忍者ブログ
期間限定。薄桜鬼小説ブログ。
[10]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [3]  [2]  [1]  [110
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 



「えっと、あの・・ではお茶の用意してきますね。」

視線から逃れるようにして踵を返せば、やんわりと制される。


「僕も一緒に行く。」





「・・・・・。」

「・・・・・。」


お茶とお団子をお盆に乗せて、彼の希望で中庭までくれば涼しくて気持ちのいい風がさらりと頬を撫でる。
陽気はこんなにも心地いいのに、どうしてか、この場の雰囲気は重たい。


会話・・、
何か、言わないと・・・


そうは思うけれど、沖田さんがお茶を片手にぼんやりと空を眺めているから、声をかけづらい。



「ねぇ、」



そうして、少しの時間が流れて、
彼は時間の経過などまるで気にしていないかのように、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「今日の昼間、誰と甘味屋に行ってきたの?」

「え?あ、原田さんと平助君とですけど・・」


こちらに視線を向けるわけでもなく、未だに空を眺めながら彼は低いトーンの声で言う。

「へぇ、それでお土産、か。」

「えっと・・、」


なんとなく不機嫌なのは分かるけれど、その原因が自分には見当がつかない。

「あ、あの、もしかして・・甘いものはお嫌いでしたか?」

「・・うん、すごく好きってわけじゃないね。」



「あ・・、ごめんなさい・・。」


だから彼は私の渡したお団子に手をつけようとしないのか。
好みを聞いておくとか、もう少し配慮できただろうに、自分の落ち度に落ち込んでいると、



「でも、別に嫌いじゃないよ。」


そう言って彼はようやく包みを広げて1本のお団子を手に取った。


「ここのお団子は平助君にもよく貰うし、けっこう好きかな。」

「そ、そうですか・・。よかった。」


彼が空から視線をはずして向き直ってくれて、そうしてお団子を一口頬張って、にっこりと微笑んでくれた。
そこでようやく私は深い安堵のため息を吐き出した。


「うん、だから僕から君にお礼があるんだ。」

「え?」

「はい、お土産。」


お団子が刺さった串を口にくわえたまま、彼は脇においてあった大きな包みをこちらに向かって差し出した。
そういえば、部屋から出たときもお茶を入れるときも沖田さんはそれを手放さずに大事そうに抱えていた。

私は、少しそれを受け取るのにためらってしまって、でもじっと見つめられる視線に耐えかねゆっくりとした動作で受け取った。


「えっと・・これは、」

「早く、あけて見てよ。」

「はい。」


がさがさと包みを開ければ、ふわっと甘い香りが漂う。



「わぁ・・・綺麗、です・・。」


綺麗に飾られた和菓子に思わず感嘆の声をあげる。
お饅頭だったり、羊羹だったり、中には他にもたくさん詰まっていて、とても1人では食べきれない。



「沖田さん、これ、みんなで一緒に食べましょう。」

「だめ。」


「え?」

「だーめ。それは君に買ってきたお土産。だから全部千鶴ちゃんが食べてよ。」

「ですが、こんなに1人で食べ切れませんよ?」

「左之さんの奢りのお団子は食べたんでしょ?だったら、僕のお土産も全部食べてよ。」

「えっと・・、」


ずずいっと押し付けられる和菓子の山。


「ねぇ、どうして食べないの?」

「あ・・いえ、でも…」


目の前に山と詰まれた和菓子に、思わず顔を引きつらせてしまう。
真横でにっこにこと気味悪いほど素敵な笑顔を振りまく沖田さんがいるせいで、断るに断れない。


「同じお店の和菓子でも、左之さんたちと食べるお団子より僕と一緒に食べる方がおいしいと思うよ。」

「え・・?」

彼は私が買ってきたお団子をもう1本手にとって口の端を持ち上げて意地の悪い笑みを作る。
これは、もしかすると・・



「見てたのですか・・?」

「・・・・うん。今日の昼の巡察は一番組だったしね。」


だとしたら辻褄が合う。
きっと原田さんや平助君との会話を聞いて、文字通り“拗ねて”いるのかもしれない。


「・・沖田さん。」

「ん?」

「今全部は無理ですけど、ちゃんと、ぜんぶ頂きます!
沖田さんが私のために買ってくれたんですから、大事に大事に食べます!」


少し勢いをつけて宣言すれば、彼は驚いたように目を丸くして、でも、ややあって柔らかく微笑んだ。


「ありがとう。そんなに喜んでくれてるんならもうひとつ、」


裏表のないような笑顔を作って、彼は和菓子の山から小さな栗のお饅頭をつまんで私の口元へ差し出した


「僕が、食べさせてあげるよ。」




「え・・・、」

「ねぇ、嬉しいんだよね?喜んでくれてるんだよね?
左之さんや平助くんと食べるお菓子よりもおいしいんだよね?」



私、そこまでは言っていません・・。

だけど、そんなことを口に出来るはずもなく、

断ることを許さないという沖田さんの笑顔に押され、私は観念してゆっくりと口を開いた。



 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
mail
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
沖田かっこいい!!
私、薄桜鬼の中で沖田さんが大好きです!
この小説の最後でメチャクチャ盛り上がりました!
なんでこんなにかっこいいんだろう?

アゲハ 2009/08/19(Wed)15:12:30 編集
ありがとうございますv
こんにちは!
コメント有難うございます(^v^)

アゲハさんは沖田好きなのですね!
喜んでいただけてよかったです(><)

うちのお話はなんだかんだで沖田出現率が高いので、いろいろ読んでみてくださいねvあ、ここにも沖田でた!とかそんな感じになると思います(笑)
千尋  【2009/08/22 09:30】
感激ですっ!!
お返事ありがとうございます!
もう感激です!!
、、、こんなこと書く私は変ですか?
でも嬉しかったので返信いたしますっ!
これからも応援するので
どうか、頑張ってください!
(とゆうか、顔文字ってどうやって
打つんですか?)
アゲハ 2009/08/23(Sun)10:55:05 編集
こんにちは(^v^)
こんにちは!!いらっしゃいませ
メッセージありがとうございます(*^v^*)

よ、喜んでいただけて恐縮です…
こちらこそ、応援メッセージ本当に嬉しいです。
有難うございます。

顔文字は、うーん・・・私も得意ではないのですよ。
()の間に^^とか入れて、あとは組み合わせ…ですかね?
検索とかしていろいろコピペして勉強してみるっていうのも楽しいかもですよ!(*^∀^*)
千尋  【2009/08/29 13:41】
やばいです
すごくいいです!(◕ฺ‿◕ฺ✿ฺ)
拗ねてるかんじの沖田さん
最高すぎです★☆(°▽°`照)

ナキアミ 2009/09/06(Sun)19:46:42 編集
Re:やばいです
こんにちわ!
メッセージ有難うございます!!

拗ねない沖田は沖田じゃない!を信条にこれからもがんばります!(笑)
これからも楽しんで頂けましたら幸いです。
千尋  【2009/09/13 13:05】
ごちそうさまです(>。<)
凄くよかったです!!
最後の沖田さんがとてもかわいくて///
とても楽しめました☆
水月 2009/09/23(Wed)13:46:50 編集
お粗末さまです(^v^)
こんばんは~(^▽^)
メッセージありがとうございます!!
楽しんでいただけて何よりです。

沖田は拗ねている感じが一番可愛いですよねv
うちの沖田は拗ねているって言うよりSっぽいですけど・・・(^^;)
千尋  【2009/10/10 23:55】
はじめまして!
ちょっと拗ねてる沖田さんがすごくかわいかったです!千尋さんが書いてるお話は全部面白くてほとんど読みつくしてしまいました(><;)
これからも、楽しみにしています!!
花涙 2010/07/17(Sat)15:54:19 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
HN:
千尋
性別:
女性
職業:
社会人
趣味:
ゲーム
自己紹介:
薄桜鬼二次創作
小説はシリーズで連載しています。

        
■参加させていただいております!
千鶴総受けアンソロジー
左千お題企画
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[06/25 れみ]
[05/06 しょう]
[03/22 足跡ぺたり]
[01/21 足跡ぺたり]
[10/28 シロ]
カウンター
フリーエリア

ただいま、五年生に夢中です!


竹谷が揃ってこその五年生!!


拓人は凛々しい顔が一番スキ!


拓人が普通に一番男らしいと思う。

『黒と金の開かない鍵。』|little-cheese

















バーコード
ブログ内検索

Copyright (c)Heretique All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Photo by Kun   Icon by ACROSS  Template by tsukika


忍者ブログ [PR]