「総司、それ以上は、俺が許さん。」
静かに、どこまでも低く穏やかな声色で告げられた一言に、沖田さんは手を止める。
「・・・一君、お願いだからさ、今回は見てみぬふりをしてくれない?」
浅い呼吸を繰り返す。
そうして、乱れた呼吸を整え、顔を上げれば通りからの光を遮るように一つの影が立っていた。
「さ、いとうさん・・。」
「総司、」
彼は沖田さんを諌めるかのように、声色を固くして名を呼ぶ。
「斉藤君、今まで止めずに傍観者を決め込んでいた君が、どうして今になって間に入ってこようとするの?」
「・・・・これ以上は見過ごせぬと判断したからだ。」
沖田さんの鋭く細められた視線の先を追って、斉藤さんの方へ顔を向ければ意外にも、彼の表情は荒立っていない。穏やかに見えてしまったのは一瞬で、やはりどこか鋭く瞳を細めて沖田さんを見遣ってはいたけれど、声色に反して斉藤さんは落ち着き、それどころか、少し寂しそうでもあった。
「総司、お前の心情がまったく読めぬわけではないが・・、今は時期ではないだろう。」
「・・・斉藤君に何が分かるって言うのかな。」
棘を含んだ沖田さんの言葉にも、斉藤さんはどこまでも冷静に返す。
「そうだな、俺はお前ではない。すべてを理解することなど到底出来ぬことだ。だが、今のお前の行動が間違っていると言うことは・・お前自身も理解しているのだろう?」
「・・・・・・。」
沖田さんは僅かに瞳を細める。
「雪村の言葉、お前にどう届いたか・・一番理解しているのは総司、お前自身では、ないのか?」
一呼吸、二呼吸おいて、沖田さんはゆっくりと私から離れ拘束を解いた。
腕をきつく縛っていたものが解けると、強張っていた身体の力が抜けて地面に崩れ落ちた。
「・・雪村、大丈夫か?」
「は・・い、」
数歩離れた沖田さんと入れ替わるように斉藤さんが私の元へと近づき、乱れた私の着物の上より自分の羽織を被せてくれる。その暖かさに、斉藤さんのぬくもりを感じて、心の中がほんのり温まる。
「ねぇ・・斉藤君。」
「・・なんだ。」
私を気遣って視線を合わせるためにしゃがみこんでくれた斉藤さんの背に向けて、沖田さんが酷く不機嫌そうな瞳を向ける。それは、どこか不機嫌だけれども、寂しそうな子供のようなそれで、
自分が今まで何をされていたか分かっているはずなのに手を伸ばしてしまいたくなる。
「僕に説教するのはいいけどさ、斉藤君は何にも思わないの?」
「・・なんのことだ?」
どこか拗ねたような口調のまま、沖田さんは再び私の元へ寄りしゃがみこむ。
そうして私の肩にかかる斉藤さんの羽織を無言で睨みつける。
「千鶴ちゃんの、この恰好を見て、さ・・、ムラムラっとかしない?」
クスクスと口元に笑みを浮かべて斉藤さんを挑発するように言うけれど、彼の表情は崩れない。
「いい加減にしろ。」
「・・別にふざけてるわけじゃないんだけど。」
それに、と彼は続ける。
「斉藤君だって、乱れた彼女の恰好を見て、本当は思うところあるんでしょ?」
「・・・総司、」
斉藤さんは、何度目かの諌めるような低い声色で沖田さんの名を呼んだ。
しかし、名を呼ばれた本人は笑みをただ深くするだけ。
「あんまり我慢するのもよくないと思うんだよね。」
そう告げるが否や、彼は先ほどから不機嫌そうに見つめていた斉藤さんの羽織を私の肩から奪い取る。
「あ・・・、」
思わず小さく漏れた声に、彼が反応する。
「千鶴ちゃん・・・、そんなに斉藤君の羽織が好き?」
「え・・、それは・・、」
どう答えたら彼が納得するのか。思わず瞳を震わせて助けを求めるように斉藤さんを仰ぎ見た。
しかし、どこか切なそうに唇を噛み締める姿に、ぎゅっと胸が締め付けられる。
「さいとう、さん?」
「・・・・・。」
確かな返事をもらえると思って、彼の名を呼んだというのに、彼は口を噤んだまま、
でも、それでも沖田さんの挑発に乗るわけでもなく、ただ微かに俯く。
「・・ま、斉藤君がそう簡単に乗ってくるとは思ってないけどね。」
そう軽い口調で言って、沖田さんは通りを見遣った。
「騒がしくなってきたね。そろそろ左之さんたちが来る頃かな。」
「え・・?」
@あとがき
こんばんわ!!
絵チャに参加しつつお話書いていたので、すっかり日付が変わり、絵チャも中途半端に退出せねばならなくなり、落ち込み気味です・・(;へ;)2つのこと同時に出来ないなら1つ1つやればいいのに、不器用なくせにいろいろ手を出したがるこの性格!どうにかして!!と、思わず叫んでしまいたくなります・・・。
囮捜査もようやく終わりが見えて参りました!!
最後は事件ものらしく緊張感あるシーンが書けたらな!って思いますが・・、どうなることやら・・。が、がんばります!!一君の葛藤は・・個人的に書いていて楽しいです(//v//)一君かーわいいなーって思いながら書いてるので(笑)
あ、今年の冬コミは久々に一般参加なんです!!
毎年、ラメントか咎狗スペースにて売り子の手伝いしてるので、今年はいろいろ回れそうで楽しみです!!
とりあえず毎年恒例の狗猫行って、薄桜鬼探して、バサラって順かなぁ・・。企業は行きたいところいくつかあるので、体力がもつか・・どうか・・(´v`;) みなさま!がんばりましょうね!!
一くんの羽織を羽織った千鶴ちゃんの姿に、沖田くんは感情を抑えず羽織を奪い取っちゃいましたね…。
一くんの返事がないことに、千鶴ちゃんのかなり不安に思ってるみたいなんで、左之さーーーん。早く来てくださぁぁぁい(笑
今の二人はなんか痛々しいというか、ちょっと黙っててよー、な沖田くんと、何か喋れーーー、な一くんなんで…空気変わってくれるといいなぁ…って。
一触即発的な感じも良いんですけど、今の彼らはちょっと落ち着いてもらって…そして千鶴ちゃんの着崩れた着物をちゃんとしてあげて…とか思ったり。
あ。住所ありがとうございましたv
凛々しい左之さんですかっ???
描き直しじゃないですか(笑
えぇい、このまま送ってしまえ、とかふざけたことは言いませんよ(笑
ただ、あまり…絶対期待しないでください。
絵も元旦に到着するかどうというのも…。
囮捜査は実は、結構大詰めなシーンにまできちゃってたりするんですが、そんなシーンで放置プレイしちゃって・・ほんと、申し訳ないです。
でもでも、沖田君にムラムラしちゃってたり(?)、一君にきゅんきゅん(?)しちゃってる笑さんの気持ちを左之さんに引き戻すべく!!彼の出番をドーンと増やしてありますので!!是非とも続き、待っててくださいませネ!
年賀状、ありがとうございました!!
そんな、お正月早々、貧血起こしそうになるほど格好いい殿方が描かれた年賀状送っちゃダメですよ!もう、どうしてくれるんですか!!幸せいっぱいですよ(*^∀^*)左之さんからお年玉もらうために、私、なんでもしますよ!!え?羅刹隊に入れ?もう、ドーンとこい!な勢いです!!
で、お年玉ってどんなものいただけるのかしら。
左之さんと一日デート券とか、そんなんがいいなぁー・・・なんて、正月から頭が沸いてる、と妹にキツイ一言を頂いちゃってます。と、とにかく、本当に有難うございました!!大事に大事にしますvv
そして、今年も交換日記vよろしくお願いいたします!!