【囮捜査官！雪村千鶴－１４】

「そんなにさぁ、怖がらなくてもいいよ。ねぇ、こっちに来てよ。」


物腰を幾分か落ち着かせたような、そんな彼の様子に、それでもホッとできるわけもなく、
私は、熱に浮かされたようにどこか視点の合わない彼から逃げるようになんとか間を取ろうと必死に身体を動かす。



「なぁ、逃げないでくれよ、き、君のことはさ・・斬りたくないんだ。」

「あなたが、最近起きている切り裂き事件の犯人・・なんですか・・？」



私の言葉に、彼は目を細める。


「お、俺のせいじゃないんだよ。別に、殺すつもりなんてなかったんだ。でも、あいつら、俺の誘いを断りやがって・・！！」


唇を震わせて、怒りなのか悲しみなのか分からないほど、彼は取り乱している。


「で、でも、そんな理由で殺してしまうなんて「うるさい！！す、素直に、言うことを聞いてくれれば、俺だって、この刀を抜くつもりなんてなかったんだ！！！」


「お前らは、裏では簡単に身体を売っちまってるんだろ！今更純情ぶるなよ！！」



酷い耳鳴りがした。
彼の叫びは、どこか、私に向けられたものじゃなくて遠くに向かって叫んでいるような気がして、




「お、お前も・・、俺を拒絶するのか・・・？」

ふと、小さく呟かれた声に顔を上げる。

視線が交わって、ゆらりと抜かれた刀を目で追うことしか出来なくて、思わず、硬く、瞳を閉じてしまった。




「・・・・！！！！」



そのとき、キィン、と、刀が弾かれる音が響いて、



「・・大丈夫か？」

「・・さ、いとう・・さん・・・。」


聞き慣れた声は私を安心させるには十分すぎた。
硬く閉じた目をそっと開くと、高く振り上げられた刀から私を守るように斉藤さんが間に入り男の腹へと一太刀を入れていた。


「ぐ・・・・っ、」


私を振り返ることなく、自らの背の後ろへと下げ、彼は男にもう一太刀入れるべく柄を握る。


「待て、斉藤。」

「・・左之か、」


しかし、それは駆けつけた原田さんによって止められる。
彼は私を一瞥して、ハッと息を飲んだ後、眉をひそめた。

「へぇ、やっぱり彼が一連の事件の下手人だったってわけか。」


原田さんの後ろからのんびりとした足取りで沖田さんが口を挟む。



「千鶴、大丈夫か！？」

「平助、俺が担いでいくからおめぇは屯所の医者起こして来い！」

「わ、わかった！」


慌てたように駆け寄ってきた平助君と永倉さんは、すぐさま私をここから連れ出そうと動く。
でも、私はまだ、ここから離れるわけにはいかなかった。


「待って、ください・・・、永倉さん・・、」


私を担ぎ上げようとしていた彼の腕を、掴む。
血に濡れたその手を見て、酷く辛そうな目をする彼に、告げる。


「私は、まだ、帰るわけには・・いきません。」

「なに言ってやがんだ！！あんま深い傷じゃねぇとは言っても腹の出血は止まりにくい、死にてぇのか！」


心配してくれているからこそ、彼は怒鳴りつけるように私の意志を遮ろうとする。
でも、それでも、



「私は、最後までここに居なくちゃいけない、そんな気が・・するんです。」

「千鶴ちゃん・・、」

＠あとがき

今日は２話更新です！！
だって、１３話が、千鶴ちゃんと犯人しか出演しない！！とか、寂しすぎるので・・はい、急いで続きを書き上げました（ーｖー；）

あと２話で終える！とか、言っていたのですが・・も、もう少し・・かかっちゃうかもしれないです。
それにしても、なんていうか・・、全然甘くないんですけど！！どうしましょう！！
恒例となりつつある後日談では、みんなのお見舞い合戦ってぐらい、甘くなるようにしたいです（＞＜）糖分が足りなすぎるー



そういえば、ずっと大学の工房に篭る日々を送っていたので、久しくお布団干してなーい！と、ウズウズしていて、ようやく一段落したのでお布団干してふわふわ～っと思っていたのに、雨です！！昨日も、今日も、雨なんです！！！うー・・・雨って嫌いではないですが、やっぱり洗濯物がふわふわになってくれないし・・・・（；へ；）早く晴れて欲しいです。。