「・・・・落ち込んでなんか、いないんです・・」
「ん?」
俯きながらも、ぎゅっと自分の着物の裾を握ってる姿ってのは、あれだな、
・・そそるもんだよな、
なんて、場違いな感想を持ちつつ、千鶴の言葉をしっかりと聞き取ろうと耳を傾けた。
「その、私・・・本当に、ここに来る前は父様と患者さんくらいしか、男の人と話したこともなくて、でも、ここにきて毎日お話して一緒に食事をして、過ごして、それがなんだかすごく自然なことに思えていたんです。でも・・、やっぱり、違うんだなぁって思ってしまって。」
「違う?」
「ね・・寝ぼけた平助君に抱きしめられて、胸の中が騒がしくて、落ち着かなくて、
そうしたらここにいる皆さんとも顔をあわせることが恥ずかしくなってしまって・・」
「・・・・・・。」
娘に気になる人が出来た、と告白されている父親の気分だ、正直な話。
んー、と切れの悪い返事を返して、額を手で覆う。
「千鶴。」
「はい。」
「その話、他の奴らにはするなよ。」
「え、あ、はい。」
なんつーか、あれだ。
別に俺はそういう対象に見えないから相談するって雰囲気じゃなくて、ついでにいうと平助だけを意識してるってのでもなくて、男連中みんな、こいつには自分とは別のいきもんに見えてるって言ったほうが近い気がする。
しかも、平助は寝ぼけてたにしろ抱きしめるっつーお決まりだがおいしい展開が合ったらしいが、俺と言えば父親のような立ち位置。
「はぁ・・」
「原田さん?」
「ま、それに関してはあんまり気にすることじゃねぇよ。お前はお前で、俺らは俺ら。な?」
「・・・はい。」
「その話は忘れろ、気にしたってなんも解決につながらねぇさ、それよりも・・」
さっさと、話を終わらせて俺は目の前の千鶴にさらにこっちに来いと手招きする。
「え・・?」
「平助だけおいしい思いっつーのも不公平だろ?」
「?不公平って・・」
なんにも分かってないって顔して千鶴は一歩、前に出る。
こちらを見上げてくる視線が俺のと合って、それから「どうしたんですか?」って首をかしげてみせる。
これが、天然もんだから、おそろしいっちゃおそろしいよなぁ・・。
「・・・え?」
「あー、あったけぇ。」
「ちょ、原田さん!?」
ぎゅっと遠慮なく抱きしめてやれば、今まで布団の中で暖をとっていた俺よりも体温が高くて、体の柔らかさと合わさって半端なく心地いい。
「平助にも抱きしめられたんだろ?俺だけだめっつーのは、ねぇよな。」
そういって、にやりと笑って見せれば千鶴は驚いたように目を丸くして、でもゆっくりと頬を緩めた。
「原田さん、子供みたいです。」
「ん?そうか?」
「はい。他の子が抱っこされているのをみて、自分も自分もって言っている子供みたい、」
そう言って俺の腕の中でクスクスと控えめに笑う。
「・・・・・・。」
「原田さん?」
「あ、いや、」
ふいに、平助の気持ちが分かった。
あいつだって島原に俺らと一緒に行ってるくらいだから、女に慣れてないわけでもねぇし、なんであそこまでうろたえてんだろうな、と不思議には思っていた。
それが、今ふいに分かった気がした。
こいつは、なんつーか、やべぇ、よな。
島原の女のように熱っぽい艶は、まださすがにねぇけど、代わりにそれ以上の何かが、ある。
思いっきり抱きしめて、それからただ、離したくなくなる。
この俺が、初めて恋したガキみたいに、思わず息を詰めるなんて、正直どんな色香だって話だが、
「・・・原田さん?」
もう一度、控えめに声をかけられて、何度も取り乱してたまるかって想いで思わず力任せに頭を撫で回した。
「え、え、な、なんですか?」
「いやー、平助のやつと同じ罠にはまっちまったなぁってな。」
「え、罠・・ですか?」
「あぁ、こればっかしは逃げられそうにねぇって罠。・・まいったぜ。」
「・・・?」
それからの千鶴はしきりに首を傾げるばかりだった。
正直な話、もう少し色っぽい出来事を期待してたわけだが、そんなもんは夢の中で見ろってぐらい、何事もなく。仕方なしに自分から抱きしめて、なんとかそれっぽく演出してみたけど、なんだかなぁ。
あれだな、当分は酒控えて、土方さんから受けた仕事を精一杯こなそうとする千鶴に協力してやろうとも思ってたが、あれはなしだ。
今夜は思う存分酒かっ食らって、ぐっすり熟睡して、明日こそは目覚めて一番にこいつの顔拝んでやろう。
んで、思いっきり俺流の目覚めの挨拶ってやつで、出迎えてやろう。
@あとがき
こんにちわ!
・・・・あ、いえ、こんなお兄さんな左之さんも、好きなのです。
ヘタレ、とか、そんなんじゃないですよ?(@□@;)彼はね、一番大人な男の人なんですよ!だ、だから、一番余裕があるっていうか・・・、ん?なんでエロじゃないことを言い訳してるんでしょう??(笑)
えっと、以前質問を頂いたのでここで回答させていただきます。
リクエストってどんなものでもいいの?とのことでしたが、基本的に一から練り直すと、連載の更新に影響が出ますので(すべてのお話はしっかりと構成を考えて書いていますので)、できたらすでにUPされたお話の【後日談】【続編】【番外編】のどれかの形でリクエストいただければ、と思います。
リクエストいただいたもの、すべての執筆が可能なわけではないですが、続編や後日談って、そのお話が好きでもっともっと続きが見てみたい、という気持ちからくるリクエストって思うんです。だから、精一杯努めさせていただきたいな、と。
ただ、拍手で「混浴騒動の後日談、もっと甘くてえろいのが読みたいです。よろしく。」など、通りすがりのようなものは基本的には受けておりません。ごめんなさい。あまりにも簡潔すぎてどんなものが読みたいのかまったく伝わってこないんです。。
と、いうわけで、とりあえずお仕事行ってきます。
皆様、連休最後の日、私の分まで堪能してくださいませ!!
わたくしは、人の溢れかえるラゾーナでがんばって参ります(;□;)
今夜2作も一気に読めましたぁぁぁ!!左之さんオイシイ事しておきながら、自分で罠にハマリに行っちゃいましたね^^
平助くんのことも気にしながら千鶴ちゃんのことを気にしてる左之さんて、やっぱし大人だ~と思っちゃいました。相談に乗って抱きしめてハマッちゃった左之さんは、これはこれでまた面白い展開に繋がりそうなので…ふふふ。
でも私としては、沖田くんが黙っているようには思えないんでうけど…。いつもと違う平助くんと千鶴ちゃんを見てる左之さん…を見てる沖田くん。…欲を言えばそれに気付いた土方さんと斎藤さんは溜息をついて特に何もせず、みたいな。
新八さんはただ一人気付かず(笑
もう、先が楽しみなんですっ勝手に妄想飛ばしまくりですいませんっっ
次回作も本っっっ当に楽しみにしてますっっ
左之さんってば余裕のある男ですから、いつでもチャンスがあるってことで、今回はピュアな感じで仕上げてみました(笑)
あれですよね、何でもかんでも迫ればいいって言うのは逆ハーすぎるかな、と思って、やはり左之さんにはギリギリまでお兄ちゃんポジションでいて欲しいのですよ(*^v^*)
そしてそして、もちろんですよ!総司が黙ってるわけないじゃないですか!(笑)展開が分かりやすいって言うのも複雑ですが、大当たりです!!何をしでかしてくれるのかは・・・・・、わ、私にも分かりかねます・・。彼って勝手に動き出す感じですよね。最初はそこまでするつもりなかったって時もどういうわけか予定よりも迫っちゃったり・・、何でだろう。総司マジック(ーへー;)
今後も、是非とも!妄想飛ばしちゃってください!!むしろ、それが楽しみだったりします。だって、すっごく面白くて創作意欲が湧くんですよ(笑)
ついつい、予定じゃないキャラも登場させたくなるくらい!!
ではでは、まだ体調も万全でないのですから、無理なさらずに休養をしっかりとってくださいね!遠村さまが来て下さるのはすっごく嬉しいのですが、悪化してしまうのでは、と心配なのです(;;)
メッセージありがとうございました!!