「千鶴、元気出してね!」
久々に会った友人は私に気を使って酷く無理をしたような笑顔を浮かべた。
その笑顔と平助君の笑顔が重なって見えた気がして、彼女に気付かれないように小さくため息を吐き出した。
平助君がまた明日、と言って背を向けて去った昨日の夜はよく眠れなかった。
その背が遠ざかる映像が頭から離れなくて・・心がぎゅっと痛くて、寝つけるはずがなかった。
胸の奥の不安を押し隠して、私は父様の情報を得るために江戸での父と繋がりがある人の間を渡り歩いた。
江戸を離れて一年が経ち、その間に一度くらいは江戸に立ち寄ったかもしれない。
そんな願いが、どこかにあった。
久しい友達や近所の商店に出向いて聞き込んでみても父様の目撃情報は得られない。
江戸を経つ前から父様を捜す私を気遣ってくれた友人は私が京都に向かった後も江戸中を捜してくれていたらしくて胸にこみ上げてくるものがあった。
ただ、結局父様に関して何一つ進展がなかった。
自宅に戻って床にぺたりと座り込む。
なんだか、いろんなものが抜けてしまったような妙な脱力感が全身に広がっていた。
その時、裏口でガンガンと戸を叩く音が響いた。
びくりと震えた肩は強ばり、でも、と思い直す。
夕方に平助君が尋ねてくるはずだ。
重たい腰を上げ、まだぼんやりとしたままでふらりと裏口に向かった。
「・・平助君?」
ガンガンと、響いていた戸は声をかけるとピタリと止む。
戸の向こう側に人の気配があるけれど、少しだけ、違和感があった。
「平助君、だよね?」
名を呼んでも、向こうに居る人物からの応答がない。
平助君だったら、すぐに返事を返してくれるはずだし・・
「・・あ、あの、どなたですか?」
急に背筋にゾクリと寒気がこみ上げて、不安定だった心をより揺さぶった。
「・・・・・、」
ほんの少し、向こうの人物が何かを呟いたのが聞こえたけれど戸を挟んでではこちらまで届いてこない。
騒ぎ始める鼓動を沈めて、戸にピタリと寄り添うようにして気配を窺った。
もしかしたら、しばらく留守にしていたから誰も住んでいない空き家だと思われて悪戯とか、そんなことをしようとしている人かもしれない。
「あ、あの・・っ!?」
意を決して戸を開けたとき、向こう側の人も同じように戸に手をかけていたようでガツンとぶつかってしまう。
相手の胸元辺りにぶつかって、そのまま尻餅を付いた私をみて、相手は慌てたよう屈みこむ。
「ち、千鶴、大丈夫か!?」
「・・・・平助、君?」
少しだけ痛む鼻を押さえて、チラリと視線を持ち上げれば、
「ご、ごめんな・・。なんかさ、なんて言ったらいいのか悩んでて声をかけるきっかけっつーのが、さ・・」
と、困ったように頭を掻きながら私の頭を撫でる平助君の姿があった。
「平助くん・・」
「なんか、正面から入るのも気まずいっつーか・・。で、裏に回ってみたはいいけど・・・あー!なんか、言い訳ばっかじゃん、俺」
ぐちゃぐちゃと前髪を掻いて、それから平助君は座り込んだ私を支えながら起き上がらせてくれた。
「・・・えっと、驚かせてごめんな」
「・・ううん、大丈夫。平助君でよかった」
「え?」
「少しだけ、誰だかわからなくて、怖かったから・・」
私の言葉に大きな目を見開いて、それから困ったように目を細める。
「うん・・・、ごめんな」
それは、怖がらせてごめんと、もう一つ別の意味を含んだ謝罪に聞こえた。
それから、一瞬その場が静まり返って、お互いに口を噤んだまま僅かな時間が過ぎた。
「・・・・千鶴、」
呼びかけに、じっと視線を平助君に向ける。
彼は口を開き、しかし、息を飲んでまた噤む。
・・元気な、平助君がすごく好きで、彼がこんな風に迷ったり悩んだり、苦しそうな仕草をするのは私が原因で、申し訳なさと、どこか切なさが交じり合った。
「・・ごめん。千鶴に、謝ってばかりだって言ったけど、俺も・・お前に謝ってばかりだ」
「・・・・・」
「お前を困らせて・・、そんな顔させたいわけじゃねーのに・・」
そう言って、泣きそうなほど歪めた顔で彼は告げる。
「新選組の隊士として、大事な人を作っちまうってことがどういうことなのかも、分かってるつもりなんだ」
彼は唇を噛み締めながら、私の両の手を握り締めた。
「・・ただ、女が欲しいだけなら新八っつぁんみたいに色町で買えばいい。本当に守りたい人を、作るべきじゃないって何度も思った!」
「けどさぁ、お前の、笑顔を見るたびに・・抱きしめたくなるんだよ。んで、抱きしめたら離せなくなっちまう。」
「平助君・・」
「千鶴が大事で、ヤバいくらいにお前で頭ん中いっぱいなんだ!」
飾らないまっすぐな言葉を受けて、私は自分の気持ちに初めて向き合った。
平助君を、ずっと友達のように身近に感じて、だからこそあの日の出来事に戸惑って困惑して、
でも、そうじゃなくて…一番私が考えなくちゃいけなかったのは…私が平助君をどう思ってるか、なんだ。
そう考えて途端にぎゅうっと胸が痛くなる。
「ち、千鶴?」
胸を押さえながら苦悶の表情を浮かべる私に平助君は慌てて顔色を窺うように腰を折る。
「平助、君…」
「どーした?具合悪いのか!?」
「私、平助君が好き…」
初めて自分の気持ちに気づいたら、言葉が…想いが溢れて…止まらなくて…苦しくて、
「ち、づる…」
「ごめんなさい。逃げてばかりで・・気づくの怖がってばかりいた。」
「でも、平助君が大切なのはずっと心の中にあった…友達みたいにずっと接していられたらって…そんな風に逃げてた…」
溢れて止まらない言葉を、平助君はただ黙って聞いていてくれた。
「…ごめんね、平助君」
「はは、お前って謝ってばっかりじゃん!」
「だって…、」
「いーよ。そんなんどーでもいい。千鶴が俺のこと好きだって言ってくれただけで…今、すげー嬉しいから」
溢れて、止まらない気持ちは…一時の突発的な感情なのかもしれない。
ただ平助君を好きだって気持ちは変わらない…大切で、だからこそ…今の気持ちを大事にしたかった。
「・・・っ・・え?」
急にふわりと自分の身体が宙に浮くような浮遊感を感じて驚いて顔を上げた。
「へ、平助君!?」
目元が前髪で隠されて見えなかったけれど、私を横抱きにして家の奥へとずんずん進んで行く彼の耳が真っ赤に染まっていた。
ほんの少し落ちそうな不安定な抱き方だったけれど、なんだか、嬉しくて、ぎゅっとしがみついた。
@あとがき
たいっへん、お待たせいたしました!!
すごく中途半端なところでストップしていたのでとりあえず告白シーンだけでも!と思って詰め込みました。
詰め込みすぎて自分でも訳が分かりません・・ので、こっそり修正が入ってるかもです・・。
まま、とりあえず、二人はらぶらぶってことで、次回は床シーン(笑)です!
張り切って書かせて頂きます(*^∀^*)ノ あ、ここ、笑うところですのでよろしくです!
なるべく・・週末更新しようとは思ってるんですよね。
先週は大変失礼いたしました。更新するとかぶっこいて(ーー;)
急遽仕事をせねばならなくなりまして・・はい、言い訳になってしまいますが、来週も休日出勤の予定です。
はぁー・・・とりあえず、睡眠が欲しいです・・。誕生日はー・・、とっくに終わったので、クリスマスプレゼントは睡眠と久々知兵助君と藤堂平助が欲しいです。サンタさんよろしくお願いします。
5日深夜追記:
すみません・・結構文章に違和感が残っちゃってますね・・
急ぎで書き下ろしたので自分でもまとまってなさ過ぎる・・と反省してます。
次回更新時に一緒に修正もしますので、お、お叱りは・・ご勘弁を(;□;)
はっきりいって、このシリーズの影響を受けて書いている小説があり得ない方向へ進んでいます(汗
私は平助君大好きです。かわいい・・・
書いている小説も千×平ばっかりです。長編も短編も・・・。最近は、この小説のせい(?)で友達にも見せられない感じになってます・・・
千尋さんはどのキャラが1番好きなんですか?
はじめまして。ようこそいらっしゃいませ
ええと、たびたび文面に出てらっしゃった「このシリーズ」「この小説」というのは、私が執筆しているお話のこと、ですよね?
なにやら、私の小説のせいで悪影響を与えてしまっているようですが、あの・・お話を書くときは他の方が書いたお話を読んで思い浮かんだイメージを一旦頭の中から消して書かないと似たような設定になって自分のお話しがかけなくなってしまいますよ(^^;)ちなみに、わたしは千×平は、書いたことないつもりですが・・、主人公攻めって、すごいですね!!
あとご質問の件ですが、私が一番好きなのはー・・・誰でしょう?
左之さんと平助君が同率一位っていう感じです。結構お話の出演率で分かりやすいって言われます(笑)
読ませてもらいました!!
この小説やばいですね///
ちょっと平助君ね惚れてしまいました(〃▽〃)
今までの小説も見せてもらったんですが自分的に左之さんが一番好きで左之さんが出てくる度に興奮していていましたが、でもこの作品を見て初めて平助君に興奮しました(〃▽〃)
やばいですね(^_^;)
次回作も楽しみにしています!!
メッセージありがとうございます!!
うちのお話は、左之さんと沖田贔屓が多かったのですが…
今回は平助君メインで頑張っております!楽しんでいただけたようでなによりです(´◇`)
左之さんの余裕がある感じも素敵ですが、平助君みたいに余裕がなくて必死な感じも可愛いですよね~
このシリーズも、もう少し続きますので、最後まで楽しんでいってくれるといいなぁ、って思います!
また、是非遊びに来てくださいね!お待ちしています
この間はご機嫌を損ねてしまったようで、申し訳ありませんでした。
先日、薄桜鬼の平助ルートをクリアしまして、平助の良い所が沢山見つかったんです‼
その次にこの作品を見たものですから、
もう楽しくて…
う、嘘じゃないですよ⁉本当です‼
平助のやや幼いところとか、すっごく好きです!
これからも小説を頑張ってください‼
…この小説の感想じゃなくてごめんなさい。
長くなりますが、感想に入りたいと思います。
最初、今後の二人の関係がどうなるのやらとハラハラしながら見ていましたが、
千鶴ちゃん…ナイスです!
仲良くではなく、ほんのり甘い関係につながって本当好かった!
千鶴の立場に憧れますよ…
お久しぶりです。
機嫌を損ねたわけではありませんよ。大丈夫です^^
どうかお気になさらないでくださいね。
感想も有難うございます!
とっても嬉しいです(*´∀`*)
なかなか未熟ゆえ、満足して頂けるものが書けるか分かりませんが今後も是非遊びにいらしてくださいね。
お待ちしております。
千尋さんの書かれる文章とキャラの雰囲気が大好きです!!
どのキャラもスキなんですが、平助君がかわいいのなんのって・・・ΣΣ(〃▽〃 )
逢引道中の13話以降がとっっても気になります!!!
お仕事やお体のことを第一に考えて、できる範囲で書いてください。待ってます♪
ほんとにお体ご自愛くださいね。
メッセージ有難うございます!
基本的にうちのお話は逆ハーメインなので誰か一人にスポットを当てることがなかったので、逢引シリーズは唯一の平助独壇場なお話なんです(笑)
12話のなんともいえない雰囲気のままストップしてしまっててごめんなさい・・・続き、ちゃんと書いてますので!
近々再開予定ですので、是非とも楽しんで頂ければと思います!
お心遣い、本当にありがとうございます。
閲覧有難うございます。
平助って、可愛いですよね……!!
いっぱいいっぱいで一生懸命な平助をとにかく詰め込んでみました!
今後もぜひ楽しんで行ってくださいね!
初めて読んだけどとてもおもしろかったです!!
私も平助くんが大好きで話が合いそうです。
薄桜鬼いまはまっていてウハウハです(笑
続きの話おまっているのでお体のことを一番に考えてがんばってください。
私はまたきてコメントを書いていくので返してくだされば嬉しいです。
それでわがんばってください!!
小説面白かったです!
平助に惚れちゃいました。
本命は総司だったのですが、平助もいいかなっーって。
早めに13話願いします。
受験生なので、遊んでる暇がありません…
大学はいったら、なんとか…
いつも楽しみに待ってます。
でも、千鶴と平助が仲良くなってしまったら、
京都に帰った時、総司によって千鶴はどうなっていまうのか心配です。
私も、勉強頑張るので、頑張ってくださいね!