「一君の言うとおりだからさ、これ以上僕らの周りで馬鹿騒ぎしないでね。」
「っ・・、総司くん・・、」
「あ、それと・・君に僕を総司くん呼ばわりする権利、ないから。」
崩れ落ちた相手を更に踏みつける。今の状態はまさしくそれだな、と思う。
傍観して、位置関係を少し冷静に見てみればなんとなく察しがついた。
この沖田に始まり斉藤、平助といった面々はどうやら千鶴ちゃんとは親しい友人、を超えて別の、やはりどこか家族にも似た繋がりがあるんだろう。家族、という発言に対して信じたわけじゃないけど、どうしてか否定する気が起きない。
「春ちゃん・・」
「ん?どうした?」
先輩たちが唇を噛み締めて、それから逃げるようにその場を去っていって、ふぅ、と一息ついた。
そこで、裾を小さく引かれて振り返る。
千鶴ちゃんがこちらを見上げてようやくホッとしたのか笑みを浮かべている。
「助けに来てくれて、ありがとう。」
「あぁ、かまわないよ。千鶴ちゃんを護るのはあたしの役目、だしさ。それより、他に何もされてない?」
「うん、大丈夫。」
頭をくしゃくしゃと撫でる。
私に比べて随分と華奢で可愛らしい彼女はいつだって頭を撫でると少し恥ずかしそうにする。でも、決して拒んだりしないからいつだって撫でてやりたくなる。
「なぁ千鶴、結局のところ、そいつだれ?」
「え、あ・・、えっとね。」
私と千鶴ちゃんの様子をきょとん、としながら眺めていた平助って奴は首をかしげる。
そういえば、先ほども奴はこっちを物珍しそうに見ていたが、状況が状況だったために返答がなされずじまいだった。
千鶴ちゃんが紹介してくれようと口を開いたとき、第三者の声がそれを阻んだ。
「春ちゃん、だよね。」
「え・・?」
「ほら、よく千鶴ちゃんの話に出てくる格好いい友達って、この子のことでしょ?」
「え!?でもそれって女子の友達だろー?」
大きな目をパチパチと瞬いて、失礼にも指を差してくる。
「悪かったな、女に見えなくて。」
「・・・え!?もしかしてさ・・、女、とか?」
「女に見られたくないって思ってこんな格好しているからアンタみたいに気づいてくれない方がいいんだけどな。」
口を大きく開けて、パクパクと魚のように言葉にならない声をあげている平助を流して、沖田、斉藤を見据えた。私の視線を受けて沖田は一度だけ瞬いた後、にっこりと笑う。
「なに?」
「兄とか妹とか家族とか、そんなん後でたーっぷり説明してもらうとして・・、」
それから一旦、間を置いた。言葉を選ぼう、と珍しく思ったのだ。
なんとなく、他人がそこまで口を出していいものなのか、と本当に普段よりは随分と落ち着いてそう考えた。
しかし、頭の中ではぐるぐるといろんなことが駆け巡って考えがまとまるはずもなく、奴らに言いたいこともまとまらず、
「・・・・・・・。」
「ん?なんだよ、黙りこんでさー、」
やっぱり・・・冷静に考えて、そうして言葉を選ぶなんて真似、出来そうになかった。
ガン!!と、思い切り腕を振り上げて壁に叩きつける。
さっきも同じことをしてしまったせいで、外壁が悲惨なことになっているがこの際、気にしていられない。
「お前らさ、この子のこと・・家族って言っただろ?」
「あ、ああ。」
驚いたように目を見開いた平助と、その後ろに立つ沖田、斉藤を見据えて瞳を細めた。
「この子が、こんなとこで上級生に呼び出しくらって絡まれたのって、お前らのせいって自覚、あんの?」
「は、春ちゃん・・・。」
「沖田は自覚、あんだろ?さっきの上級生・・、まぁ、お前らにとっちゃ同級生の女どもはさ、お前らのファンだって言って騒いでる連中なんだ。親しげに接する彼女に対してどういう行動をとるかってことぐらい、理解してただろ。」
「・・まぁね。ただ、僕だってまさかこんな古典的なことをしでかすなんて思わなかったからね。」
「誰も未然に防げるくらいいつだって傍について護ってやれだなんて言ってない。ただな、男は大事な女護ってなんぼなんだよ。それが出来ないようなら軽々しく家族だなんだ言ってんなよ。情けなく見えちまうぞ。」
「・・・・だよな、うん・・オレらの落ち度だよな。」
平助は少しばかり眉を下げて、状況も未だに詳しく分かってないだろうに反省してますって素直な態度を見せる。が、沖田に至っては右から左に流しちまったような相変わらずの笑顔のままで、いい加減、本当に殴りたくなってきた。
「でもさ、僕らが気をつけたって言いがかりをつけるのは基本的には女の子なんだよね。僕らじゃ対処しきれないときの方が多くないかな?」
「そういうことを言ってるわけじゃない。お前らが気を回すべきは動き出した後の対処よりも、それを未然に防ぐための対処だろ。」
「・・用件は理解できた。総司のやつは放っておけ、こいつに構っても時間の無駄だ。」
「あ、なにそれ。一君、酷くない?」
「俺たちも出来る限りは善処しよう。しかし、そちらの校舎にて起こった出来事に関してはアンタの協力も必要となる。」
斉藤の言葉に、当然ながら私は口端を吊り上げた。
「それは、当然だな。東棟にいる普段の生活に関しては、彼女の傍には大抵ついてる。その点は心配には及ばない。」
「・・ああ、先ほどの行動から見ても信用できるだろう。俺たちの妹のこと、よろしく頼む。」
淡々と、だが微かに微笑むその表情から千鶴ちゃんを大事に思っていると言うことが素直に伝わってくる。本当にこの男は純粋でまっすぐな綺麗な瞳をした男だ、と素直に関心してしまった。
「・・なんか、お前、格好いいやつだな。」
「・・・なんだ、突然。」
本当に素直にそう思ったから口を出た言葉だったが、斉藤という男には上手く伝わらなかったらしい。
「いやいや、こっちが頭に血が上ってたってのもあるけど、お前と言葉を交わすと落ち着くよ。うん・・、沖田なんかが千鶴と兄妹っつーのは信じられないし、信じたくもないけどさ、アンタが兄貴ってんなら納得だわ。」
「・・・そうか。期待を裏切らない努力はしよう。」
「ねぇ、あれって・・僕、納得出来ないんだけど。」
「俺なんて兄貴だと欠片も信じてもらってねーし・・。」
この後、ぐちぐちと文句を言う二人を無視して、急いで球技大会に向かうもすでに第一試合は終了していて大本命と言われた沖田VS斉藤の対決は叶わなかったらしい。
@あとがき
長い・・、ですね(--;)
でもあと1話で「私のお兄ちゃんを紹介します」は完結です!!(*´∀`*)
春ちゃんの沖田君への態度がぞんざいすぎて、なんだか楽しくなってきてしまってるんですがどうしましょう。もう、このまま春ちゃんVS沖田でお話を進めていきたい気もしますが・・なんとか我慢します!だって、ねぇ、左之さんたちなんて登場すらしてませんし・・・。
スクールライフは次回タイトル「私の家族を紹介します」からはWeb拍手での連載となります。
やっとこさ他のメンバーとか家族設定をフルに活かせる!!と張り切ってます!春ちゃんを雪村家にご招待!ってノリで書きたいけれど、なんか沖田君と喧嘩になるだけで終わりそうなんで、どうしようかなぁ・・・。普通に家の中でのほのぼのな日常っていうのでもいいし・・、思案中です。春ちゃん出してもいーよーって言っていただけたら出します・・(他力本願で、申し訳ない;)
実は、先週はゼミの作業で工房にこもってて体力低下してて・・週末に倒れてしまったんですー(><)いやいや、病気がまだ完治していないことも多少は関係しているのですが、昔っから虚弱体質で、3日修羅場を乗りきると一週間寝込むっていう悪循環な身体でして・・。
いや、それはもう治らないので、地道に体力づくりして頑張ります!ってぐらいしか解決策はないのですが、そんなことが言いたかったのではなく・・・!今日はゼミのプレゼンの日で、それが終わったらキムチ鍋パーティだったのに!!参加できず!!
うわぁーん・・と泣きべそかきながらベットの中でぬくぬくしてました。
みんなで鍋パーティーって憧れてたので・・ちょっとばかしショックです・・。
誰か一緒にスキヤキパーティーとか、してくれないかなぁ・・・。鍋もいいけどすきやきも好き。お好み焼きとかもやりたい。あ、なんか・・おなか減ってきちゃいました(´v`;)
何がいいって、沖田くんが邪険にされてるところとか(笑
邪険じゃないか。
一くんにバッサリ切られるのがいいv
沖田くんに「こいつに構っても時間の無駄だ」なんて言えるの、そうそういないでしょうしね。
一くんと春ちゃんの信頼関係は固く結ばれたって感じですかね。
「・・なんか、お前、格好いいやつだな。」
と言われて慌てるとか赤くなるとかなく、流してる一くんや
「・・・そうか。期待を裏切らない努力はしよう。」
なんてサラッと言える一くんがまた素敵過ぎvv
平助くんはゲーム本編で千鶴ちゃんを女の子とわからなかったキャラで、今回も春ちゃんを女の子とわからないキャラで…あぁ、平助くんだvなんて(笑
沖田くんは…ね。「『春ちゃん』に認められなくても、僕は千鶴ちゃんのお兄ちゃんだからいいの」くらいに、軽く流してそうですけど。
きっと春ちゃんと一くんがガッチリ握手を交わしていたら、それはそれでまたいい絵になりそうですねvvv
春ちゃんを雪村家に招待して欲しいですねv沖田くんとの一戦がみてみたい(笑)…そう思うのは私だけではないはず。
体調崩されてるとか。大丈夫ですか??
残念ですが、キムチ鍋はまた次回に…(笑
「お好み焼き」「すきやき」…食べたくなってきました…。
皆で食べると美味しいですよねvvv
早く元気になって、打ち上げとかで美味しいものたくさん食べてくださいvvv
あれ、沖田君が邪険にされてて喜ばれてる!(笑
でも、私もすっごく書くの楽しんでしまいました~(*^v^*)
一君と春ちゃんはお互い千鶴のお兄ちゃん、お姉ちゃんっていう感じの位置なので妙な信頼関係が出来上がってますよね!沖田君は二人にとっての要注意人物なわけです!!
ちなみに、春ちゃんの「・・なんか、お前、格好いいやつだな。」 っていう台詞は男同士で交わすような意味合いなのですよ。一君と春ちゃんは男同士のような友情が徐々に積み上げられていく・・、予定です(笑
平助君だけはネタばれしてあげないと最後まで気づかなくて一人、蚊帳の外って感じがします(^v^;)きっと途中まで「うっわ、かっこいー」とか普通に思ってたんじゃないかなぁって。
沖田君が春ちゃんをどの位置で見ているか、は今後少しずつ出てきます。敵か味方かは・・まぁ、見ての通りですけども(^∀^)
なので!やはり春ちゃんを雪村家にご招待!って方向でお話進めたいとお思います!!ご意見くださって有難うございました!!
体調の方、お気遣いくださってありがとうございます(;;)
すぐコロコロと体調が坂から転げ落ちる勢いで変わるので、いつものことなのです。心配してくださって、本当に、嬉しいです・・(//へ//)