「今日は誰も抜けなかっただろ。」
言わば様子見として出向いたんだ。普段どおりにこのまま朝までってわけにもいかねぇ。
だからほろ酔い程度で見世を出たのに、どうにも違和感を感じる。
「左之、平助、お前らなに言ってやがる。菊池の姿がねぇだろうが。」
「・・・いつからだ?」
「俺、飲んでる最中に部屋出てから見てねぇ気がする。」
平助が見世の方を振り返る。
「おぅ、お前ら。先に屯所帰ってろ!」
「俺らもすぐ戻る。心配すんなよ、」
「え?組長!?」
数人の平隊士のぼけっとした顔を最後まで見ずにすぐさま踵を返す。
背筋に一筋のひんやりするものが流れ、妙な胸騒ぎが胸ん中いっぱいに詰まってどうにかなっちまいそうだ。
急いで見世に戻り先ほどまで俺らが騒いでいた部屋へと駆け込もうと正面口に入ったその時、
ぼんやりと歩く男とぶつかりそうになる。
「・・・っ、」
「っと、悪ぃ。・・・って、菊池!?」
「え?あ、原田組長・・。」
面をあげたその男は俺の顔を確認するなり、驚いたように目を丸くさせた。
しかし、その顔はどうみたってまずいことをしでかして顔色を悪くしたってのじゃなく、女に振られて落ち込んでるっつー顔で、思わず勢いがついていた身体に急停止をかける。
「お前、千鶴と一緒じゃなかったのか!?」
「え、雪村君・・ですか?」
「左之!」
「っと、悪ぃ、今のは忘れろ。さっきの芸子の子、見てねぇか?」
「・・あの、新人の子、ですか?」
「あぁ。」
そこで、菊池の奴は微かに視線を下げて唇を噛んだ。
しかし、すぐに面を上げて眉をへにゃりと下げてみせる。
「実は、その、やっぱりあの子のことがどうしても気になってしまって・・せめてもう少しだけ話だけでも、と誘ったんです。あ、も、もちろん・・断られたらすぐに引くつもりでした!で、やはり案の定断られてしまって・・、」
苦笑を漏らしつつ、菊池は大通りを見遣る。
「そんなとき、沖田組長と出くわしたんです。」
「総司と!?」
平助は大きな声で反応を返すと菊池は大きく頷いた。
「はい。彼女、顔色が悪かったみたいで・・そのまま沖田組長が散歩にと連れ出してしまって・・、」
新八と平助は総司の名前が出てくるや否や顔色を変えた。
自分としては、少し寂しかったのですが沖田組長とあらば譲るしかないですよね、なんて奴は落ち込んだ風を隠すように笑みを作った。まだ年若ぇ隊士だし、いつもなら慰めの言葉の一つでも掛けてやりてぇところだが、生憎とあんまり余裕っつーもんはないらしい。
「つか!総司があいつ連れ出したってやばくねぇ!?」
「だな!よし、行くぞ平助!左之!!」
「おぅよ!」
大事に騒ぎ立てるなと、土方さんに散々注意を受けたことも忘れて二人は慌てた様子で大通りに向かって走り出す。それをポカンと阿呆面で見送っていた菊池の肩を軽く叩く。
「ま、その新人芸子と総司のことは俺たちが様子見てくっからよ、お前は屯所に戻れ。他の奴らも先行ってっから。」
「あ、はい!わかりました!!」
普段どおりの元気のいい声を背に受けて、俺も二人の後を追う。
しかし、なんとなく・・、そうだな・・勘ってやつかもしんねぇが、一刻も早く平助たちに追いつこうと走り出したが、どうにも後ろが気になっちまった。振り返ったところで、奴が屯所に帰ろうと背を見せているだろうし、何もないはずなのに。
「・・・・・・、」
「っ・・・。」
軽く、後ろを振り返る。
しかし、俺の目に映ったのは屯所に戻るために向けられた背ではなく、俺より遙か先の大通りを親の仇を見るかのように睨みつける菊池の姿。
奴は俺の視線に気づいてハッと息を飲んだ後、すぐにこちらに向かって深く一礼を寄越して背を向けた。
「・・・・・・。」
今の様子は、明らかに尋常じゃぁなかった。
が、いくら思案したところで今の状況が変わるわけでもねぇ、まずは千鶴が先だ、と俺は頭を振って新八らの背を追いかける。
「でも、まさか沖田さんが来てくださるだなんて思ってませんでした。」
「え、なんで?」
「沖田さんは今日は夜の巡察当番でしたから。」
「あぁ、そっか。うん、本当ならそうだったんだけどさ、松原さんとこの隊に代わってもらったんだ。」
夜道を並んで歩くと、少しばかり冷たい風が頬を撫でていく。
原田さんの隊の菊池さんに散歩にと誘われたときは、正直どうしようと困り果ててしまったけれど丁度様子を見に見世に出向いてくれた沖田さんと鉢合わせして助け舟を出してもらった。
「松原さんと?・・わ、わたし、大丈夫ですよ?失敗しないように頑張ります!」
「あはは、別に君が失態を犯さないか見張りに来たわけじゃないよ。普通に心配してあげただけ。」
「え・・・、あ、ありがとうございます。」
なんだかんだ、この囮捜査の発案者は沖田さんではあるけれど、それでも私が失態を犯せば結果的に新選組、はては近藤さんに迷惑がかかる。それを懸念して様子を見に来てくれたのかと思ったけれど、単純に心配して見に来てくれた、と聞いて途端に肩の力が抜けてしまう。
「うん、でもやっぱり、君に囮をやってもらってよかったよ。」
「え?」
「すごく、似合ってるよ。」
含み笑いを口元に作り、彼はそっと私に触れた。
@あとがき
き、昨日は更新できず申し訳ありません・・(ーー;)
夜、帰宅してすぐに続きを執筆してたのですが(スクールライフ)・・、完成間際で、ちょっと・・、電源がブチって・・。それで、データが吹っ飛んでしまって・・・・・。はい、なので、なんていうか、涙がちょっと出ちゃいそうになったっていいましょうか・・・(;∀;)
と、いうわけで気分転換も含めまして、久々に囮捜査の更新です!!!
沖田君が盛り始めたよ!登場したばっかでもうムラムラしちゃってるYO!
でも、次の更新はスクールライフなので、お嬢様方、沖田君と一緒にムラムラハラハラで暫しお待ちくださいませー(*^∀^*)
あ、拍手のページを少しだけ変更してきました!
が、新作ではありませんので悪しからず。ブログで既に公開中の「親友」「お兄ちゃん」編のみの更新です。でも、今後のスクールライフの更新は拍手のみですので、次回タイトルから閲覧はそちらでお願いいたします!!更新しましたら、あとがきの時にお知らせしますので~
あと、拍手にて・・体調崩して鍋パーティー行けなかったことを心配して慰めてくださった方々、ありがとうございますー。お返事は改めてちゃんとしますが、先に一言お礼を申し上げたくて・・(><)
薄桜鬼ファン仲間の方と、いつかわいわいコタツで鍋つついてみたいですねぇ~(*^v^*)でも!自分のご飯は自分で厳守せねばなりませぬよ!!ちなみに・・私はどちらかというと奪う側(新八側)です!!!
もちろん嬉しい意味でvv
何か、想像していたものと違う展開になりそうなんですが…。もちろんこれも先が楽しみでならないという意味でですよーーvv
菊池くん…何奴ですかっっ?!
千鶴ちゃんに惚れちゃったパターンではないですよね?親の仇って…確かに尋常ではないですからね。
そして沖田くんの登場。
巡察を交代してまで千鶴ちゃんの元に来るというのは…何か感付いて…?とか思ったりもしたんですけど、本当に千鶴ちゃんが心配できただけなのか…。
沖田くんて読めないキャラだけに、今のはどういう意味で言ったの??とか心の中を読みたいんですけど読めない…。
………今回も考えすぎ??(苦笑
あと、前回のコメントで言葉が足りなかったなーと…反省。
「・・なんか、お前、格好いいやつだな。」
で、赤くなったり―とか書いたんですけど、もちろん男同士の友情というか、そういう意味合いだとは理解してたんですけど、書き方が中途半端ですいませんでしたっ
えと、普通女の子から言われると照れる言葉じゃないですか。
「・・なんか、お前、格好いいやつだな。」 なんて。まぁ、女の子が『お前』というかは別として…。でも春ちゃんが女の子だと知っていても、一くんは反応しないんだなーなんて思ったりしたんです。ちょっと目を見開く程度かな、とか。
それも「何を言い出すんだ」くらいの小さな驚きで。
一くんも春ちゃんのことを女の子なんだけど、千鶴ちゃんを守れる頼れる存在と認識したんだなーって。
友情、いいですねvそれに、この二人は並んでると絵になりそうな…vvv
案外ファンとかできそうな気もしますが(笑
スクールライフ、残念でしたね…(涙
書いてる最中に原稿が飛ぶって…悲しくなりますよね。
もう、何もする気が起きなくなります、私は。
こういうコメント書いてる最中もよく飛んでしまうので、長い文章の後消えてしまうと布団に潜りこみます…ショックで(笑
またお邪魔しますっvvv
はい!久々に囮捜査の更新です!!
やっぱり、原稿が飛んじゃうってショックですよねー(;口;)今回は一応、囮捜査の方で保存してある分があったのでなんとか事なきを得ましたが・・、結構落ち込んでたりします・・・。ちなみに、このコメントも返信前に一度、飛んでしまって書き直したお返事だったりします・・(´v`;)ついていない日はとことん運が急降下します・・・はぁ、
っと、気を取り直しまして!!
囮捜査のお話では、ど、どんな展開を想像なさってたのですか!?(*´∀`*)気になりますー!!!
菊池君が再び登場するのか!?
沖田君がどんな行動をとるのか!?
などなど、今後の展開、いい意味で意表を突ける様にがんばります!
あ、ちなみにですね・・沖田君が巡察を交代してまで千鶴ちゃんに会いに来たのは・・・た、多分、自分が仕事しているのに左之さんたちだけ着飾った千鶴ちゃんに会いに行ってる、っていうのが気に入らなかった・・からじゃないかなぁ、なんて。・・・でも、ほんとのところはどうなんでしょう。私も、未だに彼のキャラがつかみきれていません。
沖田君が一番、登場させやすく、でも難しいキャラですよねー・・・。なんていうか、どれが本心か私にも分からんのです・・(ーー;)
あ、一君の台詞や態度についてですが、こちらの解釈不足で面倒をかけてしまったみたいで・・申し訳ないです(;□;)
えーっと、笑さんのおっしゃるとおり、一君はたとえ女の子でも春ちゃんの言葉にはあんまり赤くなるなどの反応はしてくれません。ちょっと、理由がいろいろあったりするんですが・・、ひとつは春ちゃんが男らしすぎるっていうか男同士感覚があるっていうのもありますが・・。
実は、個人的なことであれなんですが、私ってば結構ドリーマーな方なので、本館のサイトでは夢小説が専門なんです。なので、ついついコッチでもオリジナルキャラだしたら恋愛させたくなっちゃって・・、千鶴ちゃんがヒロインなのだから!と春ちゃんとキャラをあんまり男、女の意識させちゃダメかなぁって・・。れ、恋愛させちゃ、まずいですもんね。やっぱり・・・。
ってわけで、一君や他のキャラも春ちゃんの認識はすがすがしいほど男らしい女の子!です。はい。宝塚な感じで女の子にモテます!!(`v´)
あ、遅くなってしまったのですがDMお送りしました!!
一応、土日は会場にいますよ!!土曜日は午後から。日曜日は朝からおりますので!!(^v^)でも、体調など万全ではないのですから無理なさらなくて大丈夫ですからね!!
以前千尋様に頂きましたリクエスト小説が出来ましたのでそのご報告をさせて頂きたいと思いましてコメントにお邪魔させてもらってます。
リク内容が『いけ★ぱら先輩ズとの絡み』ということでしたので永倉先輩と原田先輩との絡み話しにっております。
ですが・・・正直リクに沿えているか心配で仕方ありません!!!もしも思ってたのと全然違うやんけ!ということでしたら再度チャンスを頂ければ書き直します!!本当、文才ない奴で申し訳ないです・・・。
一度ご確認下さい!
本当に、遅くなりしかも駄文で申し訳ありません!
ではでは、長々と失礼致しました・・・
囮捜査、ナイスなネタですね!!
瀬名には思い付かないです・・・柔軟な発想と展開力が欲しいです・・
風邪をひかないようにお気を付け下さい!
そしてサイト運営応援しております!!
瀬名63
お久しぶりです!!(*^v^*)
っと、無事冷静にご挨拶することができましたが・・・、ちょ、嬉しさで興奮状態なのですが!どうしましょう!!
まさか、こんなに早く『いけ★ぱら』先輩ズとの絡みが拝見できるなんて!!さ、さっそくお伺いさせていただきます!!
か、書き直しだなんてとんでもないです!むしろ、なんてお礼を申し上げたらよいのか(//∀//)
えっと、えと、頂いて帰ってしまってもいいんですよねvv
うわぁうわぁ、今からドキドキです(><)
体調の件、お気遣い有難うございます!!
瀬名さんもご自愛くださいませ。