「しかし、安心してる場合じゃねぇだろ。」
「・・だな。別に事件はなんも動いちゃいねぇ。」
新八が大通りに面した窓枠に肘を乗せてチラリと外を仰ぎ見る。
そこまで遅い時間帯じゃぁないが、どうにも人の気配が感じられず随分と寂しくなっちまった。
「俺らが毎夜通ってやれるわけじゃねぇしなぁ。」
「一応、護衛はつけるっつってただろ、土方さん。」
「・・、あぁ、別件があるからあんまり人員は割けねぇから一人か二人とは言ってたが・・。今日もついてるはずだぜ。」
「あー、なんとなく気配は感じてるけど、山崎じゃねぇだろ?」
あいつはまだ怪我が完治してねぇ。
土方さんも許可してねぇと言ってたし、
「島田あたりじゃねぇの?・・・いや、斉藤、かもな。」
「斉藤?あいつは監察じゃねぇだろ。」
「監察方が別件で動いてるって話だ。左之、お前も聞いてんだろ。長州のやつらが京の町で何かしやがるつもりだって。」
長州のって、あぁ、枡屋あたりでこそこそ動いてるって話か。
山崎と島田がせわしなく動いてるってのは知ってるが・・、
「で、斉藤ってわけか。」
「ま、俺らに隠密は無理だろうしなぁ、」
からからと笑って新しい酒に手を伸ばす新八を横目に、俺はふと先ほど奴が見遣った大通りに目を向けた。静か過ぎて、人っ子一人住んじゃいねぇような寂しいそれに、ふと矛先の分からない怒りを感じる。
「さっさと犯人が捕まってくれりゃ千鶴にあんな思いさせなくてすんだだろうによ。」
独り言のようなそれを聞き取って新八はふっと、苦笑を漏らした。
「でも、ある意味総司には感謝はしてるぜ。」
「あぁ?」
「千鶴ちゃんのあんな姿、そうそう拝めるもんじゃねぇしな。」
「・・は、お前にはもったいねぇよ。」
まさか、俺を気遣ったわけでもあるまいに、だが、有難く受け取っておく。
新八の言葉は、この陰気な気持ちを吹っ飛ばすにはちぃっとばかし足りねぇが、
それでも、京で馬鹿でけぇ何かが起きようとしてるっつー中でも笑ってられんのは、千鶴がああして俺らの中で笑顔を見せてくれるってのも理由のひとつで、俺らはそのちっぽけな小さな理由にどいつもこいつも救われてる。
「あー、なんだか今日は飲んだ気しねぇ。」
「おぅ、平助。千鶴ちゃんは?」
と、そこでようやく平助は新八の横に戻り、どかりと腰を下ろした。
「なんかあの衣装ってさ、何枚も重ね着してて暑いみたいなんだ。ちょっと気分悪そうにしてたから隣の部屋に連れてった。」
「そういや芸子のねぇちゃんたちも着付けは大変だって言ってるよなー。」
「で、千鶴、大丈夫なのか?」
「あぁ、水飲んで大分顔色良くなったし。ほら、あいつのせいで変に気疲れしたんだろ。」
新八に一喝され縮こまっちまってた菊池の方を顎で指す。
壁に寄りかかったまま、落ち込んだ風にも見えるがあいつも運が悪ぃなと今更ながらに同情する。
普段ならば、いや、相手が千鶴でなきゃ俺らの機嫌をそこねることもなかっただろうに、と、ここまでぼんやりと考えてたら当の本人である男がふらりと足元おぼつかない様子で立ち上がる。
「少し頭冷やしてくんだろ。まぁ、あいつ自体には非はないんだけどよ。」
「・・まー、相手が千鶴でなきゃ、ってことだろ。」
誰もがこのときは、奴は運がなかった、とある意味での同情の視線を投げかけていた。
部屋から去ろうと向けられた背に不吉な何かが漂っているとも知らずに。
「あれ?あいつどこ行った?」
「あいつって誰?」
珍しく早めに切り上げて見世を出てしばらく歩いたとき、ふいに思い出したように新八が辺りを見回す。
飲み足りない様子の平隊士をせっついて見世を出たのは千鶴のためだ。
被害にあったっていう女は皆が皆、夜分に外を出歩いたところを背後から襲われている。
だから千鶴も日が暮れたらこの辺り一帯をとりあえず歩いてみろ、と土方さんから言われてるはずだ。
俺らが周りを固めてちゃ犯人とやらは出てこないかもしれない。
心配だが護衛もついてるしってことで、早々に見世を出たわけだが・・、どうにも足りねぇ人数に首をかしげる。
「今日は誰も抜けなかっただろ。」
言わば様子見として出向いたんだ。普段どおりにこのまま朝までってわけにもいかねぇ。
だからほろ酔い程度で見世を出たのに、どうにも違和感を感じる。
「左之、平助、お前らなに言ってやがる。菊池の姿がねぇだろうが。」
「・・・いつからだ?」
菊池、と見逃せない奴の名前が出たところで一瞬、緊張が走る。
「俺、飲んでる最中に部屋出てから見てねぇ気がする。」
平助が見世の方を振り返る。
「おぅ、お前ら。先に屯所帰ってろ!」
「俺らもすぐ戻る。心配すんなよ、」
「え?組長!?」
@あとがき
芸子姿がどうとか遊女とどう違うとか、詳しいことは何も知りません・・。ごめんなさい。
なんとなく、成人式のときは苦しかったなぁー・・なんて思い返してさりげなく入れてみただけです(ーー;)
で、次回辺りから進展があるかも!ですが・・次の更新はモーニングコールかもしれない、ので、なんともいえません・・。とりあえず囮捜査は次回から少し動きがありますよ!彼らもやっとこさ登場ですよ!
モーニングコールはひたすらお馬鹿なノリですので、せめてこちらは緊張感ある展開を・・書きたいなぁ・・なんて・・・(*^v^*)
そういえば、またも黒執事の録画し忘れて・・こうなるとデスノやネウロの二の舞・・・。深夜アニメって・・ほんと、いつも録画忘れてしまうんです・・。これはDVD買えってこと?それとも忘れ去れと、そういうこと?もういっそ、アニメなんてナルトと銀魂だけでいーや、と開き直ろうかなぁ・・。。(;へ;)
新八さんと左之と平助くんの会話を見ても、いつもの会話という感じですし。
最後の辺りはちょっと気になる展開で終わってますよね…。菊池くん、どこ行ったんですかっっ
3人のほろ酔い気分も一気に飛んで行っちゃいましたね。
次回の囮捜査は「彼ら」が登場するそうで…モーニングコールの次の更新、楽しみにしてますー^^
付き合いだしたばかりの中学生な平助くんと千鶴ちゃん…たしかに(笑
初々しいのか。この二人だと。
大人なほかの人と並んでも、初々しさが出ないですもん(笑)左之さんたちには申し訳ないですけど…。
二人には淡い初恋のイメージが…。
…て、何言ってるんでしょうねーホホホ
すいません…エロ度の濃さの話を延々と語ってしまって(笑
そんなつもりじゃなかったんですが…。昔と感覚が変わってきたのか、単なる年齢のせいか。
エロに対するものが違ってきたというか…て、また語ろうとしてる自分にちょっと呆れたり(笑
明日横浜行きたいなーなんて思ってたんですが、何か無理そうなのでいけそうな日にメイトに確認してみます^^
行って空振り、というのは悲しいですからね。
薄桜鬼のグッズと電王のカレンダー…絶対手に入れたるっ!!
「東京おもちゃ美術館」…名前は聞いたことあるんですが、一緒に作ったりもできるんですねーvこちらも面白そうなvv
上の子が小学校に上がってから、室内で遊ぶ場所が少なくなってきているので、こういう場所というのは本当にありがたいんですよね。
またお邪魔しますーv
いつもメッセージありがとうございます!!疲れて帰宅した後にコメント読ませていただくと癒されます~
今回の囮捜査は次回からの急展開に備えての繋ぎなお話だったのですが、意外と左之さんと新八の真面目な雰囲気って言うか普段の会話は好きなのでついつい入れちゃった感はあったりします(ー∀ー;)
次回は彼ら、と言っても両方出てくるかは微妙ですが・・ようやく急展開なので気合入れて執筆します!!(>□<)
平助君と千鶴ちゃんは・・清く、健全な可愛い2人でいて欲しいんです・・。もう、初々しくて遠い目で書いてたりします(//へ//)
あ、エロ度についてっていうか・・なんとなくお気持ちわかります!!
幾分か大人になってくるとそういうのに対して感覚が変わってきますよねぇ・・。昔は随分と無茶していろいろ書いていたことがあるのですが・・今はそういうの出来ないなぁって・・、あれ、気づくと語っちゃってますね、ほんとに・・(´∀`;)
薄桜鬼グッズ、今後もまだまだ出るみたいで楽しみですね!!
やっぱり売れ行きいいものって新作もどんどん出るって言う大人の事情が今は嬉しいです!(*´∀`*);
おもちゃ美術館などって、子供にとっても楽しいですけど大人にとっても楽しめたりしますよね~。私もまた遊びに行きたいなって思ってます(^□^)
再びお邪魔しております。
気になるところで終わってますね。
皆ホントに千鶴大好きなんだなぁ♪
ってか菊池君。
不憫だったんですが、千鶴に目をつける辺りは女を見る目はあるんですね
ただ相手が・・・・幹部全員狙ってる千鶴ってのは不運としか言いようがないですが、どこに消えたか気になります。
また来ますね!
ではドロンξ
ウチは基本逆ハーサイトなので、千鶴ちゃん至上主義なのですよ!!
っと、菊池君は、そうですね・・少し可哀相な役回りをしてしまったなぁ・・とは思うのですが、それでも次回にも登場してくれたりします。さてさて、展開がどう変わっていくのか、ご期待くださいませ(^v^)
また是非遊びにいらしてくださいね!
お待ちしております!!