「千鶴ちゃん……」
「新八さんたちはもう行ったの?」
夕飯後、後片付けをする彼女の背に、そう声をかければ
お茶碗を重ねていた手を止めて振り返る。
「あ、はい。先ほど沖田さんの伝言を伝えたらすぐに出かけられましたよ」
夕飯時に姿が見えないのだから、
とっくに屯所を出たってわかるのに、彼女は律儀にも僕の質問に答える。
「あれ、その手……どうしたの?」
彼女の袖口からちらりと覗いた白い布。
昼間は特に何もなかったのに……
「えっと…夕食の準備をしていたとき、手を切ってしまって……」
大事そうに、怪我をしたという手に巻かれた布に手を添える姿に、納得する。
ああ、なるほど……ね。
その布を巻いたのは、怪我をした彼女自身ではなく第三者。
彼女にこんな表情をさせることができるのは、少なくとも僕じゃないんだ。
いとおしそうに、布をさすって時折頬を染める。
布を巻いてもらったときのことでも思い出しているのだろうか。
――-苛々する。
これが、自分の玩具をとられた子供のような感情だったなら、まだよかったのに。
「ねえ、みんな外に出ちゃって暇だし、ちょっと僕に付き合ってくれない?」
「あ、はい。いいですよ。何をするんですか?」
「ん?暇だって言ったでしょ?……ただの、暇つぶしだよ」
残った食器を籠に入れ、彼女の手から奪う。
「あ、沖田さ-―」
「手伝ってあげるから、早く片付け済ませちゃおうよ」
「……はい、ありがとうございます」
まるで、母親に早く遊んでとせがむ子供に見えているのか、
優しく微笑む彼女に、精一杯の虚面を作る。
ああ、うん、でも、間違ってはいないかな。
早く、遊んでほしいのは、本当だし。
「沖田さん!
やめてくださ…………っ!」
「大丈夫だよ。優しくするから」
床に押し倒して、彼女の自由を奪う。
なんとか自分の上に乗しかかる僕を退けようと腕を伸ばす彼女の必死さに、どこかおかしくなる。
耳元に唇を寄せて、優しく、甘く囁く。
「ねえ、千鶴ちゃん。
暇つぶしに付き合ってくれるんじゃなかったの?」
「こ、んなの・・・暇つぶしじゃ、ありま、せん!」
「僕にとってはただの暇つぶしだよ」
夕食後、最近屯所に迷い込んできている猫に二人でこっそり餌をやり、
穏やかに時間が流れているように彼女に錯覚させる。
部屋に招き入れて、彼女が入れたお茶を飲んで、
そうして、彼女にとっては前触れないかのように床に押し倒す。
「や、です・・・きた、さ・・・・・」
優しくしたい。
けど、この熱いくらいの衝動を止めるすべがわからない。
自分の下で必死に抵抗する姿に興奮して、このまま彼女が自分のものになってくれればいいのにと愚かなことを願う。
憎まれても、恨まれてもいい。
彼女が僕をずっと心の中に住まわせてくれれば、それだけでいいんだ。
首筋に舌を這わせ、そのまま耳の裏を舐める。
彼女の体がビクリと震える。
そうして、少し力を入れて彼女の耳たぶを噛む。
「あっ……!」
とろとろと流れ出る赤い血を舐めとり、残酷なまでの言葉を吐き出す。
「千鶴ちゃん、大好きだよ」
*あとがき*
こんにちは!
只今、会社よりこそこそ更新中です(`・w・)ノ
今月は唯一の休日を使ってオトパに行くので、今日も今日とて休日出勤でございます!!
そういえば………ものっすごく、恥ずかしいんですが……
この年になって盛大に転んでしまって……全治一週間です…・・…痛いのなんのって…・(;◇;)
会社が駅からも遠いので、毎日タクシーです…・…これ、労災は…・…無理かな・……
自業自得だもんね……でもほら、疲れがたまって前方不注意だったわけで…あぅ……切ない。