「君が言う優しいって、なんなの?」
「え・・?」
唐突に変わった声色に戸惑いつつも、けれど彼のこうした変化は日常によくある。
私は心音が騒ぎ出さぬように必死に落ち着こうと努めながら口を開いた。
「・・すごく、曖昧な答えになってしまいますが・・、沖田さんに話を聞いてもらって、甘えてもいいんだよって言ってもらえて、私はどこかホッとしたんです。それが嬉しかったから、優しいって思いました」
「・・・・・ふぅん、そっか・・」
たっぷりの間をとって、彼は目を細めて、笑った。
「千鶴ちゃんらしいね」
そう言い、彼はピタリと足を止める。
気がつかない間に私の部屋の前まで着いていたらしい。
彼はスッと戸を引いて「入らないの?」と首をかしげる。
「あ、入ります。送ってくださって有難うございました」
「気にしないで。最初からここに来る予定だったし」
「え・・?」
戸を引いたままの彼を見て、待たせたら悪いと慌てて室内に入り振り返って丁寧にお礼を述べた。
そこで、うん、じゃあまたねって、そういう流れになると思っていたのに・・彼はすんなりと私の思い描いた流れを切り捨てる。
自らも、まるで自分の部屋のように室内に踏み込んでスッと戸を閉める。
「あ、の・・」
「さっき会ったときね、君の部屋に行こうかなーって思ってたところだったんだ」
「あ、そうだったのですか」
なるほど、だったら納得がいく。
もともと何か用事があったと言う彼は、畳の上に腰を下ろした。
「平助君と一緒に江戸に行くんだって?」
「え・・」
唐突にふられた話題。
私の頭の中の大部分を占めるソレを、沖田さんは器用に突っつこうとする。
「えっと・・、はい。土方さんから江戸で父様の情報を探って来いと・・、」
嘘じゃ、ない。
本来はその理由の方が大きいはずだ。
ただ・・、今、少しだけ平助君との間にわだかまりが出来てしまっているから・・、それも一緒になんとかしてこいって、そういうことなんだと思うけれど。
「・・・へぇ、土方さんがそう言ったんだ」
「えっと、」
沖田さんは口元に緩く笑みを浮かべる。
しかし、目は決して笑っているわけではなく、細められた瞳に背筋にゾクリと痺れが走る。
「解決策のつもりなんだろうけど、いい迷惑だよね」
「それは、どういう意味でおっしゃっているのですか?」
本気で沖田さんの意図するところが見えなくて首をかしげる。
彼は呆れたようにこちらを見遣り、ため息を吐いた。
「・・はぁ、君のその鈍感さってたまに本気で苛々するんだけど」
「す、すみません・・」
厳しい声色に反射的に謝罪を返す。
「・・・別に、怒ってるわけじゃないんだ。あーっと、・・迷惑っていうのはさ、」
「はい」
慌てて頭を下げた私を見て、沖田さんは少し控えめに笑った。
あ・・しょうがないなぁって、顔。
彼のこんな顔は、どこか好きだった。
「・・・・・・」
「沖田さん?」
彼の言葉の続きを幾ら待てども、彼は何かに気づいたかのように口を半開きのまま固まる。
「・・・沖田さん?」
もう一度呼びかける。
彼は一度、二度、瞬きをしてからうん、と頷く。
「平助君と、君が前みたいに仲良くなれるといいね」
「え・・?」
「今みたいに、子どもの恋愛みたいなうじうじしたの見せられるのって、結構しんどいんだ」
「れ、恋愛って・・、そうい「でも、恋仲とかになって帰ってきたらダメだからね」
一方的な会話と言葉に、私の口を挟む隙はない。
それどころか、返答の困る言葉をさらりと彼は私にぶつけた。
@あとがき
・・・沖田を出すと、無駄に会話をさせたくなるのは何故だろう。
平助と沖田は会話や台詞を考えなくても自然とすらすら執筆が進むのでとても可愛い子たちですね!ただ、パターン化してしまうからなぁ・・沖田が嫉妬して悪戯しかけるのもアリかもしれませんが、沖田だって子どもじゃないので毎回そんなことはしないでしょうし・・うぅむ・・、いつの間にか平助よりも出張ってるし・・・(--;)
@にっき
明日は妹の高校最後の体育祭なのですが・・雨ですね、このままじゃ・・。
私の出身校に妹も通っているのですが、その学校では体育祭に代々高校三年生による扇をもった舞いっていうのかな・・創作ダンス?が行われます。高校2年生の時から1年以上ずっと練習を続けてきたもので、毎年少しづつ変わるのですが卒業生の私としては感慨深い行事です。せっかくだから見に行ってあげたいなーって思ってるのですが、日曜日に延期かな・・・。日曜日も雨だったら中止だそうです。
せっかく長い間朝練を続けてきたのに、可哀相ですよね・・そうなってしまったら(;へ;)
私も、入社したばかりなので雨で服装が崩れるとイメージが悪くなってしまうし、体調も悪くなるので・・梅雨が怖いです・・・。雨って嫌いではないのですが・・外出や仕事をするときは、何よりも嫌な天候ですね;