【混浴騒動番外編は、本編の混浴騒動の時、風呂場に駆けつけてきたのが左之、平助、総司の3人だったとして・・という、完全に「もしも・・」を前提に書かれています。あくまで、混浴騒動のお話の本編は後日談に続くのが正式なお話です。それを踏まえた上でお楽しみいただければ、と思います。】
「・・お前ら、何やってんだ!?」
思わず体を硬直させてしまった。血生臭ぇ新八の羽織りを引っ付かんで怒鳴り込んだ風呂場に、居たら不自然だろって奴がいて、なんのためにここに来たかなんて頭から吹き飛んだ。
「左、左之!誤解すんなよ!!これは」
新八が顔を青くしながら弁明の言葉を吐く前に、俺の怒鳴り声を聞きつけた平助と総司が風呂場に顔を出した。
「左之さん、何騒いでんだよー・・って、えぇ!?」
「うわぁ、もしかして修羅場とか、そんな場面?」
「ば、ちっげーよ!取りあえず落ち着け!」
「や、新八っつぁんが落ち着けって!」
思わず、といった具合に新八へツッコミを入れた平助だったが、奥のある一点を視界に入れてすぐさま顔を逸らした。耳まで真っ赤になったその顔が意味することに気づいて眉をひそめちまう。
ガキだな、って苦笑するところだっつうのに、あいつを守るように傍に居る斎藤の姿に、妙に心ん中がざわついちまう。
「で、何があった?」
チラリと視界に入れた千鶴は斎藤の肩に額を当てて俯いていた。すぐさま新八へと鋭いまなざしを向ける。
「俺はただ巡察で血塗れた身体を洗おうと風呂に入ったんだよ。そしたら斎藤のやつが先にはいってて・・」
「よく見たら千鶴ちゃんもいたって、そういうこと?新八さん。」
新八の言葉を遮ったのは総司で、奴はゆっくりと俺の横をすり抜けて千鶴や斎藤が身を沈める湯船に近付いた。新八は勢いよく頭を上下に振った。
「で、千鶴ちゃん、斎藤くん。真相はどうなの?」
「・・その話は後だ。その前にこいつを湯から出さねば、そろそろ限界だろう。」
この状況で悲鳴ひとつあげなかったのは湯あたりして意識が朦朧としていたためなんだろう。千鶴のぽけーっとした顔みりゃそうとしか思えねぇしよ。
「あれ、千鶴ちゃん逆上せちゃったんだ?」
「あぁ。」
「無理させちゃだめだよ、斎藤くん。」
「・・ちょ、総司!何言ってんだよ!?」
「・・・・何って、ここで言っていいの?」
総司がニヤっと口端を吊り上げて意地の悪ぃ笑み浮かべるもんだから、平助が必要以上に慌てた声を出す。
「っ・・、は、一君、嘘、だよな?」
「平助、総司の言うことを真に受けるな。それよりも・・・」
「雪村、意識はあるか?」
「・・さ、斎藤さん。」
掠れた声で、それでもなんとか吐息を漏らしながら千鶴は斉藤の名を呼んだ。
湯から出ているむき出しの首筋から肩はほんのりと赤く染まっている。
「へぇ、、」
「・・・お前たち、早く出ろ。いい加減にこいつを湯から出さねば倒れかねん。」
「ん・・、・・。」
千鶴は浅い呼吸を何度も繰り返して、高熱出したみたいに上気した顔を晒す。
「っ・・・・。」
「平助?」
「は、一君さ・・・・、千鶴と、一緒に風呂入ってたの?」
「だから、それは誤解だ。出たら説明すると言っているだろう。」
平助が何度も千鶴を見遣って視線を泳がせて、でも、また視線は千鶴に戻る。
何かを我慢して唇を噛み締めて、しかし我慢しきれずに泣き出しちまいそうな顔をする。
「っ・・オレは!・・・・オレ、、オレも千鶴と一緒に風呂入りたい・・。」
耳から首筋までを真っ赤に染め上げて、それでも平助は唇を噛み締めながら斎藤を見据える。その、どこか切羽詰まったような様子に斎藤が瞳を細める。
「平助、お前、意味が分かっているのか?」
「・・っ、分かってるよ!!ただ、総司とか左之さんはいっつも千鶴にちょっかい出してさ、ずりーし。」
「平助、それと風呂では意味が違っ、「分かってる!」
普段から元気の言い平助だが、今の平助の叫ぶ大声はまったく真逆のもんだ。大人になりきれてない子供が、だけど必死に足掻いて欲しいもん手探りしてる。
「あんまさ、ガキ扱いしないでよ、一君。どうせ、千鶴が風呂入ってんの気づかないで入っちまってさ、で、出ようとしたら新八っつぁんと鉢合わせたとかそんなんだろ。」
「・・・・・・・・・。」
斉藤が押し黙る。沈黙を肯定だと受け止めた平助は言葉を続ける。
「そういうのはどーでもいいんだ。ただ、千鶴がそうやって縋って背にしがみつく相手がオレであって欲しい・・・。」
「平助・・、」
斎藤が瞳を微かに見開いて平助を凝視する。
真意を探ろうとしてんのか、ただ驚きすぎちまってんのか、定かではないが。
「入っちゃえば?」
「え・・?」
急に割り込んだ声に平助は面をあげた。
「僕はいつも自分がそうしたいから千鶴ちゃんをからかって遊んでるわけだし、平助君だけダメなんて決まりはないからね。」
「ちょ、お前、何言ってんのかわかってんのか!?平助、おめぇも頭冷やせ!!」
慌てたように新八が声を荒げるが、平助の視線は総司と、そして俺に向いていて・・、
「左之さん、オレだって千鶴のことマジなんだ。総司が何考えて今の科白吐いたのか分かんねぇよ。でも、きっかけにはなったって、思う。」
「平助。」
そいつを、俺に言うってのがどういう意味かわからねぇほど鈍くはない。
あいつは、千鶴を手に入れる段階で俺が特にやっかいな相手だってわかってやがる。ガキのくせに、普段はそっち方面はとんと鈍い癖して・・・、千鶴のことになると必死に自分より年上な人間に噛み付いてきやがる。
まっすぐで必死な平助を、応援してやりたくもなっちまうよな、こりゃぁよ。と、思わず苦笑してしまって。でも、視界の端に千鶴の姿を捉えて、今度は自分自身に苦笑を漏らす。
まぁ、そりゃ、無理だろうけどよ。
平助は、もう何も言うことはないというように、まっすぐに何かを決意したような面して、斎藤と千鶴がいる湯船まで向かおうと背を見せる。
「・・・一君、少しずれてよ。」
「平助、お前、」
@あとがき
まさかの、混浴騒動番外編をお送りしております!!
実は、小説一覧には更新したお話に加えて、今後執筆予定のお話のあらすじや登場人物などを紹介しているのですが・・・【混浴騒動 IF 番外編】を連載はじめてほしい!という声がちらほら聞こえてきていたわけでして・・・。
もしも、っていう設定が大前提ですので普段とは違うキャラに攻めてもらおう!ってのがテーマだったりします。なので、割と左之、総司、斉藤が千鶴に対して思いが強いっていう漢字のお話しが多い中で・・・、今回の主役は平助君です!!あ、あと左之さん(笑)
えーっと、ネタメモ的なことなのですが・・うちのサイトで一番千鶴に対して想いが強いのは恋愛面の想いも含め、もちろん左之さんです。でも、次に来るのが実は平助君だったりします。彼は、淡い高校生の恋愛っていう本当に純粋に千鶴が大好きで大好きでたまらない!!っていう・・ある意味で本気で恋してる男の子なのです(*^v^*)その後に歪んだ感情を持ってる沖田君と、一歩前に出れずに居る一君、で、新八っつぁんは女の子として意識しているくせに無意識に妹だと思い込もうと自制してる人(苦笑)
とりあえず、次回の更新はモーニングコールか囮捜査に戻ります!!こっちの二つも大詰めなとこなので気合入れて頑張ります!!混浴騒動番外編は連載2つを完結させましたら続きを執筆しますので、こんな展開になったら嬉しい!!など・・、さりげなーくお聞かせいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします(´v`)
今回も平助くん真っ直ぐだ。
千鶴が今どういう状況かとか、新八さんは全く悪くないとか関係ないんですね。もう、一くんしか目に入ってない…。
千尋さんが書いてるように、本当に純粋に千鶴ちゃんが好きだから…なんでしょうね。
最後の「…一君、少しずれてよ」は、平助くんの本気を見た!!
ここはやはり、左之さんに何とかしてもらいたい気もするけど、沖田くんが横から攫っていく展開も…といいながら、今回は一くんに………美味しい展開があるといいけれど……千鶴ちゃんは、きっと一くんの背中が好きなんだよっっ!!
うん、きっとそうだ(笑
モーニングコールでだって背中に寄り添ってたしっっ寝ぼけていたとしてもっっ
…この続きは。連載作品終了後なんですよね…。そうか…今の囮捜査もモーニングコールも終わりが近いんですね………グスッ
次回の更新作品楽しみにしてますっ
はい、平助君はいつだって真剣勝負な男です!!(笑
今回のお話は、完全に平助君をメインに進めていくつもりなので、沖田君には少しだけ我慢してもらっちゃいます。彼はね、他にもいろいろと出番があるはずなのでね・・!!
私の中で平助君は可愛くてピュアな一面もあり、そして、大人になろうと必死でもちろん男の子だし、ちょっと思い切って迫ってみたりもしたい健全男子です(>v<)なので、温かく見守ってあげてくださいね。
でも、笑さんがおっしゃるように沖田君が黙ってるわけないので横から攫ってくかもしれないですし、左之さんも黙ってないだろうし・・いろいろと前途多難な連載になりそうです・・。
それにしても・・確かに、千鶴ちゃん・・一君の背中に引っ付いてることが多いですね(^ー^;)なんだろう・・実は意図してなかったんですが・・。ま、いっか。確かに安心できそうですよね。私だったら左之さんのおっきな背中に引っ付きたいですー(//v//)あ、でも、平助君と新八っつぁんは背中合わせってのもいいなーって思ったり//
終わりを惜しんでもらえてる連載があるって・・嬉しいです(;へ;)ありがとうございます!!ただ、囮捜査は少なくとも10話以上までは続くと思いますので、囮捜査と混浴騒動の交互に更新って形になっていくかなーって思ってます。どっちも、なんとなく、密着度とか高いですよね・・・。う、うーん・・明るい感じのお話、連載しようかしら・・。