「原田さん、起きてらっしゃいますか?」
そりゃぁ、昨日の今日だからなぁ、声がこわばってしまうのは仕方ねぇな、とは思う。
朝だと言うのにどこか声には力がなく、到底起こしにきた、とはいえねぇよな。
平助が明日は自分で起きられる!今日の夜は酒も飲まないし、早く寝る!って声高々に千鶴に宣言したのは、あいつが、心ここにあらず、といった様子の朝餉の時間が終わった後。
確かに千鶴も、箸がなんとなく進んでなかったが、それ以上に千鶴の斜め向かいに座っていた平助の様子は、本当に、心がどっかに行っちまったみたいだった。
たまに横にいた俺が肩を小突いてやれば、完全に無反応。千鶴についての話題を振ってやれば過剰に反応して、その過剰さに反対側に座っていた斉藤が目を細めていたくらいだ。
アイツにとっちゃ、普段の何倍も疲れる食事の時間だったんじゃねぇかって思う。
それでも、部屋を出るときに合ったらしい視線は、少なくとも千鶴を避けていると言った感じはなくて、どこか照れ隠しにも似た拒絶があって、こいつも不器用だよなぁなんて完全に他人事な感想を持った。
あれは、まぁ、完全に朝なんかあったって顔に箇条書きしてるようなもんだろうが、まぁ、本人同士にそれを気遣う余裕もねぇみてぇだし、あんまりからかってやるのもかわいそうだから、とりあえず“今”は放っておいてやるか。
とりあえず、連日飲み続けていた酒のせいで、最近寝不足だから今日くらいはさっさと床に入ろう、なんてぼんやり思った。
まぁ、それはいいとして、早くに休めた体は普段よりもしっかりと休息をとり、規則正しく早朝目が覚めてしまったわけで・・
「どうすっかな・・、」
今日は平助んとこは顔出さないはずだから、起こしに来るとしたらまず俺んとこだろうなぁ。
新八の部屋は三人の中じゃ一番あいつの部屋から離れてるから、必然的にそうなる。
心地いいくらいの涼しさが目立ってきた早朝は、それだけで寝床から出るのが億劫になる。
ただ、寝起きはいい方だし、目が覚めちまえばさっさと床から離れるのも名残惜しくはない。
唯一の不満と言えば、今日もあいつの声で目を覚ますことができなかったということだけだ。
なんとなく、もったいない気がした。
平助の昨日の様子を見るからに、寝ぼけてなんかやらかしたんだろうってことは分かる。
それでも、千鶴の声で起きて、目覚めて一番にあいつの顔を拝むこと出来るのは結構いい瞬間って気もする。
「・・・ま、そのうち来るだろ。」
だから、もうしばらくこのままここで暖かさを堪能してようと、そう決めて目を閉じたとき、
「原田さん、起きて、らっしゃいますか?」
控えめな声が襖越しにかかる。
「千鶴です。・・朝ですよ、起きてください。」
なんとなく、すぐに返事をする気に慣れなくて、当初の予定通りもう少しここから出るのを渋ることにする。
つーか、朝一だからかしんねぇけど、声に覇気がなくて、あれがまた寝起きにも近くて耳にいい感じに届きやがる。
「原田さーん。」
「・・・・・。」
どうせなら、もっと近くで聞きたい。
「あの、そろそろ起きないと、朝ごはん冷めてしまいますよ?」
んなもんいいから、さっさとその扉開けてこっち来い。
「永倉さんに全部食べられちゃいますよ。」
朝飯くらい新八に譲ってやるさ。だから、はやく、
「・・・少しだけ失礼しますね。」
平助のせいで、どこか臆病になっちまったのか、警戒心まるだしで、それでもゆっくりと襖に手をかけて朝日が部屋の中に滑り込んでくる。
「おはようございます、原田さん。」
「・・・・・。」
返事は、したくねぇなぁ。
なんとなく、返事して、俺が起きてるってわかったらさっさと出ていっちまいそうだし。
「・・・起きてらっしゃるのでしょう?」
枕元で膝を折るようにして座った千鶴の気配を感じながら、俺はうっすらと瞳を開いた。
「よぉ、」
「原田さんは、きっと起きてらっしゃるって思ってました。」
「ん?」
「昨日はお酒を飲んでらっしゃらなかったし、」
「あぁ、そういやそうだな。」
意外にもあんなぼんやりとした状態で俺のことにも気を回してたってことに驚きと、嬉しさが入り混じる。
「昨日は、声をかけに行くことが出来なくてすみません。」
「そいつは、昨日も聞いた科白だぜ。」
「・・ですが、土方さんから承ったお仕事ですし、」
土方さんから、ね。
「なぁ、千鶴。」
「はい。」
「平助と、なにかあったのか?」
「・・・・・。」
少しばかり身を起こして布団の上に胡坐をかいて、俺が“聞く”体勢を整えればちょこんと真向かいに正座した千鶴が俯く。照れてるっつーか、落ち込んでるって感じだな。
「あの、別に・・なにも。」
「俺に隠し事か?」
少し語尾を強めてやればとたんに不安そうな目をした顔がこちらを向く。
「悪い、別に言いたくねぇんならいいさ。平助のやつのやったことだって、どうせ寝ぼけたって程度のことだろ?ただ、お前があんまり落ち込んだ目ぇさせてるからな。」
「・・・あの、平助君が私にしたことは、本当に、寝起きのことだったので、気にして、ません。」
言葉を少しずつ切って、なんとか紡いだ。
そんな感じをありありと感じさせられる。
「じゃぁ、他にお前が落ち込む原因がなにかあったのか?」
「・・・・落ち込んでなんか、いないんです・・」
「ん?」
俯きながらも、ぎゅっと自分の着物の裾を握ってる姿ってのは、あれだな、
・・そそるもんだよな、
なんて、場違いな感想を持ちつつ、千鶴の言葉をしっかりと聞き取ろうと耳を傾けた。
@あとがき
ふぅ・・・、とりあえず何とか今日中に更新できてよかったです(´д`;)
今日は、とにかく忙しくて、、、せっかくの日曜日なのに更新が遅くなって申し訳ありません。
そういえば、もうすぐ1万打なのです!!(*^v^*)ありがとうございます!!
キリ番は一応、一万ごとにお受けしておりますので、踏んだよ!って方が居ましたらお気軽にお知らせくださいませね。
っと、今日からモーニングコール二日目が始まります!!
二日目は左之さんと新八っつぁんのモーニングコールです(`へ´)がんばります!!っても、今回の左之さんはすっかりお兄さん的ポジションなのです。彼の出番はもうちょっと、先、ですよ奥様!(笑)エロ担当左之さんには後日活躍していただきますので!!(っても、執筆する私が、がんばらなくては意味がないのですけどね・・;)
明日は午後からお仕事なのでお昼ぐらいには続き更新しちゃいますね。
今日みたいに帰宅後に書こうとすると、文章がめちゃくちゃになる。。。