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期間限定。薄桜鬼小説ブログ。
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がんばろーな!

そう言った平助君の笑顔に私も元気よく頷き返した。


「ところでさー・・・本当に埃たまってんな」


私の後に続いて歩く彼は部屋や廊下の隅々に溜まる埃を目に留めて眉を下げた。
その言葉に苦笑を返す。


「汚くてごめんね。家に着いたのは随分前なんだけど、父様が居なくて少しぼんやりしてて、ね・・」


掃除をしなくちゃ、とは思っても誰もいない、誰も帰ってこないこの家があまりにも寂しくて、動き出すことが出来なかった。
でもそれは、言い訳に過ぎないから、

「別に責めてるわけじゃねーよ!京都の屯所なんてもっと汚いしなー。そだ、今から掃除すんだろ?俺も手伝うし、さっさとやっちゃおーぜ!」


なんとなく声を落とした私を見遣って平助君は無理にでも場の空気を和ませようと元気いっぱいの声で叫びバタバタ家の中を走り出す。


「ちょ、ちょっと待って平助君!雑巾はそっちじゃなくて、あ、そこは違っ・・!」

掃除道具があるのは裏口の方だ。彼がバタバタ奥へと進むのを見て焦ってその背を追いかける。
こういうときに元気な平助君を見ているとこちらまで元気になるのは嬉しい。
けれど、落ち込んでる暇もなくバタバタ走り回らなくちゃいけないのは態となのか、そうでないのか、どちらにしても苦笑と共に微笑が漏れるのは、私の心が温かくなった証拠なのだろう。




「ちづるー・・・まだ終わんねーの?」

「え・・、うーん・・埃も粗方掃き終わったし、今日はこのぐらいで終わりでいいかな」


手にしていた箒と雑巾をまとめて一箇所にまとめる。
後で洗濯物と一緒に洗ってしまおう。

桶に汲んでおいた水で手を洗い、布で拭う。
そのとき、ふと視線を感じて顔を上げたら平助君が布をもつ私をぼんやりと見つめていた。


「平助君?」

見つめていた、というのは語弊があるかもしれない。
なんとなく、視点が定まっていなくて私を視界に入れつつどこか遠くを見ていた、そんな感じだった。


「え?あ・・・・、ああ」

「具合でも、悪いの?」


ハッと気づいたように顔を上げて目を瞬く。
それから、唇を静かに動かした。


「・・・千鶴、あのさ・・その、あの日の帰り道のさ、話なんだけど・・・・」

「あ、の日?」

「・・・・俺が、続きを言わないでくれって・・言ったの、覚えてる?」

「・・・・うん」

「・・・・・・・なぁ、」


彼は、紡ぎを止めた。
それから、言葉を選んでいるのか彼は口を噤んで黙り込んでしまう。

続きを聞かせて欲しい、そう続くだろうと思って身構えていたのに、その言葉を聞くことはなくただ静けさが広がる。




・・妙な沈黙が部屋の中に広がっていく。
息苦しいわけではないけれど、居心地は、よくなかった。

お互いに俯きあっている中で私はチラリと平助君に視線を向けた。
普段は永倉さんや原田さんたちと一緒にいることが多いので小さくて、それが余計に身近に感じられて嬉しかった。
でも、あの日の平助君は大きくて、男の人で、とてつもなく遠い存在のようで切なかった。

私は、おずおずと顔を上げて視線を彷徨わせながらなんとか言葉を選んで口を開いた。



「平助君・・ごめんね、」

「え・・・?」

「私は、平助君を自分の中で勝手に決めつけてた。いつも元気で優しくて可愛い人だなんて、思い込んで、平助君を傷つけた」

「そ、んなことっ・・・、」

勢いよく顔を上げた平助君はせのまま息を詰める。


「・・んなこと、ねーよ」

ポツリと小さく漏れた声は消えてしまいそうなほど小さかった。


「つか、それ、謝罪のつもりならやめてほしーんだけど・・惨めじゃん、俺」

「ご、ごめんなさい・・」

「だーかーらー!謝んな!千鶴はさ、この前のこと言ってんだろ?」

「うん・・」

「だったら、謝られた俺ってすげー惨めだろ!?ごめんなさい、一切男として見ていませんでしたって言われてんのと同じじゃん!!」


「・・・・」

何を返したらいいのか分からなくて、私は口を噤む。



「あ、あー・・だから、責めてんじゃねーよ?ただ、さ・・頼むよ、謝んなよ」


顔を上げない私に対して平助君は困ったように難しい顔をして頭をかいた。


「千鶴!」

「え、あ、はい」

「俺、とりあえず宿帰るよ」

「え・・・?」

「今はさ、俺もお前も頭ん中ぐちゃぐちゃでさ、なんも解決しねーと思うし!土方さんがせっかく時間くれたのに台無しになっちまう!」


「平助君、」

「明日の夜、また会いに来るから・・答え、用意しといてよ」

「こ、たえ・・」


彼は、いっぱいの無理をしたような笑顔で言う。


「俺は、お前がどんな答えを出したって、お前のこと、好きだから・・」

「へ、いすけくん・・・」


嬉しいとか照れるとか困るとか、その言葉に対しての感想は・・不思議と浮かんでくれなくて、ただ、息をのんだ。声が震えて、言葉にならない。


「だから・・ちゃんと考えて、答え出してよ」

「う・・ん」


曖昧に濁せば、彼は控えめに笑った。
そのまま勢いに任せて背を翻しバタバタと玄関口に走っていく。

どこか遠くで、戸が開き、そして閉まる音がした。





@あとがき

6月に入って、お待たせしてばかりでごめんなさい(><)
でも、精一杯頑張るので!続きも読んでやってくださいね!!

って、わけで・・さーてこの2人・・どうなっていくのか。
いやいや、どうしていこうかな・・・うーん・・このまま切羽詰ったまま押し倒しちゃえばいいのに!とか思いながら執筆してました(笑)でも、さすがに情緒がないっていうか前回と同じって言うか平助だってさすがにそんなに子どもじゃないよ、と思いとどまり・・とりあえずこんな感じに仕上がりました。

ううーん・・通勤中にいろいろ考えてはいるのですが、いっつも途中で爆睡してしまうんで(ーー;)


拍手ぱちぱち、いつも本当に有難うございます!
週末に一気にお返事しますので少々お待ちくださいませ!


@こっそり私信
嫁さんへ : お祝いのイラスト写メって携帯の待ちうけにしてます(*^∀^*)疲れたときに元気貰ってます!!

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無題
お久しぶりです。
ここんと頃部活やら道場やらの試合で全然pc開けなかった・・・
昨日も開こうと思ったら寝てしまって・・・って感じでした(笑)
久々に読んで楽しかったです
明日も大会なんですがちょっと気が楽になりました。なのでちゃッちゃと表彰台上がってきます(笑) 弱いくせに何抜かすか って思ってたり
曽良 2009/06/13(Sat)11:41:49 編集
いらっしゃいませー
お久しぶりです^^こんばんわ!

お返事が遅くなってしまい申し訳ありませんっっ
部活や道場の試合・・なにやら大変そうですが、でも、楽しそうで羨ましいです!!
道場ということは・・剣道かなにかやっていらっしゃるのでしょうか?
格好いいなーって思いつつも、夏は暑いのだろうなぁ・・と学生時代、友人を見て思っていました(^^;)
柔道や空手とか、ちょっと憧れた時期もありますが・・夏場は水分しっかりとって頑張ってくださいね!表彰台に上がった晴姿、見せていただきたいくらいですv

あ、でも、怪我には十分注意してくださいね!
私の方も忙しくて更新がままなりませんが・・お互いに頑張りましょうね♪
千尋  【2009/06/27 22:58】
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