「待って、ください・・・、永倉さん・・、」
私を担ぎ上げようとしていた彼の腕を、掴む。
血に濡れたその手を見て、酷く辛そうな目をする彼に、告げる。
「私は、まだ、帰るわけには・・いきません。」
「なに言ってやがんだ!!あんま深い傷じゃねぇとは言っても腹の出血は止まりにくい、死にてぇのか!」
心配してくれているからこそ、彼は怒鳴りつけるように私の意志を遮ろうとする。
でも、それでも、
「私は、最後までここに居なくちゃいけない、そんな気が・・するんです。」
「千鶴ちゃん・・、」
「何ができるの?君に、」
「え・・?」
ふいに、頭上からかかった声。
「さっき、そう聞いたら君は、自分に出来ることを見つけたいって言ったよね。」
その声は、酷く優しすぎて、振り返るのを躊躇ってしまう。
でも、肩の向きを少し変えて、視線をゆっくり声のした方に向ければ、
「ここに居て、最後まで見届けたいって言うのなら、居ればいいんじゃない?」
「総司、お前何言って、」
「確かに、傷が深くなくても出血量を考えればすぐに医者に見せるべきだと思うけど、彼女がここに居たいっていってるんだし。」
「そういう問題じゃねーだろうが!」
普段通りの、どこか飄々とした沖田さんの態度に永倉さんはムキになって突っ返してはいるけれど、
私は、沖田さんの言葉は、彼なりの優しさのように思えて、自然と、彼に答えるように頷き返していた。
「永倉さん、私は大丈夫です。だから、最後まで居させてください。」
「・・・・たく、仕方ねぇ!!本気でヤバイって思ったら問答無用で抱えて連れ帰るからな!!」
「・・・はい。」
微笑んで、しっかりと頷けば、永倉さんは疲れたようにため息を吐き出す。
そうして彼は私の背を支えるために地に伏していた私の身体の態勢を整えてくれた。
「・・・っ、」
動いたために、傷口から生暖かい血があふれ出てくるのを感じて、でも必死に平気な顔をして繕った。
何も、出来ないのかもしれない。
私には、何一つ、出来ることなんてないのかもしれない。
ならば、せめて見届けさせて欲しかった。
すべてを受け止める覚悟は出来ているから、せめて共犯者で居させて欲しかったのかもしれない。
「・・・・・・。」
原田さんの、どこか怒りを含んだようなため息が聞こえて、私は顔を上げた。
私たちのやり取りを見ていたのだろう。彼は、ここを離れる様子のない私を見遣って心配そうな、どこか呆れたような、そんな表情を向ける。それでも、苦笑いを浮かべながら私の頭を少し乱暴に撫でた。
「たく、ほんと、強情だよな・・。」
「・・すみません。」
「すぐ、終わる。・・待ってろ。」
「・・・はい。」
どこか、重たい言葉のようだった。
彼は、自分の組の部下でもある男の前に立つ。
「左之、」
「分かってるって。」
斉藤さんが小さく原田さんの名を呼ぶ。
そうして、迷いのない返事を受けて自らの刀を鞘に戻す。
「さぁて、・・・大体のことは状況から判断できるが・・・、お前の口から直接聞きたい・・、何があった、菊池。」
「・・・原田、組長・・。」
「一人目の被害者が出た夜、お前は俺や新八と一緒に見世について来たよな。そうして一刻ほど座敷から離れた。」
「・・・・・・。」
「遺体が発見されて、それから被害者が増える中、お前に一度だけ聞いたことがあったよな。あの夜、座敷から離れ、どこに行っていたんだ、ってよ。」
「・・・はい。」
「俺の目を見て、まっすぐ、あの事件とは関わりはないって言ったお前を、俺は信じた。」
「・・・・組長、」
「菊池、もう一度聞く。・・・何があった。」
原田さんの背は、大きく、そして、どこか寂しそうでもあった。
けれど、彼は右手に持つ槍をギリギリと握り締め、必死に冷静を保とうとしている。
怒りなのか、悲しみなのか分からない。
でも、組長として、彼はあの槍を振り上げる。
そのことが酷く悲しくて、切なかった。
@あとがき
な、長い・・・。終わらない・・・。そして、左之と千鶴ちゃんが長年連れ添った夫婦のようだ。
真面目で真剣なお話は、なかなか執筆速度が上がらないですね・・。
でも、やっぱりシリアスは書くのは楽しいです。自分も真剣な気持ちになれるって言うのかな・・。
あ、遅くなりましたが、アンケートにご協力くださってありがとうございます!!
昨日、ちょろっと覗いて見たら平助君が意外にも頑張ってて嬉しいやらビックリやらです(*^◇^*)
一応、1位のキャラには逆ハーではなくて、ちゃんとお相手としてお話書かせて頂きますので!!
期間はまだまだありますので、まだの方、ポチっとお願いいたします!
家族がいない空間て、何故ですかね…掃除したくなります^^
ウチは片付けた先から誰も散らかさないからかな(笑
実家に行ってもらってる間に片付けて、帰ってきたその瞬間からドサーッッ…ありとあらゆるものが散らかりだします…。
腹立たしくて腹立たしくて…
と、こんなことより。
いよいよ菊池くんと左之さんが向かい合うことになりましたね。
千鶴ちゃんの怪我を心配する新八さんの気持ちもわかるけれど、それよりも千鶴ちゃんの気持ちのほうが強かったんですね。
左之さんと
拍手で笑さんがおっしゃっていた二重投稿ってこれのことですね!
ではでは、お返事はもう一つの方にさせていただきますね(^∀^)
家族がいない空間て、何故ですかね…掃除したくなります^^
ウチは片付けた先から誰も散らかさないからかな(笑
実家に行ってもらってる間に片付けて、帰ってきたその瞬間からドサーッッ…ありとあらゆるものが散らかりだします…。
腹立たしくて腹立たしくて…
と、こんなことより。
いよいよ菊池くんと左之さんが向かい合うことになりましたね。
千鶴ちゃんの目には、左之さんの背中はどう映っていたのかな…。
千鶴ちゃんの怪我を心配する新八さんの気持ちもわかるけれど、それよりも千鶴ちゃんの気持ちのほうが強かったんですね。
左之さんと千鶴ちゃんの間には、何も言わなくてもお互いの気持ちがわかる空気があったようですし。
ちょっとドキドキしました^^そんな二人の関係が羨ましかったりv
お掃除終わりましたよ!!
一人ぼっちだったので、お掃除はかどって、のめり込んで、大事になって・・いろいろありました(ー∀ー;)
でも、確かに片付けた先からドサーッは・・落ち込みますね(;△;)
私だったらウガーッ!!!って怒り出しちゃうかもですー
っと、お掃除のお話はおいておきまして、
シリアスな展開に真剣な感想をありがとうございます!!
珍しくも、緊迫した展開に私の方がドキドキでしたー(//◇//)
あとがきにもありますが、本当に長年連れ添った夫婦のように意思疎通しちゃってる左之さんと千鶴ちゃんになってしまいました(^v^;)
でーも、心配する新八もちょっと可哀相だなぁ、なんて。実は、結構ドバドバ出血してる設定で書いているので、後ろで支える彼も血まみれなんです。菊池なんてどうでもいいから、とにかく止血を!!とパニくってしまってもおかしくない状況・・なんですよ(ーー;)