「さ、斉藤さん・・」
部屋の片隅で静かにこちらの会話を聞いていただけだった斉藤さんが、そろりと立ち上がり崩れたままだった団子の包みをそっと正す。
「それと、雪村に説教できるほど、お前たちが普段冷静だとは思えない。自分らの無茶を省みてからにするんだな。」
「うわー、斉藤君、言い方きついなぁ、」
「面白がってあの2人の話を大きくするな。」
沖田さんから奪うようにして斉藤さんの掌の上に移ったお団子は他の菓子が積んである山に再び戻された。
「面白がってなんか・・、まぁ、少しはあるけど。でも、平助君たちの気持ちも分からなくもないんじゃない?」
「・・・・・。」
「千鶴ちゃんの今回の行動は、僕も少し怒ってるんだ。」
「沖田さん・・。」
割り込んできた斉藤さんに対して沖田さんはすっと目を細めた。
それからゆっくりと私に向けられた視線に、思わずビクリと肩を揺らした。
「確かに、結果だけを見れば僕らが目を離したことが彼女の怪我に繋がったのは事実だし、そもそも彼女に囮をさせた僕に責任があるのもいい訳のしようはない。
けど、あの血塗れの状態で頑固にあの場に居続けると言ったのは他でもない、千鶴ちゃん自身だ。」
はっきりと突きつけられた言葉に、私は身を固まらせる。
「・・・まぁ、そのことについては、いま、責め立てるつもりはないけど。」
「・・・・・・。」
伏せた顔を上げることが出来なくて、
なんだか随分と遅くなってしまったけれど、急速にあのときのことを思い出して、そうして自分のあまりに身勝手な行動に今更ながら反省する。
結局、私は何も出来なかったんだ・・。
見届けると言ったって、ただ私が納得したいからってだけで、そのまま倒れてしまって、斉藤さんや原田さんたちに迷惑を・・、
「は、らださん・・・?」
ふと、無意識に呟いた。
あ、れ・・?
目が覚めて、平助君や永倉さんがいて、斉藤さんがいて、沖田さんがいて・・
ふっと顔を上げて部屋を見渡す。
お見舞いに来て欲しいだなんて、そんな我侭を言い出すわけにはいかないけれど、
あの人がいないと気づいて、ぎゅっと胸の辺りが痛くなる。
「左之さんは来ないよ。」
「・・え?」
思ったよりも、私は声を強めていたらしい。
平助君も永倉さんも驚いたようにこちらに視線を向ける。
「僕や平助君たちは君が目を覚ましただろうかって何度もここに来たけど、左之さんだけはここに近寄ろうともしていない。」
「・・・・そ、うですか・・。」
乾いた声が響く。
沖田さんに責められたときよりも、ずっと心の中が空っぽになっていく。
「・・・左之さんさー、巡察んときも飯んときも普段と変わらない態度だけど、千鶴の話になると黙っちまうんだよ。」
平助君が、声色を落として寂しそうに言う。
「で、でもさ!別に千鶴に会いたくないとかそーゆーんじゃねぇって!」
しかし、すぐさま私を元気付けようと無理をして笑顔を作ってくれる。
そのことが、辛くて、ぎゅっと両の手を握り締める。
「・・・気にしているのだろう。」
「・・・え?」
「お前を傷つけたのは自分の部下だった。責任を感じているのだろうな。」
斉藤さんの言葉に、部屋は一瞬静まる。
私は、五日間も眠っていたらしいけれど、
私にとってはまるで昨日の出来事のようで、
辺り一面に広がる赤い色と、私の前に立つあの人の背中、
「・・・・原田・・さん、」
@あとがき
よ、ようやく・・名前が出てきた・・・(´v`;)
平助君たちは左之さんを忘れていたんじゃなくて、千鶴ちゃんの口から名前が出るまでは黙っておこうって、なんていうか暗黙の了解が・・。
それにしても、ようやく終わりが見えてきました・・。後日談なのに5話以上続くなんて・・・(;へ;)しっかりスパッとまとめられなくて申し訳ないです。。あと少し!!次の次ぐらいで左之さん本人の登場!だといいなぁ、と思ってたり・・します。
話は変わりますが、別ジャンルなので忍に興味の無い方、スッパリ無視しちゃってください。
忍たま17期もうすぐはじまりますね!!
なんていうか、ひとりではしゃぎまくってます(笑
個人的願望を言わせていただければ・・5年生の出番を増やしてもらいたい!!
久々知と竹谷と三郎がめんこくてたまらないわたくしとしましては、とりあえず5年生メインのお話があればこの上ない幸せなんですが・・・どうなんでしょう、N○K!!