようと考えております。なんとなくこっちもバタバタした展開ですが、よろしくお願いします(*^∀^*)
では、ようやく一息ついたのでお風呂入って来ます~。
平助くんたちも気が気じゃないですよねー。目の前で他の隊士につかまってる千鶴ちゃんがいるのに、間に入っていくことも出来ない…。
そんなところに千鶴ちゃんの「やめてください」ですからね。
どうなるんだろうvv
もう、ウハウハです^^あ…なんかもう待ちきれない(笑
後日談、山崎さんいいと思います。「薄桜鬼」のゲーム自体に「2」はないでしょうから、山崎さん攻略もやはり無いんでしょうねー…。「2」とか、なんかあれば、攻略キャラ追加!っていいと思うんですけどね。…無理かなー、やっぱり(泣
結構山崎さん、新八さん攻略したかったとおっしゃってる方多いですよね。追加ソフトって無いですかね(←しつこいですね;
暴走バージョン復活願います(笑
エロ左之さん、大好物です。男な左之さんも大好物です、が。
あの、左之さんは…今まで読んだ中のエロ左之さんの中で、結構エロ強いと思います。
別にそういう左之さんばかり探してるわけじゃないですが(←言い訳に聞こえるのは何故だろう…)、頭に血がのぼります…。
夢オチでもいいですっ復活希望っっっ!!!
DM送ってください^^土日開催してますか?幼稚園がまだ終わってないかもしれないので、行けるのは多分土日になってしまうんですが。
旦那も気になるようで。
よろしくお願いしますvvv
ではではv
またお邪魔しますv
平助君が一番表立って見れず照れてたりしそうですね。あー、でも、意外とすんなり「すっげー可愛い!!」って言えそうなのも彼ですよね。
薄桜鬼2は・・きっと無理ですよね。ファンディスクくらいは期待したいところなのですが・・・。語られなかった彼らとの物語・・とか、あったら最高に嬉しいです。是非とも新八を!!と(^□^)
友情ルートとかあって欲しかったですね。左之と新八と3人仲良くわいわいとか・・平助がどのルートも羅刹化でかわいそうだったから、その辺を少し・・なんて、いろいろ希望を挙げたらきりがないのですが・・ただただ期待せずには居られないですよね、やっぱり。
あぁ、でも、ドラマCDは出るのですよね。そちらは普通に楽しみです!日常のほのぼのとした雰囲気だとよいのですが・・どんな内容かわくわくですよね!
左之さん暴走バージョンは密かに執筆中です(笑)
エロ左之さん、というか左之さんの中にエロが含まれているというか・・(苦笑)とにかく、彼は色っぽすぎですよねー・・なんか、本編の彼が男前なくせにエロすぎて、創作にも影響を受けまくりです!!(//へ//)
アップしたら告知はしませんので、小説一覧にさりげなく追加しておきます。たまにご確認いただけたら、と思います。
ゼミ展は12/11(木)~12/17(水)
12:00~18:00 最終日 ~17:00で行います。
土日でしたら私もなるべく会場に行ける様にシフト組みますね!いろいろテンパってるかも知れませんが・・(^∀^;)
あ、DMはお送りしますが、本当にご都合ついた場合でいいですよ!
DM自体はゼミのメンバーにママさんがおりまして、実子に被写体モデルとして活躍してもらってます。ポストカード感覚で受け取っていただけるだけでも十分ですので!!
ではでは、幼稚園の行事などで忙しいところ、ありがとうございます!!
筋肉痛は大丈夫ですか?無理なさらずに体調気遣ってくださいね。